今回はUbuntu GNOME 15.10の変更点を紹介します。
Ubuntu GNOME 15.10≒GNOME 3.16
現在のGNOMEの最新バージョンは3.18 ですが、Ubuntu GNOME 15.10では3.16 を採用しています。
とはいえ、これまでと同じくコンポーネントのバージョンを揃えているわけではなく、表1 に挙げたとおりバージョンが異なるものを使っています。なお、コンポーネントはすべてパッケージ名で表記しています。
表1 Ubuntu GNOME 15.10のコンポーネント(抜粋)
3.8.x
vino
3.10.x
gedit
3.12.x
brasero, emphathy, gnome-icon-theme
3.14.x
gnome-online-accounts, gnome-online-miners, nautilus
3.16.x
adwaita-icon-theme, aisleriot, baobab, cheese, dconf-editor, eog, evince, evolution, file-roller, gcr, gdm, gnome-accessibility-themes, gnome-bluetooth, gnome-calculator, gnome-color-manager gnome-contacts, gnome-control-center, gnome-disk-utility, gnome-documents, gnome-font-viewer, gnome-getting-started-docs, gnome-getting-started-docs-ja, gnome-keyring, gnome-mahjongg, gnome-maps, gnome-mines, gnome-music, gnome-orca, gnome-photos, gnome-screenshot, gnome-session, gnome-settings-daemon, gnome-shell, gnome-shell-extensions, gnome-sushi, gnome-system-monitor, gnome-terminal, gnome-themes-standard, gnome-tweak-tool, gnome-user-guide, gnome-weather, mutter, seahorse, totem, yelp, zenity
3.18.x
gnome-backgrounds, gucharmap, simple-scan
"brasero"と"emphathy"と"gnome-icon-theme"は3.12.xが最新版なのが注意点ですが、"Nautilus(ファイル)"が3.14.xのままなのが特徴でしょうか。GNOME 3.16のリリースノート によると、ルックアンドフィールが変更されているとのことで、それを避けるために3.14.xに据え置いているものと思われます。"gedit"もそうです。VNCサーバーの"Vino"がバージョン据え置きなのもおおむね同じ理由 で、仕様変更を嫌ってのことのようです。
初回ログイン時のヘルプの表示
15.10から初回ログイン時にヘルプ(初めて使う方へ)が表示されるようになりました(図1 ) 。未訳の部分もありますが、これで簡単な使い方を理解することができます。
図1 初回ログイン時に表示されるヘルプ
外観が大幅に変わったアプリケーション
"Eye of GNOME(画像ビューアー)"は新しいルック&フィールに更新されました(図2 ) 。ツールバーにアイコンが並ばなくなったくらいで、機能的にはさほど違いはないようです。
新規アプリケーション
"写真"と"音楽"が新規に追加されました。従来の"Shotwell"はなくなり、"写真"がデフォルトの写真アプリケーションになりましたが、音楽アプリケーションのデフォルトは"Rhythmbox"が継続しています。
では"写真"は"Shotwell"を置き換えられるほどの機能を持っているのかと言われると全然そのようなことはなく、現状では"Eye of GNOME(画像ビューアー)"とさほど機能の差はありません(図3 、図4 )。もちろん"Shotwell"はリポジトリから削除されたわけではないので、必要であれば別途インストールできます。
図3 "写真"の一覧表示
図4 "写真"の個別表示。[ ロック画面に使用する]なんてものがある
"音楽"も非常にシンプルなアプリケーションで、本当に再生とそれに付随する機能しかありません(図5 ) 。GNOME Shell 3.16から通知システムが変更されましたが、この"音楽"でも恩恵にあずかることができます(図6 ) 。
図5 "音楽"で再生中
図6 "音楽"での通知
デフォルトでインストールはされませんが、"カレンダー"(パッケージ名は"gnome-calendar")も新規に追加されたアプリケーションです(図7 ) 。これまでは予定を編集する場合は"Evotution"を使用する必要がありましたが、メーラー機能なども含んでいるため、予定を編集したいだけの場合には牛刀割鶏でした。
図7 "カレンダー"で予定を表示しているところ(注:予定はフィクションです)
レガシートレイ
GNOME Shell 3.16からレガシートレイ(legacy tray)という機能がサポートされました。GNOME Shellに対応していない古い通知トレイの仕様に対応しているアイコンの場合は、画面左下に表示されるようになりました(図8 ) 。典型的な例はFcitxですが、クリップボードマネージャーの"Clipit "なども含まれます。
図8 レガシートレイ機能。左下にFcitxのメニューを表示している
拡張機能
いつも紹介しているDash to Dock とTopIcons は正しく動作しています。特に後者は積極的にインストールするべきでしょう。というのも、この拡張機能をインストールするとレガシートレイは無効になり、右上にアイコンが表示されるようになります(図9) 。
図9 TopIcons拡張機能を有効にすると、左下にあったアイコンが右上に移動する
AppIndicator SupportはKStatusNotifierItem/AppIndicator Support と名前が変わりました。そして現在はメンテナンスモード です。検証したところ、Fcitxがうまく動作しなくなる(サブメニューが開けなくなる)という不具合に遭遇したので、インストールはしないほうがいいでしょう。
今まではあえて紹介しませんでしたが、Fcitx用の拡張機能であるInput Method Panel もあります(図10 ) 。GNOME Shellとルックアンドフィールを統一したい場合にはいいのですが、状態パネルは表示できなくなります。
図10 Input Method Panel拡張機能を有効にし、日本語を入力しているところ
日本語入力(インプットメソッド)関連
第395回 でも述べたとおり、Ubuntu 15.10からデフォルトのインプットメソッドはFcitxになりました。また、前述のとおりFcitxのアイコンはレガシートレイ機能で左下に表示されるため、拡張機能をインストールするのがおすすめです。
ja/enといったキーボードのレイアウト切り替えアイコンが表示されている場合、通常は不要なので表示しないようにするといいでしょう。[ すべての設定] -[ 地域と言語]の[入力ソース]をどれかひとつ(通常は[日本語]でしょう)にすると、このレイアウト切り替えアイコンは表示されなくなります(図11 ) 。
図11 入力ソースを1つにすると、キーボードレイアウト変更アイコンが消える
FcitxではなくIBusを使用したい場合、Ubuntu GNOMEには言語サポート(language-selector)はないため、im-configコマンドでGUIによる変更を行うか、端末で次のコマンドを実行し、一旦ログアウトして再ログインしてください。
$ im-config -n ibus
Mozcを使用したい場合、事前に"ibus-mozc"パッケージをインストールしておくといいでしょう。再ログイン後、[ すべての設定] -[ 地域と言語]の[入力ソース]に[日本語 (Mozc)]を追加する必要があります。
より完全なGNOME 3.16とGNOME 3.18
より完全にGNOME 3.16にするパッケージはPPA で配布されていますが、アップデートされるパッケージはあまり多くありません。というか、ほぼ追加する意味はないように思います。
GNOME 3.18にアップデートするPPA も同様に公開されていますが、16.04の開発版を使うのとどちらかいいのか悩ましいところです。いずれにせよ実運用は難しいでしょう。