今回はUbuntu Weekly Recipe 第326回 Celeron J1900で省エネPC生活のアップデート版です。
クラウド時代のNASサーバー……の前に
データを手元に置かないことが普通になった昨今、NASサーバーはどうあるべきなのだろうか、というのは前々から考えていたことですが、今回ある程度考えがまとまったので実践してみることにしました[1]。とはいえ、今回は全く関係なく、Intel最新のSoCを普通にデスクトップPCとして使えるかどうかのお話です。
PCの構成
今回作成したPCの構成は次のとおりです。
N3150-ITXにした理由は、J1900よりもTDPが下がったSoCを採用したマザーボードだからです。J1900ではTDPは10Wでしたが、N3150ではわずか6Wです。14nmプロセスルールで製造されているところもいいです[2]。またN3150はSATA 3.0もUSB 3.0も2ポートずつしかありませんが、N3150-ITXでは独自にチップを搭載してそれぞれ4ポートに拡張しています[3]。
メモリは、最近価格が下落傾向であることもあって新規に購入しましたが、N3150-ITXでは1.35Vのほか1.5Vのメモリも使用できることから、うちにあったSMD-N4G28NP-16KLK(1.35V)、SMD-N4G68NP-10FM(1.5V)、SMD-N4G28C1P-16KL(1.35V)のいずれも動作しました[4]。
SSDは今回使用するために購入したわけではないので、テストが終わったら取り外します。
ケースは1年ほど前に在庫処分品を格安で購入し、放置してあったのを引っ張り出してきました。これならなんとか3.5インチHDDが2台入るというのがポイントです。ただし、今となっては入手が難しいでしょう。
インストールするUbuntu
今回インストールしたUbuntuは15.04ですが、やはり14.04 LTSも動作させたいところです。しかし、14.04.2のインストーラーからブートするとXが起動しません。仕方なく14.04.1のインストーラーからブートするとXは起動したのですが、解像度がXGAより上に上がりません。というわけで、LTSEnablementStackを有効にする必要があります。3Dアクセラレーションが効かないので重いUnityに耐えつつ最新の状態にアップデートし、wikiにもある次のコマンドを実行します。
もう一つのポイントとしては、USB 3.0のUSBメモリから起動する場合は、必ずLANポートの下にあるUSB 3.0ポートに接続してください[5]。その隣のUSB 3.0ポートに接続するとブートしませんでした。おそらくLANポートの下のポートがSoC内蔵のUSB 3.0ポートであり、その隣は外部チップのUSB 3.0ポートということなのだと思います。これはわりと大きな罠で、最初は何が起こったのかわかりませんでした[6]。
動画再生支援機能
箱やWebサイトにはH.265+4K動画が再生できるとあったので、確認してみました。とりあえずi965-va-driverとvainfoとvlcパッケージをインストールし、vainfoコマンドを実行してみます。
なるほど、H.265(HVC)には対応していなさそうです。libva自体がH.265に対応していないのかと思ったのですが、そんなこともないようです。そもそも対応していたとしてもH.265でエンコードされた動画というものにお目にかかったことがないので、試しようもありません。というわけで、H.264でエンコードされた4K動画で試してみました。Blender Foundationで制作されたSintelは大変ありがたいことに4Kバージョンも配布しているので、ダウンロードして再生してみました。しかし、全く見られたものではありませんでした。別PCでは動画再生支援機能が有効になった状態で再生できたので、少なくともOSがLinuxの場合は、このSoC単体では4K動画の再生は現状厳しそうです。
ベンチマーク
CPU
今回もCPU部分の速度を計測するため、LibreOfficeのビルドをやってみました。残念ながら4.2.1はビルドできなかったので4.2.8にしましたが、1回ビルドしただけですが523分かかりました、J1900では412分だったので、1.25倍の時間がかかったことになります。とはいえ、N3150よりもJ1900のほうがクロック周波数が1.16~1.3倍速いので、ほぼそのとおりの時間になっているとも考えられます。もちろん今回はUbuntu 15.04に14.04のLXCコンテナを作成しているので、その分のオーバーヘッドとか諸々あるかもしれないことは注意すべきことではありますが[7]。
ちなみにLXCに関しては第226回をご覧ください。とはいえ結構情報が古いのですが。特にlxc-shutdownコマンドはもうなくなっています。簡単に解説すると
でlibo-buildという名前のコンテナを作成し、起動します。割り当たったIPアドレスを確認するには
を実行します。今回は10.0.3.232だったので、
でアクセスします。パスワードはユーザー名と同じく“ubuntu”です。作業が終わったらexitでsshから抜け、
を実行します。
SATA 3.0
N3150の特徴の一つは、前述のとおりSATA 3.0とUSB 3.0に対応したことです。しかし、それぞれ2ポートずつしかないため、N3150-ITXではチップを増設しています[8]。ということは速度差があるのではないかと思い、計測してみました。とはいえ、計測したのはSATA 3.0だけですが。
SATAポート4つのうち、手前の2つにはSATA3_1とSATA3_2という名称が、後ろ(バックパネル側)の2つにはSATA3_A1とSATA3_A2という名称が振られています。このネーミングルールからすると、おそらく前がSoC内蔵、後ろが外部チップなのでしょう。というわけで、SSDを接続してベンチマークを取ってみました。図1が前に接続した結果であり、図2が後ろに接続した結果です。ご覧のとおり速度差が見受けられますが、そもそもSDSSDA-240G-J25はカタログスペックからすると読み込みは520MB/s、書き込みは350MB/sぐらい出るはずです。というわけで、別のPCに接続した結果が図3です。わりとカタログスペックに近い数字が出ています。
結論としては、SSDなど速度が求められるデバイスは前側のSATAポートに接続したほうが速度が出ますが、いずれにせよフルスピードは出ない、ということがわかりました。
温度
というわけで、J1900とあまり変わりありません。プロセスルールがシュリンクすると発熱量は下がる、というのは昔のことであることがよくわかる結果です。
消費電力
ワットチェッカーで計測したところ、高負荷状態でも15W前後でした。J1900と比較して、概ねTDP分の消費電力が減ったことになります[9]。そのぶんCPUパワーが減ってはいますが、もし必要であれば上位版のN3700-ITXにするといいということなのでしょう。