Ubuntu Weekly Recipe

第715回Lenovo ThinkPad X13 Gen2 AMDにUbuntu 22.04 LTSをインストールして使用する

今回は、新たに購入したLenovo ThinkPad X13 Gen2 AMDに、Ubuntu 22.04 LTSをインストールして使用してみました。使用感やベンチマークを見ていきます。

選定理由

これまで使用していたパナソニック レッツノート CF-SZ6FD3QRは購入から5年以上経過し、ただでさえ少ない8GiBメモリーでは日常的な使用が厳しくなってきました。もちろん故障の心配もあります。

次のノートPCを何にするかは悩ましかったのですが、AMD好きとしてはやはりノートPCでもAMDを使用することを決めて機種選定しました。となるとレッツノートは選択肢から外れることになります。軽量かつ頑丈でUbuntuも素直に動くので、実に悩ましい決断ではありました。

昨今の半導体不足、物流の混乱などの諸問題を受け全体的にPCの入手性が悪くなっている中、今回購入したのはLenovo ThinkPad X13 Gen2 AMDです。2022年1月半ばの購入時点で確認したところでは納期1ヶ月程度の予定だったのと、予算的にも問題なかったからです。

この「予算内」というのはなかなかに曲者で、CPUもメモリーもディスプレイもこんなにいいものでなくても良かったのですが、とりあえず盛れるものは盛っておけという判断になりました。

実際の納期は2022年4月6日で、納期1か月はどこいったという感じではありましたが、このご時世では致し方ないところであります。

ThinkPad X13 Gen2 AMDはLaptop system certified with Ubuntuということで、海外ではUbuntuプリインストールモデルも選択できます。ということはUbuntuが問題なく動作するのは間違いないので、これもまた決めた理由の1つです。

レッツノートと比較するとバッテリーの持ちが悪くなることは予想できましたが、バッテリーを大容量タイプに変更でき、またそれでも足りなかったらUSB-C経由でモバイルバッテリーを接続すればいいので、おそらく問題ないだろうという判断もありました。バッテリーほかスペックを盛れるだけ盛ったら重さが1.3kgほどになり、レッツノートよりは重くなってしまったのは問題ではあります。

もうまもなくGen3が発売されるようですが、現在でもGen1が併売されているところからGen2も当面は入手できるでしょう。もちろん今回の記事はGen3でもおおむね役に立つと思われます。

ハードウェアスペック

図1「このシステムについて⁠⁠、すなわちハードウェアスペックの概要です。

図1 ThinkPad X13 Gen2 AMDの「このシステムについて」
図1

では個別に見ていきましょう。

CPU

CPUは「AMD Ryzen 7 PRO 5850U with Radeon Graphics」です。8コア16スレッドモデルですが、ノートPCでこれだけのスレッド数が必要になる理由は正直なところよくわかりません。筆者はCIをぶん回してDockerにデプロイするような開発職ではないため、完全に宝の持ち腐れです。検証用にVirtualBoxを使用することはあるため、メモリーと合わせて複数の仮想マシンを同時に使用できるのはメリットではありそうですが、いつもではありません。

メモリー

システムメモリーは32GiBですが、やはりノートPCで32GiBものメモリーが必要になる理由はよくわかりません。8コア16スレッドのCPUをフルパワーでぶん回すと16GiBメモリーでは足りなくなることは経験としてわかっているのですが、ノートPCでそこまですることはありません。

とはいえメモリーの余裕は心の余裕であり、レッツノートの8GiBに苦しんだことを考えるとちょうどいい気はします。

ストレージ

ストレージは「WDC PC SN730 SDBQNTY-512G-1001」です。見慣れない型番ですが、PCメーカーに卸すモデルのようです。日常的なデータ置き場と仮想マシン置き場で512GiBでもやや多いかなという感じです。

とはいえストレージの余裕は心の余裕であり、レッツノートの256GiBに苦しんだことを考えるとちょうどいい気はします。

有線LAN

有線LANは「RTL8111/8168/8411 PCI Express Gigabit Ethernet Controller」です。NICは乗っていますが、RJ45コネクターはないので実質使用できません。ドッキングステーションを接続する必要があるようです。

よってAnker PowerExpand USB-C & イーサネット アダプタを購入しました。AX88179として問題なく認識しています。

無線LAN

無線LANは「Wi-Fi 6 AX200」です。鉄板ともいうべきWi-Fi 6 AX200が搭載されており、これも決め手の1つです。Ubuntuでも安定して動作することは第696回でも紹介したとおりです。

モデム

モデムは「EM120R-GL LTE Modem」です。構成上外せなかったのでLTEモデムも搭載されています。SIMカードを挿せば使えるはずですが今回は使用していません。今後も使用予定はないため、Ubuntuでオフにしています。

USBコントローラー

USBコントローラーは「uPD720202 USB 3.0 Host Controller」です。理由は不明ですが、ルネサス(というか元NECの半導体部門)の鉄板USB 3.0コントローラーが搭載されていました。

内部的に無線LAN[1]⁠、指紋センサー、カメラがUSB接続されているため、ポートが足りないのかもしれません。またはドッキングステーション用かもしれません。

指紋センサー

指紋センサーは「Goodix USB2.0 MISC」です。電源ボタンに指紋センサーがついており、Ubuntuでも使用可能です。使用感は後述します。

キーボードバックライト

キーボードバックライトは特にハードウェアとしては見えていないのですが(見落としているだけかもしれません⁠⁠、キーボードにバックライトがあるのもお気に入りのポイントです。明るさ2段階とオフの3段階から選択できます。

Ubuntuインストール前の注意

デュアルブートを推奨するわけではまったくないのですが、もしデュアルブートを行うのであれば事前にWindowsパーティションのBitLockerを解除し、縮小しておくのをお勧めします図2⁠。

図2 安全性確保のため、デュアルブートにする場合は事前にUbuntu用の空パーティションを確保しておくのがお勧め
図2

使用感

まだ本運用を開始したわけではありませんが、使用感を見ていきましょう。

Ubuntuのバージョン

このタイミングなので、使用するUbuntuのバージョンは22.04 LTSとしました。20.04 LTSでも問題なく使用できそうではありましたが、後述する電源モードがあるだけでも22.04 LTSを使用すべきであるというのが今のところの感想です。20.04 LTSでは22.04 LTS以上にバッテリー残量の変化が大きくて残り時間を推測しにくかったです。

ディスプレイのスケーリング

ディスプレイのスケーリングをどうするかは悩ましいところですが、今のところは「任意倍率のスケーリング」を有効にして「150%」にすることで落ち着いています図3⁠。

図3 ⁠任意倍率のスケーリング」を有効にすると「サイズ調整」「150%」などが選べるようになる。ただし途中で切れているもののいくつかの問題が起きる可能性がある
図3

バッテリーの持続時間

Ubuntu 22.04 LTSは「設定⁠⁠-⁠電源の管理」「電源モード」でパフォーマンス重視にするか省電力重視にするかを選択できます。今回はこれほどパワフルなCPUであれば省電力でいいだろうという判断をしています図4⁠。

図4 ⁠電源モード」は対応している場合3種類から選択できる
図4

いずれにせよ10時間程度は持ちそうで、1日外出するくらいであればACアダプターは不要そうです。

ファームウェアのアップデート

ThinkPad X13 Gen2 AMDはUbuntuプリインストールモデルもあるということで、ファームウェアのアップデートもUbuntu上で行えるようになっています。本体だけではなくSSDなどのファームウェアもアップデートできるのはすごいです。

「Firmware」のパッケージ(パッケージ名はgnome-firmware、ただし今回はFlatpakパッケージを使用)をインストールすると、各種デバイスのファームウェアをアップデートできます図5⁠。今回は残念ながらWindowsが強制的にアップデートを行って最新版になっているため確認できませんでした。

図5 ⁠Firmware」でUEFI BIOSだけではなくNVMe SSDのファームウェアがアップデートできる
図5

指紋認証

指紋認証が可能なので実際に使用してみたのですが図6⁠、ログイン後にパスワードを入力しなければいけず意味がないので使用をやめてしまいました。

図6 ⁠ユーザー」「指紋認証ログイン」があるので、指紋リーダーは認識していることがわかる
図6

キーボードのバックライト

Ubuntu 20.04 LTSでは「設定⁠⁠-⁠電源」「キーボードの明るさ」という項目があり、ここでバックライトの切り替えができたのですが図7⁠、22.04 LTSではこの項目がなくなってしまいました。Fn+スペースキーで切り替えましょう、ということなのでしょう。

図7 Ubuntu 20.04 LTSの「電源」には「キーボードの明るさ」があり、3段階から選べた
図7

LDAC

ThinkPadは全く関係ないのですが、Ubuntu 22.04 LTSからはBluetoothのコーデックにLDACとapt-Xをサポートしました。たまたま前者に対応したSoundcore Liberty 3 Proを入手したので、試してみました。

「gstreamer1.0-plugins-bad」パッケージと「PulseAuido音量調節(パッケージ名はpavucontrol⁠⁠」をインストールし、再起動します。その後ペアリングして「PulseAudio音量調節」を起動し、⁠設定」タブで「Codec」「LDAC (High Quality)」に変更します図8⁠。

図8 対応している機器の場合LDACが選択できる
図8

もしすでにペアリング済みの場合は、事前に削除してペアリングからやり直してください。

壁紙

ThinkPadは全く関係ないのですが、Ubuntu MATE 22.04 LTSにはAIが生成したクラゲの壁紙が3種類収録されています。実はこれ全部で8種類あり、Creative Commons 0(すなわちパブリックドメイン)公開されています。

今回はそのうち最も気に入ったものを設定してみました図9⁠。

図9 筆者が選定した壁紙
図9

ベンチマーク

手元に何故かRyzen 7 5700Gがあるので、軽くCPUのスペックを計測してみます。Ryzen 7 5700GはRyzen 7 PRO 5850Uと同じく8コア16スレッドで、クロック周波数はちょうど半分です。ただしメモリーはDDR4 3200 MHz(5700G)とLPDDR4 4266MHz(5850U)でだいぶ速度差があるので、単純に半分というわけではないことが期待できます。

ベンチマークアプリケーションはいつものPhoronix Test Suite 10.8.3です。

ThinkPad X13 Gen2 AMDの電力設定は「パフォーマンス」に変更しています。⁠省電力」との違いを計測しようとは思ったのですが、無意味なのと時間がかかりすぎる(1回9時間程度かかる)ので省略しました。

7-Zip

7-Zipの計測では、いずれもおおむね6割程度の性能を確保しています。

Phoronix Test Suite 10.8.3MIPS, More Is Better7-Zip Compression 21.06Test: Compression RatingAMD Ryzen 7 PRO 5850UAMD Ryzen 7 5700G16K32K48K64K80KSE +/- 91.30, N = 3SE +/- 52.98, N = 348537727631. (CXX) g++ options: -lpthread -ldl -O2 -fPIC Phoronix Test Suite 10.8.3MIPS, More Is Better7-Zip Compression 21.06Test: Decompression RatingAMD Ryzen 7 PRO 5850UAMD Ryzen 7 5700G15K30K45K60K75KSE +/- 233.17, N = 3SE +/- 152.86, N = 341728711951. (CXX) g++ options: -lpthread -ldl -O2 -fPIC

カーネルのビルド時間

カーネルのビルド時間も、いずれもおおむね6割程度の速度です。

Phoronix Test Suite 10.8.3Seconds, Fewer Is BetterTimed Linux Kernel Compilation 5.16Build: defconfigAMD Ryzen 7 PRO 5850UAMD Ryzen 7 5700G306090120150SE +/- 0.02, N = 3SE +/- 0.17, N = 3147.8387.72 Phoronix Test Suite 10.8.3Seconds, Fewer Is BetterTimed Linux Kernel Compilation 5.16Build: allmodconfigAMD Ryzen 7 PRO 5850UAMD Ryzen 7 5700G400800120016002000SE +/- 16.10, N = 3SE +/- 1.18, N = 31986.501138.83

LLVMのビルド時間

LLVMのビルド時間は65%程度の性能が出ています。

Phoronix Test Suite 10.8.3Seconds, Fewer Is BetterTimed LLVM Compilation 13.0Build System: NinjaAMD Ryzen 7 PRO 5850UAMD Ryzen 7 5700G2004006008001000SE +/- 1.07, N = 3SE +/- 0.19, N = 31053.65679.24 Phoronix Test Suite 10.8.3Seconds, Fewer Is BetterTimed LLVM Compilation 13.0Build System: Unix MakefilesAMD Ryzen 7 PRO 5850UAMD Ryzen 7 5700G2004006008001000SE +/- 0.96, N = 3SE +/- 0.29, N = 31074.44696.77

Blender

Blenderのレンダリングはいろいろ試しましたが、結果がほぼ同じ傾向だったので1つだけ掲載します。やはり6割程度でした。

Phoronix Test Suite 10.8.3Seconds, Fewer Is BetterBlender 3.0Blend File: Barbershop - Compute: CPU-OnlyAMD Ryzen 7 PRO 5850UAMD Ryzen 7 5700G6001200180024003000SE +/- 1.18, N = 3SE +/- 1.76, N = 32684.651544.17

というわけで、5850Uはおおむね5700Gの6割程度の性能であると結論づけていいでしょう。

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