ビジネスで成功するためのシステム運用管理のポイント

第10回自律運用の実現

企業活動において関心の高い「システム運用⁠⁠。前回は内部統制の対応について解説しました。最終回となる今回は、運用品質の向上とコスト削減が期待できる自律運用の実現について解説します。

ITシステムの運用管理コストは増加傾向

ITシステムはビジネスを取り巻く環境の変化によって、大規模化、複雑化の一途を辿っています。一方、ITシステムには高い信頼性が要求されると同時に、それらを運用する運用管理者にも様々なシステム障害に対応できる高い専門性やシステム構成を柔軟に変更する高度な技術が要求されています。しかし、ハードウェアコストが低下傾向であるのに対し、システム運用の維持・管理コストは増加傾向にあり、この管理コスト削減が経営者の悩みとなっています。

運用管理コスト増加の原因

ITシステムの運用管理コスト増加の主な原因は人手による運用操作の多さにあります。人を介在する運用操作の代表的な例を紹介します。

システム構成の変更

業務システムの突発的な需要に対応するため予備サーバや空きサーバを割り当てたり、各種設定パラメータを変更したりする必要があります。また、アプリケーションプログラムを更改するなどシステム環境を変更して業務システムを改善する必要があります。

システム障害への対応

システム障害発生時の原因調査を行うための資料採取やその資料分析に基づいた対処や回避を行います。そのひとつに、サーバの入れ替えや各種設定の変更など構成変更も含みます。

これらのオペレーションはマニュアル化されていても、実際は担当者の経験や知識で補っている場合がほとんどです。属人性が高く、この技術を有する担当者は限定されているため、1担当者に集中して作業のボトルネックになっているのも事実です。また、これらのコンピュータ操作は手動で行われる場合が多いため、操作ミスに起因する二次障害を誘発することも珍しくありません。このような手作業の多さが運用コスト増と運用品質の低下につながっているのです。

自律運用の適用

これらの課題を解決するためには運用プロセスを見直し、運用の効率化を図る必要があり、これを具体化するテクノロジーが「自律運用」なのです。

自律運用では、監視、分析、計画、実行というプロセスに分け、このプロセスをまわすことによって自律化を実現します。しかし、現在の技術水準ではコンピュータシステムが自ら問題を把握し、自ら考え、問題を解決する能力を持つまでには至っていません。システム運用で発生する種々な問題を蓄積し、それらをエキスパート運用管理者のノウハウと融合して、ルール化する必要があります。ルール化することで、システムの構成変更や、障害における原因調査支援と対処支援が自動化できるのです。そして自動化により、操作ミスや作業遅延を犯すリスクも解決できるのです。

図1 監視、分析、計画、実行をまわす自律運用のプロセス
図1 監視、分析、計画、実行をまわす自律運用のプロセス

JP1における自律運用

JP1では、自律運用を実現するため、監視、分析、計画、実行プロセスを主に次の製品で支援しています。

システム監視

JP1の統合管理を使用することで、ITシステム内で発生する各種の事象をイベント一覧画面に集約して監視したり、監視ツリー画面で業務視点やサーバ視点など運用管理者の視点でシステム全体を監視します。とくに 監視ツリー画面では、障害とその影響範囲の特定までを迅速に対応できるため、運用管理者のスキルに依存しない監視もできるのです。

稼働状況や障害の分析

個々のサーバの稼働状況把握はシステム全体の正常な稼働を維持していく上で不可欠です。各サーバ上で稼働する各種OS、仮想化機構、データベースやアプリケーションなどの稼働性能を一元的に管理するのがJP1アベイラビリティ管理です。稼働性能情報と統合管理で得た障害情報から、システム構成を変更したり、障害対処を自動化したりするルール作成に役立てます。

計画と実行

JP1のルールオペレーションでは、障害発生時に運用管理者が行う、障害調査、判断、対処といった一連の作業をルールとして計画・定義し、自動的に対処できるようにします。実際の運用では、すべての障害に対して、調査から対処までを自動化できるとは限りません。むしろ、本番運用の開始直後では運用ルールが蓄積されていないため自動的に対処できるほうが少ないでしょう。このような状態でも、発生した障害に対してJP1が自動的に状況を調査し、調査した結果を元に運用管理者に判断を仰ぎ、選択した対処方法に基づいて自動対処を行う方式を採用しています。すべて自動化だけではなく、部分的に人の判断を仰ぎながら運用することができるのです。

図2 人の判断を仰ぎながら運用できるJP1のルール画面例
図2 人の判断を仰ぎながら運用できるJP1のルール画面例

まとめ

以上、全10回にわたり、ビジネスを進める際のシステム運用管理について、ポイントを押さえながらノウハウを解説してきました.本連載を参考に、皆さんのビジネスに合ったシステム運用管理を実現してください.

そして、さらに詳しい内容については、以下で紹介する『JP1による業務システム運用管理の実践』を参考にしてください。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧