今回はGNOME組み込みの全文検索エンジンであるTrackerの使い方を解説します。
全文検索の利便性
自分で書いたドキュメントはファイル名を見ればだいたい内容を思い出せますが、まれにどうしても思い出せないことがあります。テキストファイルであればgrepを使えば検索できますが、LibreOffice Writerで作成したドキュメントではそうはいきません。
また、雑誌のバックナンバーをPDFで購入し、その検索を行いたいこともよくあります。
そのような場合全文検索エンジンを使うと便利で、世の中にたくさんありますが、構築が大変だったりします。そのような場合、GNOMEに組み込まれている全文検索エンジンであるTrackerを使うと便利です。というわけで今回はそのTrackerの使い方を解説します。
今回使用したのはUbuntu GNOME 17.04のGNOME 3.24です。
サンプルドキュメント
今回使用するサンプルドキュメントは第476回の記事のもとになったテキストファイル(Markdown形式)とそれをOpenDocument形式(ODF)にしたもの、さらにそれをLibreOffice WriterでPDFに変換したものです。すなわち3つのファイルフォーマットですが内容は同じです。ファイル名はsnap-nextcloudにそれぞれの拡張子を付けたものです。
3つのファイルは、ホームフォルダー直下にある「ドキュメント」フォルダーに置きます。
基本的な設定
検索に関する基本的な設定は[設定]-[検索]で行います(図1)。全体的に検索を行うかどうかと、個々のアプリケーションの検索のオンオフと検索順位を設定できます。右下のギアアイコンをクリックすると、検索する場所(フォルダー)を設定できます(図2)。[その他]タブで好きなフォルダーを追加できます(図3)。
先ほど[ドキュメント]フォルダーにファイルを置いたのは、検索する場所に入っているからです。
基本的な検索
GNOME Shellのアクティビティ画面の上部に[検索ワードを入力]という欄があり、ここで検索するキーワードを入力します。原則としてはファイル名を検索しますが、PDFファイルは全文検索もできます。図4はファイル名で検索、図5は内容で検索し、2つ検索結果が表示されています。上をクリックすると[ドキュメント (GNOME Documents)]が起動し、PDFファイルを開くことができますが、下をクリックしても何も起きません[1]。
詳細な設定と検索ツール
GNOMEソフトウェアで[desktop search]と検索すると[Desktop Search]がヒットするので、これをインストールします。コマンドラインからインストールする場合は次のとおりです。
インストール後、[検索とインデックス生成]を起動します。実行ファイル名はtracker-preferencesです。[設定]の[検索]と比較すると、より細かな設定が行なえます(図6)。[無視するデータ]タブでインデックス化したくないパターンを登録しておくといいでしょう(図7)。
[デスクトップの検索]ではテキストファイルやODFファイルでも全文検索ができます(図8)。実行ファイル名はtracker-needleです。検索欄の左側3つのアイコンは表示モードの切り替えです。検索欄のすぐ横の♥アイコンはタグ操作パネルで、一番右端のアイコンはインデックスの統計情報です。
タグ付け
検索対象となるファイルにはタグを付けることができます。大量にファイルがある場合は区別が付きやすくなっていいのではないでしょうか。
タグを付ける方法はいくつかあります。ひとつは[デスクトップ検索]でタグ操作パネルを表示し、検索結果のファイルにタグを付けていく方法(図9)です。また、tracker-guiをインストール後、ファイルマネージャのNautilusでタグを付けたいファイルを右クリックして[プロパティ]を開き、[Tags]というタブでもタグを付けられます(図10)。
いずれもタグの付け方は同じで、付けたいタグを入力して[追加]あるいは[+]ボタンをクリックします。併記されるテキストの一覧はタグ一覧で、そのタグがついている場合はその横にチェックが入ります。
ほかにもコマンドラインからタグを付ける方法もあります。それは後ほど紹介します。
コマンドラインで使用する
Trackerはコマンドラインでも使用することができます。まずはTrackerの状態を確認してみましょう。
簡単な検索例は次のとおりです。
図8と同じ結果になっています。
タグで検索する例は次のとおりです。
タグ一覧は次のコマンドで表示できます。
タグを追加する例は次のとおりです。
Trackerの動作がおかしくなり、インデックスを再作成する方法は次のとおりです。
Trackerコマンドのヘルプは、次の方法で表示できます。
サブコマンド(ここではreset)のヘルプは、次の方法で表示できます。
サポートするファイル
TrackerでサポートするファイルはSupported File Formatsに掲載されています。基本的にはconfigureのオプションで決定されるため、各Linuxディストリビューションのパッケージによって異なることが考えられます。
Ubuntuのパッケージを調査してみたところ、ISOイメージとIPTCメタデータを除いて概ね対応していることがわかりました。