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第870回Microsoft Editをデフォルトのエディターにする

今回は、MicrosoftがリリースしているEditを、Ubuntuのデフォルトエディターにする方法を紹介します。

Microsoft Editとは

Microsoft Edit(以下Edit)は、Microsoftが開発しているオープンソースでマルチプラットフォームな、ターミナル用のエディターです図1⁠。開発に使われているプログラム言語はRustで、ライセンスはMITです。バイナリはWindows用とLinux用がリリースされており、macOSでもビルドは可能です。

図1 Microsoft Editを端末内で起動したところ

特徴はREADMEにあります。

The goal is to provide an accessible editor that even users largely unfamiliar with terminals can easily use.

ゴールは端末に慣れていないユーザーであっても理解しやすいエディターを提供するとのことで、換言すると特徴がないことを目指している、と解釈できます。VimやEmacsを例に挙げるまでもなく、またnanoであってもそこそこに個性的なので、前提知識がそれなりに必要です。

しかしEditであれば前提知識があまり必要なく、またWindowsで使用していれば同じものがUbuntuでも使用できるということで、初学者に優しいです。

2025年5月に最初のリリース(1.0)があり、現在も活発に開発が継続しています。バージョンアップも頻繁に行われているため、snapに適したアプリケーションでもあります。

今回はそんなEditをインストールして、デフォルトのエディターに変更する方法を紹介します。

Editのインストール

Edit前述のとおりオフィシャルバイナリがリリースされているのでこれを使用するのも手ですが、バージョンアップは手動で実行する必要があってわりと面倒です。というわけで、snapパッケージ版をインストールするのがお勧めです。

インストールはアプリセンターからでもいいですし図2⁠、端末からインストールするのであれば次のコマンドを実行してください。

$ sudo snap install msedit

パッケージ名と実行ファイル名が同じなのでわかりやすいです。

図2 アプリセンターでEditのページを表示したところ

Editの起動と使い方

前述のとおりEditは特徴がないことなので、あまり前提知識は必要ではありません。

起動する場合は、端末で次のコマンドを実行してください。

$ msedit

起動直後のスクリーンショットが図3です。

図3 起動直後のスクリーンショット

端末から起動した場合はマウスが使用できますので、⁠ファイル」などの文字をクリックするだけです。キーボードで操作する場合は、Altキー+アクセラレーターキーでそのメニューが開きます。アクセラレーターキーとは、例えば「ファイル(F)」だと「F」に該当するキーのことです。⁠ファイル」「F⁠⁠、⁠編集」「E⁠⁠、⁠表示」「V⁠⁠、⁠ヘルプ」「H」というのは一般的なアプリケーションと同じで、まさに特徴がありません。

少し珍しいのは、⁠表示」「ステータスバーにフォーカス」という項目があり図4⁠、マウスがなくても下に表示されているステータスバーにフォーカスを変更できます。これで文字コードや改行コード、インデントなどを変更できます。戻る場合はESCキーを押します。

図4 ステータスバーにフォーカス

デフォルトのエディターに変更する

Alternativesとは

なにかのテキストファイルを編集する際に、mseditに引数としてそのファイルを指定すればEditが使用できるので、それでよしとする、というのもありです。

しかしUbuntu(厳密にはそのアップストリームであるDebian)にはデフォルトのエディターという考え方があります。具体的には、次のコマンドを実行するとわかります。

$ editor

デフォルトではnanoが起動します。このeditorは具体的に何を指しているのかは次のコマンドでわかります。

$ ls -la /usr/bin/editor 
lrwxrwxrwx 1 root root 24  3月 31  2024 /usr/bin/editor -> /etc/alternatives/editor

なんと、nanoではありません。では/etc/alternatives/editorが何かは、次のコマンドでわかります。

$ ls -la /etc/alternatives/editor
lrwxrwxrwx 1 root root 9  8月 28  2024 /etc/alternatives/editor -> /bin/nano

ようやくnanoが出てきました。

これはAlternativesという仕組みを使用して実現しています。

実際にデフォルトのエディター(だけではありませんが)を変更するには、次のコマンドを実行します。

$ sudo update-alternatives --config editor
alternative editor (/usr/bin/editor を提供) には 3 個の選択肢があります。

  選択肢    パス             優先度  状態
------------------------------------------------------------
* 0            /bin/nano           40        自動モード
  1            /bin/ed            -100       手動モード
  2            /bin/nano           40        手動モード
  3            /usr/bin/vim.tiny   15        手動モード

現在の選択 [*] を保持するには <Enter>、さもなければ選択肢の番号のキーを押してください: 

ここから、Ubuntuには3つのエディターがインストールされており、それぞれ優先度が割り当てられていることがわかります。優先度が一番高いnanoがデフォルトになっており、優先度が-100のedは通常使用しないということを示しています。

ここにEditを加えてやると、デフォルトのエディターにできるというわけです。

Alternativesに登録

では、Alternativesの候補になるように登録します。次のコマンドを実行してください。

$ sudo update-alternatives --install /usr/bin/editor editor /snap/bin/msedit 70

優先度は70にしました。原則としてあらかじめインストールされているものは優先度が低め、あとからインストールするものは優先度が高めです。ましてや自分で登録するものなので、ほかにはないくらい高いくらいちょうどいいでしょう。

あらためて、選択しとして表示されたか確認してみます。

$ sudo update-alternatives --config editor
alternative editor (/usr/bin/editor を提供) には 4 個の選択肢があります。

  選択肢    パス             優先度  状態
------------------------------------------------------------
* 0            /snap/bin/msedit    70        自動モード
  1            /bin/ed            -100       手動モード
  2            /bin/nano           40        手動モード
  3            /snap/bin/msedit    70        手動モード
  4            /usr/bin/vim.tiny   15        手動モード

現在の選択 [*] を保持するには <Enter>、さもなければ選択肢の番号のキーを押してください: 

無事に追加され、デフォルトのエディターになりました。

デフォルトエディターの使いどころ

デフォルトエディターの使いどころは、実のところはあまり多くありません。前述の通りmseditの代わりにeditorコマンドで起動できますが、あまり使う機会はないでしょう。ほかにはsudoの設定ファイル(/etc/sudoers)を編集する専用コマンド、visudoで起動するエディターが変更されます。visudoを起動することはあまりないのですが(それが正しい使い方ではあるのですが⁠⁠、systemctl editコマンドでsystemctlで使用するunitファイルなどを編集する際にも、デフォルトのエディターは適用されます。こちらのほうが使用頻度が高いでしょう。

ページャーも変更する

テキストファイルの編集にはエディターを使用しますが、テキストファイルの閲覧にはページャーを使用します。

通常ページャーは閲覧専用の編集できない専用アプリケーションを使用します。Ubuntuのデフォルトはlessです。

しかしlessもわりと癖が強いアプリケーションで、Editのように前提知識なしで使用するのは難しいです。ページャーにもEditのようなアプリケーションがあればいいのですが、現状ないので、いっそEditをページャーとしても使用するのも一案です。

次のコマンドを実行してください。

$ sudo update-alternatives --install /usr/bin/pager pager /snap/bin/msedit 80

デフォルトになったか確認します。

$ sudo update-alternatives --config pager
alternative pager (/usr/bin/pager を提供) には 4 個の選択肢があります。

  選択肢    パス            優先度  状態
------------------------------------------------------------
* 0            /snap/bin/msedit   80        自動モード
  1            /bin/more          50        手動モード
  2            /snap/bin/msedit   80        手動モード
  3            /usr/bin/less      77        手動モード
  4            /usr/bin/lv        55        手動モード

現在の選択 [*] を保持するには <Enter>、さもなければ選択肢の番号のキーを押してください: 

やはりエディターをページャーとして使用するのは都合が悪いとなった場合は、次のコマンドで解消してください。

$ sudo update-alternatives --remove pager /snap/bin/msedit

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