企業活動において関心の高い「システム運用」。前回はシステムの安定稼働に欠かせない監視について解説しました。第5回は、システムの整合性を保つために欠かせない資産の整合性を管理する方法について解説します。
システムの整合性を保つために
稼働しているユーザシステムは、多くのサーバやクライアントパソコンなどのハードウェアに加え、各種OSやソフトウェアから構成されています。システムを運用していて発生するトラブルの1つに“整合性の問題”があります。たとえば、サーバのアプリケーションの改訂と合わせて、クライアントパソコン側のアプリケーションも改定しなければならない条件のとき、その更新を忘れたために発生する障害です。同時に改定しなければならないことはわかっていながら、度々発生してしまう残念な障害です。それでは、なぜそのような障害が発生してしまうのでしょうか?主な理由を紹介します。
- ① 時間的に間に合わなかった
中央から改定後のアプリケーションをファイル転送でクライアントパソコンにインストールしようとしたが、ネットワークが混んでいたり、パソコンの電源を入っていなかったため、利用者がパソコンを使う時点でアプリケーションの入れ替えが完了していなかった。
- ② 配布先を間違えた
利用者パソコンの追加や移動が行われ、アプリケーションの配布先クライアントパソコンに漏れが生じてしまった。
- ③ アプリケーション更新の前提条件が整っていなかった
アプリケーションの更新は正しく行われたが、前提となるOSのパッチが適用されていなかったため、アプリケーション実行時にエラーとなってしまった。
配布時間が間に合わない問題を解決するために
適用日時までにクライアントのアプリケーションが確実に入れ替わるようにするためには機能を組み合わせてこの問題を解決します。
アプリケーションファイルの転送時間短縮を図るためには多くの手段が提供されています。たとえば、ファイルを圧縮して容量を少なくしてファイルを転送する方法、 優先的に特定のファイルだけを転送する方法、通信経路上のルータが自動的にデータを複製して回線を圧迫することなく配布するハードウェアのマルチキャスト機能と連携した方法などです。しかし、それでも確実に間に合うとは限りません。このため、多くのクライアント先にアプリケーションを配布する場合は、指定日での適用を前提に、予めパソコンにファイルを送っておいて、適用日時に到達した時点でアプリケーションの入れ替えだけを行うJP1での運用を検討してみましょう。
正しい配布先管理を自動化するために
「アプリケーションのテストは十分に行った」「ファイルを確実に入れ替えることもできた」……それでも最後に配布先を間違えたため、結果的にはクライアントパソコンのアプリケーションとサーバのアプリケーションが不整合になってしまったと言うケースもあります。
この原因は、せっかく用意した配布先一覧に誤りが有ったためですが、安価になったパソコンに加え、組織の異動が頻繁に行われる現状では、手作業での配布先管理には限界があります。それを解決するのが,クライアントの自動認識とクライアントパソコンの属性収集との連動です。
JP1では、クライアントパソコンの属性情報を元に、予め設定した配布ポリシーに従って配布先の選別を自動化します。手作業に頼ることなく、正しい配布先管理を自動化します。
アプリケーション更新の前提条件を整えるために
アプリケーションの配布は期日どおり間に合った。配布先のパソコンも確実に把握してアプリケーション配布を行った。それでも、新しい環境ではアプリケーションが正しく動かない場合もあるでしょう。その原因のひとつに動作環境の不一致があります。たとえば、該当パソコンのJava環境のパッチが適用されていなかった、OSのパッチが適用されていなかった、アプリケーションの前提とするExcelのバージョンが古かった、などのバージョン不整合です。
この問題を解決するためには、実際のパソコン環境をしっかり把握しておく必要があります。もちろん手作業での確認ではなく、自動的に定期的に実際のパソコンから情報を収集しておく必要があります。JP1ではインベントリ管理機能によってハードウェアの情報だけではなく、OSやパッチに関する情報をはじめ、インストールされているプログラム情報までを収集するため、これらを活用して動作環境を統一し、アプリケーション入れ替えによる動作環境の不整合を防止することができます。