今回は第335回の続きとしてMATE(マテ)デスクトップ環境を自力でビルドし、インストールする方法を紹介します。Ubuntu MATEに関する情報も最後にちょっとだけあります。
ビルドの続き
簡易リポジトリの準備
今度はこれをapt-getコマンドでインストールするようにします。方法はいくつかあるのですが、ローカルに簡易リポジトリを作成するという最も簡単かつ古式ゆかしい方法にします[1]。現在ではまったく推奨されない方法ですが、難易度ではこれよりも簡単なのはちょっと思いつかいので今回採用することにしました。どのぐらい簡単かというと、
たったこれだけで済みます。APTラインの追加は次のように行います。
内容は次のとおりです。
とは言えこれは筆者の例で、“/home/ikuya”は適宜変更してください。何にすればいいのかよくわからない場合は、
を実行して確認してください。注意点としては、“file:”の後ろのスラッシュ(“/”)は3つです[2]。
を実行し、エラーが出なければ問題ありません。エラーが出た場合は、dpkg-scanpackagesコマンドを実行するカレントフォルダをよく確認してください。
次のパッケージ
あとはこれを延々繰り返して行くだけですが、次のパッケージは“mate-desktop”です。
上記のコマンドを実行し、パッケージのバージョンを変更してビルドを実行するとエラーで止まるので必要なパッケージをインストールします。ここで少しだけ違いがあり、今回準備した簡易リポジトリは署名していないので、パッケージをインストールする際に、
と言うメッセージが表示されます。ここに表示されるパッケージは今回ビルドしたものである、と言うことを確認してから“y”キーを押して進めてください。ビルド完了後できたパッケージをpackagesフォルダーに移動してから dpkg-scanpackagesコマンドを実行し、apt-get updateコマンドでアップデートする、までがワンセットです。再掲になりますが、コマンドにすると次のような感じです。
ビルドするパッケージ一覧
ビルドするパッケージは次のとおりです。順番もこのとおりに行えば、依存関係についての問題は生じないでしょう。前述であっても再掲します。
ハマりどころ
基本的には粛々と機械的にやっていけばいいのですが、2つほど落とし穴があります。まずは“mate-desktop-environment”で、これはchangelogのバージョンが変わるとフォルダーの名前も変わってしまうタイプのフォーマット[3]になっています。よって、dchコマンド実行後は今回の場合
などとフォルダーの移動を忘れないでください。
あとは“atril”ですが、ビルドに失敗します。これはビルドに必要なパッケージが足りない(のに列挙されていない)からで、
を実行してください。本来はdebian/controlのBuild-Dependsに"libsecret-1-dev"を追加し、変更した旨をdebian/changelogに書くのが正しいですが、今回は省略しても構いません[4]。
パッケージのアーカイブ
python-cajaまで作業が完了したら、packagesフォルダーには148個のパッケージができているはずです。このフォルダーのアーカイブを作成し、ビルド環境の外にコピーしてください。
などのコマンドでアーカイブを作成し、scpコマンドでコピーするのが簡単でしょう。
インストール
パッケージはひととおり出来上がりましたが、やはり実際に動いているところを見てみたいものです。と言うわけでインストールを行うのですが、今回はMinimal CDからインストールしてみることにしましょう。
まずはisoイメージを取得しますが、くれぐれもダウンロードするアーキテクチャは間違えないでください。i386でビルドした場合はi386のisoイメージを、amd64でビルドした場合はamd64のisoイメージを前述のWebページからダウンロードします。インストールの方法は具体的には解説しませんが、ほぼUbuntu Serverと同じ方法でインストールできるのでさしたる混乱はないでしょう。こればかりはLXCやDockerよりもVirtualBoxやVMwareのほうが簡単に環境構築できると思いますが、なにか慣れているものを使用してください。
Minimal CDからのインストール後は、やはり
などのパッケージをインストールしてからsshでログインしてください。
パッケージのアーカイブをコピーし、解凍してから/etc/apt/sources.list.d/mate.listを作成しますが、すでにやっているので手慣れたものではないかと思います。
MATEの動作に最低限必要なパッケージをインストールします。
デスクトップマネージャーはlightdmにしますが、普通にインストールすると大量にパッケージがインストールされるので、必要最低限のものだけインストールします。
VirtualBoxのゲストOSとしてインストールした場合は、Guest Additionsもインストールします。
そして、最後にMATEをインストールします。
再起動し、ログインするとMATEが起動します。
デフォルトのテーマはとても見にくいので、[システム]-[設定]-[外観の設定]で適当なテーマに変更するといいでしょう[5](図1)。GNOME 2.xをお使いだった方は、当然のことではあるのですが、あまりにもそのままで懐かしさのあまりむせび泣くかも知れません。
Ubuntu MATE
Ubuntu Weekly Topicsでも既報のとおり、Ubuntu MATEがUbuntu 14.10でリリースされるべく準備中です。その一環として、14.04にインストールする方法も紹介されていますが、偶然にもmini.isoを使用するところが合致しています[6]。とは言えこのWikiの内容はインプットメソッド(日本語入力)のことは考慮されていないため、この記事が参考になるのではないかと思います[7]。