Ubuntu Japanese Team代表の小林です。今週はいつもの執筆陣が多忙のため、私が担当することになりました。
今回は、私が以下のように仰向けでUbuntu PCを使うようになった顛末について紹介したいと思います。
なぜ仰向けなのかと言いますと、数ヵ月前から坐骨神経痛になり、ひどい時には1分も座っていられない状態だったためです。
最初にお断りさせていただくと、今回は真面目なUbuntuの活用法ではなく、「仰向けでUbuntu PCを使うために、こんなアホなことをやっている奴がいる」という内容になります。申し訳ありませんが、「Ubuntuの使い方を知りたい」という方に今回の記事は役に立ちません。逆に「Ubuntuには興味がないけれども仰向けでPCを使いたい」という方には参考になるかもしれません。「Ubuntu Weekly Recipe」という連載なのにそれはないだろう……とも思いますが、「夏休み特別企画」ということでご容赦ください。
腰部椎間板ヘルニアの悪夢
3月下旬、尻の右側が少し痛いことに気づきました。最初は筋肉痛だろうと思っていたのですが、痛みは治まるどころか徐々に増していきました。そして1週間後には尻に力を入れると激痛が走るため自転車がこげなくなり、2週間後には安静にしていても尻から足先まで痛みとシビレを感じるようになりました。とくに座っているのがつらく、寝転ばないと食事もできなかったほどです。そしてUbuntu 10.04 LTSがリリースされた4月29日ごろには、毎朝、自分の「痛い~痛い~」といううめき声で目が覚めるほど悪化してしまいました。
病院に行ったところ、MRIで腰部を撮影することになりました。その結果、腰椎の椎間板が飛び出して神経を圧迫する「腰椎椎間板ヘルニア」が原因の坐骨神経痛である、と診断されました。確かに、画像を見ると腰椎が大きく飛び出ています。余談ですが、撮影データはCD-Rでもらえましたので、今も自宅のPCで見ることができます。
医師によると、椎間板ヘルニアは半年から1年で自然に治る場合が多いため、自宅で安静にするのが一番だとのことでした。手術は効果がないことや再発も多いため、重篤な場合や長期に渡って治らない場合でないとすすめられないようです。痛みを我慢し続けるのもつらいので、藁をもつかむ思いで鍼(はり)やカイロプラクティックなどを試してみたものの効果がみられず、諦めてしばらくは寝転んで生活することにしました。
そうすると、寝転んだまま快適にPCを使いたいという欲が出てきます。私は10年来の腰痛持ちですので、以前から寝転んでPCを使いたいと考えていました。2ちゃんねるなどを見ると、同じようなことを考えている方は多いようです。そこで、この機会に仰向けPC環境の構築に取り組み、満足いくものが実現できればどこかで公開しようと考えました。
「ゴロ寝DEスク」は?
仰向けでPCといえば、サンコーレアモノショップの「ゴロ寝DEスク」シリーズが有名です。
私は数年前のモデルを持っているのですが、座椅子などで上半身を少し起こした状態でノートPC使うには良いものだと思います。しかしながら、完全に寝転んだ状態で使うには、枕で頭を少し起こすか、ノートPCが顔の上に落ちてきそうな角度で設置しなければならないのが欠点です。長時間にわたって枕で頭だけを起こしていると首が痛くなりますし、顔の上にノートPCを急角度で設置するのは危険な上、操作もしにくくなります。
私の場合、少しでも体を起こしていると尻から足先まで痛くなる状態でしたし、デスクトップマシンを仰向けで使いたかったので「ゴロ寝DEスク」は選択外でした。
液晶モニターを吊り下げる
完全に仰向けの状態でモニターを見るには、画面を床と向かい合う形で平行に設置するのが良さそうです。ただ、コーヒーを飲む時などに一時的に体を起こすこともあります。よって、基本は床と平行で使いつつ、柔軟に画面の位置や角度を調整できるのが理想的でしょう。
これを実現するために、モニターアームをとりつけた液晶モニターを、なんらかの方法で上から吊るそうと考えました。とはいえ、天井から釣り下げるのは大げさですし、簡単に移動させることもできません。そこで、「セキスイ ステンレス 室内ふとんほし」に吊るすことにしました。布団を支える強度があるならば液晶モニターの重みにも耐えられそうですし、移動するのも容易だからです。そして、モニターアームは「サンコー 4軸式クリップモニターアーム」を購入しました。通常、モニターアームは机などの板に固定しますが、このアームはメタルラックなどのパイプに固定するモデルなので、布団干しに取り付けやすいと考えたためです。
頭の上にモニターを設置するわけですから、落下してしまう可能性も考えないといけません。これまで使ってきたVISEO MDT241WGは10キロ以上の重さがあり、顔の上に落ちてくれば鼻骨を折るなどのケガをしかねません。そこで、なるべく軽く、アームを取り付けることができ、解像度1920x1080以上のモニターという条件で探して選んだのが、安価な24型LED液晶モニター「BenQ V2410」です。
これらを取り寄せて組み合わせたところ、思惑通りのものができあがりました。
キーボードとポインティングデバイス
寝転んだ状態でPCを使うとなると、入力機器をどこに置くかが問題になります。腕を自然に降ろした状態で、キー入力とポインタ操作をできるようにしなければ快適な環境とは言えません。そこで選んだのが、「ThinkPad USB トラックポイントキーボード(英語)」です。日本語配列のモデルもあります。
これを下腹におけば、寝転んだままでも腕や肩に負担をかけることなくキー入力とポインタ操作が可能です。
このキーボードにはトラックポイントというポインティングデバイスが付いています。Windowsの場合、中ボタンを押しながらトラックポイントを操作することで画面をスクロールさせることができますが、Ubuntuでこの操作を実現するには設定が必要です。
Ubuntu 10.04 LTSの場合、以下の内容で/usr/lib/X11/xorg.conf.d/20-thinkpad.confを作成し、ログインしなおします。
9.04および9.10の場合は、以下の内容で/etc/hal/fdi/policy/mouse-wheel.fdiを作成して再起動します。
中立姿勢
これで概ね快適な環境が整ったのですが、腰痛や神経痛の場合、平らな布団に寝転ぶよりも脚を少し高くした「中立姿勢」をとると痛みが和らぎます。そこで、この姿勢をとることができる座椅子を追加で購入し、布団の代わりに使用することにしました。
これで、ひとまずは満足いく環境が整いました。
仰向け、最高!
仰向けでPCを使うのは非常に快適です。なぜ今まで座っていたんだろうという気になってきます。頻繁に立ち上がる必要があるときや、紙に文字を書く必要があるときには適しませんが、私の場合はPCに向かい続ける時間が長いですし、この記事をお読みの皆さんにもそういった方は多いでしょう。
椎間板ヘルニアになりやすいのは、一日中座り続ける仕事をしている人だそうです。ならば社員の健康のために、仰向けで仕事をするオフィスがあってもいいように思います。IT業界ならばペーパーレスになってきているでしょうし、コミュニケーションはメールやチャットで済ませればいいため、机に座らなくても支障は少ないでしょう(訪問者の信用を失いかねないという大きな問題はあるかもしれませんが)。
この仰向けUbuntu環境、今後はモニターを増やしたいと考えています。この環境を作る前は机に3枚のモニターを載せていたので、頭部を取り囲むように左右に2枚追加するつもりです。
さらに、頻繁に使うものはすべて布団干しに据え付けるつもりです。携帯電話、デジカメ、各種リモコン、各種充電器、電源タップ、ペン、メモ用紙、ハサミ、定規、カップホルダ、スピーカ、ヘッドホン、読みかけの本や雑誌、目薬、鏡、ティッシュ、鼻毛切りなどを布団干しに吊るすなり置き場を作るなりすれば、起き上がる必要を減らすことができます。家族の目さえ気にしなければ、より快適に過ごせるようになるでしょう。