Ubuntu Weekly Recipe

第809回アートワークでUbuntuに貢献しよう! Ubuntu壁紙コンテストのご紹介

デスクトップの見栄えを決める壁紙

デスクトップカスタマイズの基本といえば、なんといっても壁紙でしょう。どうせ最終的には並べたウィンドウで見えなくなってしまうはずなのに、それでも好きな画像を常時表示できるというのは気分がいいものです。思い起こせば「壁紙」などという機能がなかったMS-DOS時代。画像ローダーで画像を表示した後、あえて画面をクリアせずにコマンドプロンプトに戻ることで、擬似的な壁紙を楽しんだ諸兄も多いのではないでしょうか[1]

Ubuntuでは、コードネーム名のマスコットをテーマにしたアートワークをはじめ、毎リリースごとに、異なる壁紙が同梱されています。

例えば24.40 LTSには、このような壁紙が含まれています。

図1 Ubuntu 24.04 LTSに標準でインストールされている壁紙のひとつ。マスコットであるNumbat(フクロアリクイ)のイラストが可愛い
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壁紙の設定方法

長年Ubuntuを使っている人には今更ではあると思いますが、ここで壁紙の設定方法をおさらいしておきましょう。Ubuntuではいくつかの設定方法があるため、自分にとって使いやすい方法で行うのがよいでしょう。

まず一番基本的な方法が、⁠設定⁠⁠→⁠外観」から行う方法です。デスクトップ右上にあるシステムメニューをクリックしてから、歯車のアイコンをクリックします。すると設定のウィンドウが表示されるので、⁠外観」をクリックしてください。登録された壁紙画像の一覧が表示されますので、お好みの画像を選択してください。なおデスクトップを右クリックして、コンテキストメニューから「背景を変更」を選択すると、この画面を一発で呼び出すことができます。WindowsやMacでも、壁紙の変更はデスクトップの右クリックから行えるため、これがもっとも直感的かもしれません。

デフォルトでは、システムにインストールされた壁紙の中からしか選べませんが、任意の画像を表示させることもできます。⁠外観」にある「Add Picture」をクリックすると、ファイル選択のダイアログが表示されますので、壁紙にした画像ファイルを選択してください。これでホームディレクトリ内にある個人的な画像ファイルを壁紙に指定できます。

図2 ⁠設定⁠⁠→⁠外観」で壁紙を選択できる。⁠Add Picture」では任意の画像を追加することも可能
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システムのメニュー側ではなく、画像ビューアー側から壁紙を設定することもできます。Ubuntu標準の画像ビューアーである「画像ビューアー(アプリ名、旧名EOG)」やFirefoxでは、表示した画像を右クリックすることで、その画像を壁紙に設定できます。⁠画像を見ていたら気に入ったものを見つけたので、その場で壁紙にしたくなった」というような場合は、この方法が便利でしょう。

図3 画像ビューアー(EOG)で画像を表示して、そこから壁紙に設定する例。大抵の画像表示系アプリは壁紙設定機能を持っており、右クリックから呼び出せることも多いので、試してみほしい
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またGNOMEでは、複数の壁紙を一定時間ごとに切り替える「スライドショー」機能が用意されています。これはどの画像をどのタイミングで表示するかをXMLファイルとして定義することで実装します。詳しくはドキュメントを参照してください。なおUbuntuではデフォルトでスライドショーの設定も同梱されており、隅に時計のマークがついているサムネイルを選択すると、リリースに含まれている複数の壁紙を、一定時間ごとに自動的に切り替えることができます。

図4 デフォルトの壁紙のうち、左下に時計のアイコンが表示されているものがスライドショーの設定になる
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Ubuntu壁紙コンテストとは

カーネルやアプリケーションと同じく、壁紙やアイコンのようなアートワークも、OSを構成する重要なリソースのひとつです。そして当然ですが、こうしたリソースも誰かが作成しています。Ubuntuへの貢献の方法は、コード書いたり、それをテストしたり、バグ報告したり、ドキュメントを書いたり、それを翻訳したりと色々ありますが、こうしたアートワークを作るという貢献もあるわけです。

Ubuntuコミュニティでは、リリースごとに「壁紙コンテスト」を行っています。これはコミュニティから、写真、イラスト、CGといったアートワークを募集し、Web上で人気投票を行うというものです。そして人気のあった上位作品は、デスクトップ版UbuntuのISOイメージに収録されます。

Ubuntu壁紙コンテストの歴史は古く、10.04 LTSの頃にはもう実施されていました[2]。当時はFlickrのUbuntu Artworkグループ内で実施されていたり、壁紙のサイズが1920x1680という指定であったりと、今から見るとなかなか時代を感じさせるレギュレーションですよね。それから開催の方式やレギュレーションを少しずつ変えながら、ここ数リリースではUbuntuのDiscourse上で行われています。

前述の通り、コンテストのレギュレーションは毎回微妙に更新されるのですが、24.04 LTSのレギュレーションは以下の通りでした。

  • 「マスコットテーマ」⁠デジタルおよび抽象画」⁠自然」⁠その他」の4つのカテゴリに分けて行う。
  • 各カテゴリごとに人気投票を行い、それぞれ上位2つの作品が採用される。
  • 自分が権利を持っている作品を投稿すること。
  • 作品はCC BY-SA 4.0もしくはCC BY 4.0のライセンスで公開すること。
  • 生成AIによる作品は禁止。
  • 画像サイズは3840x2160pxを満たすこと。
  • PNGやWebP形式が推奨。ただしJPEGでもOK。
  • 画像に透かし、名前、ロゴなどを入れないこと。
  • Discourseへの投稿はサーバー側で圧縮されるため、後日高画質な原版を提出できること。

今回のレギュレーション変更の目玉は、なんといってもカテゴリの新設でしょう。23.10まではカテゴリが存在せず、イラストもCGも自然写真も、すべてを一緒くたにして投票を行っていました。筆者は従来の方式には納得がいっていなかったため、これは非常に嬉しい変更でした。また明示的にAI生成作品の禁止がアナウンスされたのも、実に今風だなと感じますね。

24.04 LTSのコンテストは既に終了していますが、応募用のエントリや、投票のエントリを見ると、開催当時の雰囲気がよく伝わるのではないでしょうか。

使いやすい壁紙のガイドライン

レギュレーションに明示されているわけではありませんが、壁紙にも「使い勝手」というものが存在します。GNOMEのデザインガイドラインなども参考になるため、壁紙を作る前には目を通しておくとよいでしょう。これを踏まえた上で筆者は、以下のように考えています。

  • 紙のプリントと違って、コントラストは高いほうがディスプレイで見栄えがする。
  • 画像全体を構成する色はなるべく少なく、あまりゴチャゴチャしてないほうがいい。
  • デスクトップにアイコンを並べるような人のことを考えると、背景はすっきりしていたほうがいい。
  • 特に画面の左側と上側は、余白があるのが理想。
  • FHDサイズのイメージしかないと、4K環境では引き伸ばされて残念なことになるため、高解像度向けのデータを用意しよう。

単に綺麗な写真やイラストを用意するだけでなく、こうした部分まで気を配ると、よりよい壁紙が作れるでしょう。ただし多くの人たちは、壁紙としての使い勝手までは考えず、自分が好きな写真を選択します。そのため、こうした点にまで気を配ったからといって、人気投票で有利になるわけではないのが現実だったりはします。

図5 壁紙としての使い勝手まで考慮して撮影した写真の例。これは23.10の壁紙コンテストに応募したものの一枚で、自分では非常に気に入っているのだが、残念ながらあまり人気はなかった
図5

コンテストに勝つには

壁紙コンテストには、コミュニティのお祭りといった側面もあるので、自分の作品をみんなに見てもらうだけで満足という人もいるでしょう。ですがコンテストに参加する以上、やっぱり勝ち残って採用されたいと考えるのは自然なことです。

筆者は10年以上前から、コンテストにはたびたび応募していたのですが、当時は非常に低い評価しか得られませんでした。ですが最近では、23.04、23.10、24.04と3リリース連続で入賞していて、なんとなくウケる傾向がわかってきました。これは写真に限らず、どんなコンテストでもそうですが、勝ち残りたいのであれば、そのための戦略を考える必要があります。

これは「写真コンテスト」ではない

壁紙コンテストは、プロの写真家が審査する写真コンテストではありません。そのため必ずしも「上手い写真」⁠いい写真」が評価されるわけではなく、写真の完成度の方向で攻めても、見ている人たちにはあまり響きません。SNSでウケる写真がそうであるのと同じく、あくまで写真には詳しくない、Ubuntuユーザーが好きそうな被写体を選ぶのがコツです。

なお筆者の経験的に、動物の写真はあまりウケません[3]。全体的に、雄大な風景写真に人気が集まる傾向にあり、その中でも星空の写真は鉄板中の鉄板です。

見るのはおもに海外の人

SNSなどで写真をよく見る人にはお馴染みだと思いますが、日本人と外国人では色の好みがまったく異なります。日本ではどちらかと言えば、コントラストや彩度を上げた写真が好まれる傾向にあるのですが、海外では彩度は下げた上で色を乗せた、もう少しこってり気味の写真が好まれるようです。応募作も、自然風景などの作品を見ていると、全体的にそういう傾向を感じます。

失敗写真が壁紙に向くことも

壁紙のアスペクト比は、レギュレーションによって16:9と決められています。ここで問題になるのは、一般的な一眼カメラのセンサーのアスペクト比は3:2であるという点です。つまり撮影した写真から、上下を少し切らないといけないのです。写真は上手い人ほど、四隅まできっちりと構図を追い込んで撮影します。そのため上手く撮れた写真ほど、トリミングの余地がなくなってしまうのです。そうした写真を無理矢理壁紙サイズにすると、写真が破綻してしまうこともあります。

図6 Ubuntu 23.04の壁紙に採用された筆者の写真。上部をトリミングしているため、ベテルギウスが見切れてしまったのが気に入らない。だが地面側を切るわけにもいかず、泣いてオリオンを切るというわけです
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図7 こちらがトリミング前の原版(色調整前のデータのため、採用された壁紙と少し色が違うのはご愛嬌で)。原版ではオリオンの軌跡がすべてフレームに収まっていることや、アルデバランや火星も見えているのがわかっていただけるだろうか
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逆にちょっと構図を失敗した写真が、トリミングによって生き返ることも珍しくありません。壁紙サイズにすることを前提にアルバムを見返してみると、失敗作だと思っていた写真の中に、いい作品があるかもしれませんよ?

トリミングによって、ピクセル数が減ることを心配する方もいるかもしれません。ですが今時のカメラは、4000万や5000万画素が当たり前になってきています。いっぽう4K画像はたったの800万画素なので、ちょっとピクセル数が減ってしまっても、レギュレーションは問題なく満たせるはずです。

壁紙コンテストに参加してみよう

本連載読者の方の中には、写真が趣味の人や、ついうっかり高いレンズを買ってしまったガジェット好きの方も多いのではないかと思います。自慢のカメラで、次のコンテストに参加してみてはいかがでしょうか。またデジタルアートの部門もあるので、イラストや3DCGが得意な人も、ぜひ参加を検討してみてください。自分の作品がUbuntuに含まれ、世界中の人たちの目に触れるというのは、非常に名誉なことだと筆者は思っています。

コンテストはリリースの2ヶ月半くらい前に、Discourseで告知されます。一ヶ月くらいのエントリー期間があって、その後に投票が行われるというのが、いつもの流れとなっています。なおコンテストの開催は、大抵は本連載の姉妹連載であるUbuntu Weekly Topicsがニュースとして拾ってくれます。そのためDiscourseをチェックしてないよという人は、gihyo.jpを毎週見ておけばOKです。

ボツ画像パッケージを作ってみた

今回の記事の執筆に合わせて、コンテストに応募したけどウケなかった写真をもとに、自分オリジナルの壁紙パッケージを作ってみました。正確に言えば、10年ほど前に作成したパッケージを、全面的に刷新しました[4]。Ubuntu 24.04 LTSではPPAから以下のコマンドでインストールできますので[5]、よろしければ使ってみてください[6]。またこのパッケージは、今後も半年ごとに(気が向いたら)更新しようかと考えています。

$ sudo add-apt-repository ppa:mizuno-as/wallpapers
$ sudo apt update
$ sudo apt install -y mizuno-as-wallpapers

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