[8]。
よってMirを試すためには、Intel、AMD、NVIDIAいずれかのオープンソースドライバでUbuntuが動作するテスト専用の物理マシンが必要になります。
インストール方法
手順は公式ドキュメントのインストール方法が参考になります。まずはあらかじめ、バイナリドライバを削除しておきましょう。
次にMir用のPPAを追加してパッケージリストを更新します。
さらに、PPAのパッケージの優先度を公式リポジトリのパッケージよりも高くなるように設定し、公式リポジトリの更新によって不整合が発生しないようにします。「/etc/apt/preferences.d/50-pin-mir.pref」を作成し、次の内容を記述してください[9]。
最後にシステム全体をアップグレードします。PPAのLightDMはMirディスプレイサーバであるunity-system-compositorに依存しているため、このとき必要なパッケージも追加インストールされます。またxserver-xorg-*のいくつかのパッケージもMir対応版にアップグレードされるはずです。
Mirの起動
Mirの起動はLightDMが行います。そのためインストール後、一度LightDMを再起動する必要があります。環境によっては、システム全体を再起動したほうが良いかもしれません。再起動すると、ログイン画面やログイン後の画面はそれほど変わっていないことがわかるでしょう。
そこでプロセスツリーを見て、LightDMから何が起動しているか確認してみましょう。
LightDMから起動しているunity-system-compositorがMirの実体です。ただしunity-system-compositor自体は単純にMirを実行するためのAPIを呼び出している小さなプログラムで、本体はlibmirserver.soのほうになります。
さらに現在はXMirを動かすために/usr/bin/XをMirとの通信用オプション付きで起動しています。/usr/bin/X自体はMir用に改変されておらず、そこから内部的に呼び出している/usr/bin/XorgがMir版となります。この環境ではたとえばXeyesのようなXアプリケーションもそのまま動作します。
もしMirが起動できずにXにフォールバックする場合は、上記の出力結果から、unity-system-compositorがなくなり、XはMirのオプションなしで起動することになります。
Mirのログを確認する
うまく起動できないときや動作がおかしいときは、/var/log/lightdm/以下に保存されているMirのログを確認することになります。Mirの起動まではlightdm.logに、Mirの起動以降のログはunity-system-compositor.logに残っています。すべてのログを出力したい場合は、/etc/lightdm/ligthdm.confに以下の行を追加してください。
ちなみに、現在のMirはCtrl+Alt+Fxなどで他のVTへスイッチすることはできません[10]。UIが固まったら電源ボタンで強制的に再起動するしか方法はありませんので注意してください[11]。
Mirを無効化する
Mirを一時的に無効化するには、LightDMの設定を変更します。/etc/lightdm/lightdm.conf.d/10-unity-system-compositor.confのtype行の先頭に「#」を追加してコメントアウトするだけです。
システムを再起動すると、Mirを起動せずに普通のXが起動します。ただし使用されるXはMir版のままですし、各種パッケージの優先度もそのままになります。
Mirを完全にアンインストールするなら、PPAごと削除してしまいましょう。まずは上記の方法で無効化し、さらに再起動を行ったうえで、次のコマンドを実行します。
これによりPPAからインストールしたパッケージの削除や更新されたパッケージのダウングレードが行われ、PPAを導入する前の状態に近い形に戻されます。インストール時に手動で作成した「/etc/apt/preferences.d/50-pin-mir.pref」も削除してしまってかまいません。
今後の予定
実際に動く状況に到達できたことで、Mirの今後のスケジュールも少しずつ詳しくなっています。まずMirの短期的目標は、Mirの各種パッケージをPPAから公式リポジトリに移動することです。これは2013年7月中、遅くともFeatureFreezeである2013年8月後半までには行われるはずです。また、PhoronixのテストでXMirの予想以上のパフォーマンスの低下が見られましたので、これの調査も優先度の高い事項になっています。
Ubuntu 13.10のリリースのタイミングでは、「Mirが標準で使われ、ほぼすべてのアプリケーションはXMir上で動作する」「バイナリドライバを使う場合は、従来のXサーバにフォールバックする」という状態になる予定です[12]。後者についてはバイナリドライバのMir対応が間に合えば、変わるかもしれません。
Ubuntu 14.04 LTSまでにはバイナリドライバの対応も終えている予定ですので、UnityとしてはXMirは必要なくなります。ただし、他のフレーバーの対応状況も踏まえて、LTSとしてXMirをメンテナンスし続ける予定です。
スマートフォンやタブレット向けのUbuntu Touchは、13.10でMirが導入される予定です。現在の開発版ではまだインストールされていませんが、別途PPAを追加することで動作確認できます。これも2013年7月中には移行する見込みです。
まとめ
MirはUbuntuの中でもとりわけ若く、かなり挑戦的なプロジェクトです。まだ「ユーザに広くテストを募る」段階ですらなく、今回紹介した方法もおそらくすぐに古くなってしまうでしょう。
それだけに「新しいモノを作っている・それに関わっている感」は味わえます。Mirのコードリポジトリの履歴を視覚した動画を見ると、頻繁に全体への変更が加わっていることや、プロジェクトの開始からずっとほぼ数人で作業を行っていることがわかるでしょう。
そして腕に自信のある人はただ試すだけでなく、ソースからビルドしてみたり、Canonicalに雇われてみたりするのも良いかもしれませんね。