Ubuntu Weekly Recipe

第759回Ubuntu 23.04の変更点

今回は明日4月20日にリリースされる予定のUbuntu 23.04の変更点の概要をお知らせします。

Ubuntu 23.04

明日4月20日に、Ubuntu 23.04とそのフレーバーがリリースされる予定です。コードネームはLunar Lobsterで、⁠月のロブスター」という意味です。

図1はロブスターな背景のUbuntu 23.04のデスクトップです。

図1 Ubuntu 23.04のデスクトップ
図1

大きな変更点は、なんといっても新インストーラーの採用でしょう。GNOMEも最新の44にアップデートされています。

では具体的に見ていきましょう。

リリースノート

Ubuntu 23.04を試す前に、必ずリリースノートに目を通してください。リリースノートのドラフトは現在でも読めますが、日本語訳などの詳細な情報はリリース後に公開される(予定の)Ubuntu Weekly Topicsに掲載されます。

新インストーラー

Ubuntu Weekly Topicsではさんざん取り上げられているのでご存知でしょうが、UbuntuではFlutter+Subiquiltyベースの新インストーラーが以前より開発されており、この23.04で従来のUbiquityから置き換えられることになりました。

Ubuntu Weekly Topicsの2013年1月13日号で紹介されているとおり、新インストーラー[1]はおおむね従来のUbiquityの機能を踏襲していますが、ZFSでのインストール機能はありません。一方Ubiquityにはなかった、テーマの配色を選択する機能は増えています。

この新インストーラーをスクリーンショットとともに紹介します。

まず起動すると言語選択メニューが表示されます図2⁠。

図2 言語選択メニュー。背景にゴミが残っているのはご容赦
図2

続けてインストールと試用のメニューが表示されます図3⁠。Ubiquityでは言語選択と一緒でした。

図3 インストールするか、試用(デスクトップの起動)をするかの選択
図3

インストールを進めていき、インストール方法で「高度な機能」をクリックしても、LVMはあるもののZFSはなくなっています図4⁠。

図4 UbiquityではここにZFSの選択肢があった
図4

新たにテーマの配色を選択できるようになりました図5⁠。

図5 配色が変更できるようになった
図5

Ubuntu Minimal

リリース時点でどのような扱いになるのかは不明ですが、Ubuntu(デスクトップ)とUbuntu ServerをそれぞれLTSリリースと中間リリース(23.04はこれ)の合計4つから選択できる、メタインストーラーともいうべきUbuntu Minimalが用意されています。これは100MBくらいのISOイメージで配布されます。

これもスクリーンショットを見ると理解が早いでしょう。Ubuntu Minimalから起動してしばらく経つと、図6のようなメニューが表示されます。

図6 インストールするUbuntuのバージョンを選択する
図6

もうこれがすべてで、選択したバージョンのUbuntuのインストーラーをダウンロードし、インストールが開始します。

リリースの数日前に試してみても図6にもあるように「Ubuntu 22.10」になっています。そもそもデスクトップ版だとインストーラーが起動しなかったりと4月20日のリリースには間に合わなさそうな印象ですが、実際はどうなるでしょうか。

Ubuntu 23.04 = GNOME 44

Ubuntu 23.04のGNOMEも、個々のパッケージを見ていくとGNOME 44になっていて、いい状態にアップデートされています。いつもの表を見てみましょう。

表1 主要GNOMEコンポーネントの各バージョン
バージョン コンポーネント(パッケージ名)
3.36.x gnome-menus
3.38.x gnome-mahjongg
3.41.x gcr
3.44.x zenity
3.48.x gnome-online-accounts, gnome-terminal
40.x gnome-mines
41.x adwaita-icon-theme
42.x gnome-bluetooth-3-common, gnome-keyring, yelp
43.x file-roller, gnome-logs, gnome-power-manager, seahorse, totem,
44.x baobab, cheese, deja-dup, eog, evince,  gdm3, gnome-calculator, gnome-calendar, gnome-characters, gnome-control-center, gnome-disk-utility, gnome-font-viewer, gnome-initial-setup, gnome-remote-desktop, gnome-session-bin, gnome-settings-daemon, gnome-shell, gnome-sudoku, gnome-system-monitor, gnome-text-editor, gnome-user-docs, mutter-common, nautilus, orca, simple-scan, ubuntu-session

file-roller(アーカイブマネージャー)がデフォルトのインストールから落とされるのではないかとか、gnome-terminal(端末)からコンソールに変更されるのではないかとか、いろいろな話があったものの、結局この23.04ではどちらも見送られています。

本格的なWireGuardサポート

GNOME 44のリリースノートを確認すると、⁠設定」関連の変更の多さに気づきます。筆者として注目したいのは、リリースノートではたった1行紹介されているだけですが、⁠設定」「ネットワーク」からWireGuardの設定ができるようになったことです。もちろんクイック設定メニューからほかのVPNと同じように接続や切断も可能となりました。

少し詳しく見ていきましょう。まずはWireGuardサーバーを用意します。本連載では第614回で紹介しました。またUbuntu Server Docsでも紹介されています。

「設定⁠⁠-⁠ネットワーク」「VPN」にある「+」をクリックしてください。すると設定するVPNの種類が選択できます図7⁠。もちろん「WireGuard」をクリックしてください。

図7 設定するVPNの選択
図7

設定項目は多岐に渡りますが、図8でおおむね掴めるでしょう。⁠Private Key」にはクライアントの秘密鍵を、⁠Peers」にある「Public key」にはサーバーの公開鍵を入れてください。これだけではダメで、⁠IPv4」タブで使用する固定IPアドレスを入力します図9⁠。IPv6を使用しない場合は、⁠IPv6」タブで「IPv6メソッド」「無効」にしてください。

図8 WireGuardの具体的な設定例
図8
図9 割り振るIPアドレスは別タブで設定する
図9

VPN接続や切断は、前述のとおりクイック設定から行います(図10⁠⁠。

図10 設定したWireGuardサーバーに簡単にアクセスできる
図10

新種フレーバー、Ubuntu CinnamonとEdubuntuの追加

この23.04からは、Ubuntu Cinnamon図11とEdubuntu図12がフレーバー(公式派生版)として追加されました。厳密に言うとEdubuntuは14.04 LTSまではリリースされており、9年ぶりに復活したこととなります。

図11 Ubuntu Cinnamonのデスクトップ。Cinnamonのバージョンは5.6.7
図11
図12 Edubuntuのデスクトップ。左端のドックに表示するアイコンを変更するツールも付属している
図12

Ubuntu Cinnamonに関してはRemix時代に紹介したことがありますが、今一度紹介してもいいのかもしれません。

Edubuntuはその名のとおり教育向けのフレーバーです。教育向けとはいえ幼児教育から大学まで幅広い年齢層で使われることを想定しています。そのためTex Liveがインストールされていたりします。

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