Ubuntu Weekly Recipe

第899回Distroboxを使えば⁠他のディストリビューションの最新パッケージをUbuntuでも気軽に試せる

UbuntuにはDebian由来の豊富なパッケージ資産が存在します。しかしながら登場したばかりのソフトウェアがなかったり、最新のバージョンに追随できていないことも多々あります。そこで今回は、他のディストリビューションのパッケージを気軽に素早く試せるDistroboxを紹介しましょう。

Distroboxとは

Distroboxとは、コンテナを活用したさまざまなLinuxディストリビューションの実行環境を用意するツールです。端的に言うと、Linuxディストリビューションのルートファイルシステムの作成・管理に特化したDocker・Podmanのラッパーです。

Distroboxを使うと次のようなことを実現できます。

  • 特定のディストリビューションの特定のバージョンの環境を構築できる
  • コマンドひとつでその環境にログインし、操作できる
  • ホストのホームディレクトリがマウントされるため、コンテナ内外を意識する必要が少なくて済む
  • コマンドの中の特定のコマンドを、ホスト側から直接実行するラッパースクリプトを生成できる
  • コンテナ内のGUIアプリケーションも気軽に動かせる

これらはいずれも既存のコンテナ管理システムでも実現できていたことです。Distroboxの強みは機能を限定することで、それをよりシンプルで直感的に操作できるようにしたことでしょう。

たとえばホストのホームディレクトリがコンテナからそのまま見えることは、一般的なコンテナ管理システムでは利点・欠点どちらも存在します。しかしながらDistroboxは「コンテナの内外を意識せず、使えるようにする」ことを主な目的に据えることで、特定のユーザーに対する利便性を向上させているのです。

この「ゆるさ」により、たとえばUSBデバイスの利用や、GUIアプリケーションの起動も、特別な設定なしに実現できます。

ルートファイルシステムそのものは分離されるため、ホームディレクトリ以外の場所を汚すことはありません。よってcurl ... | sudo bashのような手順のインストールを必要としているツールも気軽にインストールできます。

UbuntuにおけるDistrobox

このDistroboxは、Ubuntuに対してどんな恩恵をもたらしてくれるのでしょうか。その際たる例が最新のソフトウェアを使えることです。

UbuntuはDebian由来の強力なパッケージ管理システムであるAptと、種類が多く、品質の高いパッケージリポジトリを備えています。この品質の高さはDebian Policy Manualによる厳格なルールと、パッケージメンテナーたちの日々の努力によって成り立っています。

同時にUbuntuでは、リリースされた安定版の品質を担保するために、⁠Ubuntuとしてリリースされたあとは、そのパッケージのバージョンをあげない」運用にしています。つまりあるパッケージ「Foo」が、Ubuntu 24.04 LTSにおいてバージョン「1.2.3」を採用した場合、24.04のメンテナンスが終了するまでは原則として「1.2.4以降」に更新することはないのです。もちろん不具合修正やセキュリティアップデートは行います。機能の追加に伴う更新が行われないというだけです[1]

このような運用になっているため、Ubuntuのリポジトリにあるソフトウェアのバージョンは「古く」なりがちです。また、より新しいソフトウェアがなかなか入ってこない傾向もあります。特に最近のソフトウェアはPythonやNode.js、Go、Rustなど独自のパッケージ管理システムと複雑な依存関係を持っていることが一般的です。そうするとあるソフトウェアAをUbuntuパッケージにしようと思うと、先にライブラリBをパッケージ化しなくてはいけなくて、ライブラリBは、ライブラリCに依存していてなんていう依存関係地獄に陥るのです[2]

そんな問題に対する解答のひとつがFlatpakやSnapといったユニバーサルパッケージングシステムです。ただ、これらはAptをはじめとするディストリビューションごとのパッケージよりこなれていないことも多く、求めるものがないこともありえます。

今回紹介するDistroboxは、もうひとつの解答となりうる存在です。つまりUbuntuに限らず、あるディストリビューションだとより新しいバージョンのパッケージが用意されているのに、という歯がゆさを解決できるツールなのです。

Distroboxのインストール

Distroboxは、Ubuntu 24.04 LTS以降であればリポジトリにパッケージがあります。24.04が1.7.0で、25.04以降は1.8.1以降になっています。今回はUbuntu 25.10上での手順を紹介しますが、24.04でも同じ手順ですし、紹介する機能も同じとなります。

なお、より古いバージョンのUbuntuであればcurlでインストールすることになるでしょう。

$ sudo apt install distrobox
$ distrobox --version
distrobox: 1.8.1.2
$ podman --version
podman version 5.4.2

これで準備完了です。ちなみにDebianパッケージ版のDistroboxはPodmanとDockerのいずれかをバックエンドとして利用できます。どちらもインストールされていなければ上記のようにPodmanがインストールされます。もしDockerがインストール済みであれば、PodmanはインストールせずにDockerを使います。両方ともインストールされている場合は、Podmanを使います。また、環境変数DBX_CONTAINER_MANAGERを設定すればコンテナ管理システムを切り替え可能です[3]

実際にコンテナを作ってみましょう。ここではubuntu:26.04resoluteという名前で作成した例です。

$ distrobox create --name resolute --image ubuntu:26.04
Image ubuntu:26.04 not found.
Do you want to pull the image now? [Y/n]:
Resolved "ubuntu" as an alias (/etc/containers/registries.conf.d/shortnames.conf)
Trying to pull docker.io/library/ubuntu:26.04...
Getting image source signatures
Copying blob f784408d7713 done   |
Copying config d92a6abc12 done   |
Writing manifest to image destination
d92a6abc129dcf0ad899cc339da85b29a76fc8cec85cf343e20c446a8c69c9d7
Creating 'resolute' using image ubuntu:26.04     [ OK ]
Distrobox 'resolute' successfully created.
To enter, run:

distrobox enter resolute

作成したコンテナは次の方法で確認できます。

$ distrobox list
ID           | NAME                 | STATUS             | IMAGE
ff3721bac84c | resolute             | Created            | docker.io/library/ubuntu:26.04

ここからもわかるとおり、UbuntuのコンテナはDockerで提供されるイメージが使われているようです。今回はバックエンドがPodmanであるため、Podmanコマンドでもイメージの存在を確認できます。

$ podman images
REPOSITORY                TAG         IMAGE ID      CREATED      SIZE
docker.io/library/ubuntu  26.04       d92a6abc129d  4 weeks ago  182 MB

ちなみにイメージの保存先は~/.local/share/containers/storage/以下です。つまりコンテナを作れば作るほどホームディレクトリの容量を使うので注意してください。

それではコンテナの中に入ってみます。

$ distrobox enter resolute
Starting container...                            [ OK ]
Installing basic packages...                     [ OK ]
Setting up devpts mounts...                      [ OK ]
Setting up read-only mounts...                   [ OK ]
Setting up read-write mounts...                  [ OK ]
Setting up host's sockets integration...         [ OK ]
Integrating host's themes, icons, fonts...       [ OK ]
Setting up distrobox profile...                  [ OK ]
Setting up sudo...                               [ OK ]
Setting up user groups...                        [ OK ]
Setting up user's group list...                  [ OK ]
Setting up existing user...                      [ OK ]
Ensuring user's access...                        [ OK ]

Container Setup Complete!
bash: /usr/share/byobu/profiles/bashrc: No such file or directory
$

実はここでかなり時間がかかります。先ほど「create」した時点ではベースイメージのダウンロードだけを行っています。初回の「enter」ではじめてコンテナ環境に必要なツール類(bashなど)をダウンロード・インストールし、セットアップするためです。一度セットアップすれば、次回以降はすぐに起動できます。

最後にNo such file or directoryと出ています。これは「enter」を実行したのが、Byobuの環境だからです[4]⁠ホームディレクトリがホストと共有されている」ために、bash実行時に~/.bashrcが読み込まれるものの、コンテナの中にはbyobuがインストールされていないためにこのようなエラーが出ます。このあたりはホームディレクトリを共有する弊害になりますね。

dbox$ cat /etc/os-release
PRETTY_NAME="Ubuntu Resolute Raccoon (development branch)"
NAME="Ubuntu"
VERSION_ID="26.04"
VERSION="26.04 (Resolute Raccoon)"
VERSION_CODENAME=resolute
ID=ubuntu
ID_LIKE=debian
HOME_URL="https://www.ubuntu.com/"
SUPPORT_URL="https://help.ubuntu.com/"
BUG_REPORT_URL="https://bugs.launchpad.net/ubuntu/"
PRIVACY_POLICY_URL="https://www.ubuntu.com/legal/terms-and-policies/privacy-policy"
UBUNTU_CODENAME=resolute
LOGO=ubuntu-logo

このように、Distrobox内部はUbuntu 26.04 LTSになっていることがわかります。ちなみにここから先はわかりやすいように、ホストで実行するときはhost$⁠、Distrobox内部で実行するときはdbox$と表記することにします。

デスクトップファイルについて

Distrobxで「create」すると、自動的にデスクトップファイルが作られます。

host$ cat ~/.local/share/applications/resolute.desktop
[Desktop Entry]
Name=Resolute
GenericName=Terminal entering Resolute
Comment=Terminal entering Resolute
Categories=Distrobox;System;Utility
Exec=/usr/bin/distrobox enter  resolute
Icon=/home/shibata/.local/share/icons/distrobox/ubuntu.png
Keywords=distrobox;
NoDisplay=false
Terminal=true
TryExec=/usr/bin/distrobox
Type=Application
Actions=Remove;

[Desktop Action Remove]
Name=Remove Resolute from system
Exec=/usr/bin/distrobox rm  resolute

これは何かと言うと、GNOME ShellのDashに登録したり、アプリケーション一覧からコンテナを起動するためのエントリーです。たとえば「Super + A」を押して、コンテナの名前を入力すれば、先ほど作成したコンテナが登場します。それをクリックすると、標準のターミナルの中でdistrobx enter resoluteが実行されるのです。

アプリケーション一覧でresoluteを検索した例。サポートしているディストリビューションであればアイコンをきちんと表示してくれる。右下にあるDistroboxのアイコンが、ぎゅっと目を閉じた顔文字っぽくてかわいい

ホームディレクトリについて

何度か紹介しているように、Distroboxはホームディレクトリをそのままコンテナの中から見えるようになっています。実際に確認してみましょう。

dbox$ findmnt ~
TARGET        SOURCE                                           FSTYPE OPTIONS
/home/shibata /dev/mapper/ubuntu--vg-ubuntu--lv[/home/shibata] ext4   rw,relatime

host$ podman inspect resolute | jq '.[0].Mounts'
(中略)
  {
    "Type": "bind",
    "Source": "/home/shibata",
    "Destination": "/home/shibata",
    "Driver": "",
    "Mode": "",
    "Options": [
      "rbind"
    ],
    "RW": true,
    "Propagation": "rslave"
  },
(後略)

Podmanを使う場合、Podmanの名前空間でマウントするため、ホスト上のmountコマンド等では表示されません。

もしホームディレクトリをマウントされるのが困るユースケースの場合は、⁠create」時に--home 任意のディレクトリを指定してください。

指定できるイメージ名について

resoluteを作成する際に、createコマンドに--image ubuntu:26.04を指定しました。このイメージ名とその実態/etc/containers/registries.conf.d/shortnames.confで定義された情報から決定されます。

host$ grep ubuntu /etc/containers/registries.conf.d/shortnames.conf
  "ubuntu" = "docker.io/library/ubuntu"

ここに書いてあるのは短い名前と、レジストリ名の対応表です。言い方を変えると、レジストリ名をきちんと書けば、任意のレジストリの任意のイメージを利用できます。

host$ distrobox create --name 名前 --image レジストリアドレス/イメージ名:タグ

もし認証が必要なら、使用しているバックエンドに合わせてpodman login レジストリアドレスなどを実行しておきましょう。

ArchのCLIアプリケーションを動かしてみる

基本的な使い方を覚えたところで、少し応用してみましょう。最新パッケージの豊富さと言えばやはりArch Linuxは外せません。そこでArch Linuxのコンテナを作り、そこにCLIのテキストエディタであるHelixをインストールしてみます。

まずはArch Linuxのコンテナを作ります。ここで--yesを指定すると、コンテナイメージダウンロード時の問い合わせをスキップできます。

host$ distrobox create --yes --name arch --image archlinux:latest
Resolved "archlinux" as an alias (/etc/containers/registries.conf.d/shortnames.conf)
Trying to pull docker.io/library/archlinux:latest...
Getting image source signatures
Copying blob 51b3e517c730 done   |
Copying blob 3073b417e59b done   |
Copying config 0db2337dce done   |
Writing manifest to image destination
0db2337dce953d567245583cfe3a1e55714f97b2f269602d9b452f6e7641341b
Creating 'arch' using image archlinux:latest     [ OK ]
Distrobox 'arch' successfully created.
To enter, run:

distrobox enter arch

次に「enter」で初回セットアップを行います。

host$ distrobox enter arch
Starting container...                            [ OK ]
Installing basic packages...                     [ OK ]
Setting up devpts mounts...                      [ OK ]
Setting up read-only mounts...                   [ OK ]
Setting up read-write mounts...                  [ OK ]
Setting up host's sockets integration...         [ OK ]
Integrating host's themes, icons, fonts...       [ OK ]
Setting up distrobox profile...                  [ OK ]
Setting up sudo...                               [ OK ]
Setting up user's group list...                  [ OK ]
Setting up existing user...                      [ OK ]
Ensuring user's access...                        [ OK ]

Container Setup Complete!
bash: /usr/share/byobu/profiles/bashrc: そのようなファイルやディレクトリはありません

無事にArch Linuxの環境を構築できました。

dbox$ cat /etc/os-release
NAME="Arch Linux"
PRETTY_NAME="Arch Linux"
ID=arch
BUILD_ID=rolling
VERSION_ID=20260201.0.486523
ANSI_COLOR="38;2;23;147;209"
HOME_URL="https://archlinux.org/"
DOCUMENTATION_URL="https://wiki.archlinux.org/"
SUPPORT_URL="https://bbs.archlinux.org/"
BUG_REPORT_URL="https://gitlab.archlinux.org/groups/archlinux/-/issues"
PRIVACY_POLICY_URL="https://terms.archlinux.org/docs/privacy-policy/"
LOGO=archlinux-logo

さて、ここからはArch Linuxの使い方の話です。Ubuntuで言うところのaptコマンドに相当するのが、⁠pacman」です。たとえばsudo apt updateapt search helixapt show helixに相当するコマンドはそれぞれ次のようになります。

dbox$ sudo pacman -Syy
:: Synchronizing package databases...
 core                             120.0 KiB   375 KiB/s 00:00 [##################################] 100%
 extra                              7.8 MiB  13.7 MiB/s 00:01 [##################################] 100%

dbox$ pacman -Ss helix
extra/helix 25.07.1-1
    A post-modern modal text editor

dbox$ pacman -Si helix
Repository      : extra
Name            : helix
Version         : 25.07.1-1
Description     : A post-modern modal text editor
(後略)

では、Helixをインストールしましょう。

dbox$ sudo pacman -S helix
resolving dependencies...
looking for conflicting packages...

Package (2)               New Version  Net Change  Download Size

extra/hicolor-icon-theme  0.18-1         0.05 MiB       0.01 MiB
extra/helix               25.07.1-1    207.92 MiB      18.56 MiB

Total Download Size:    18.57 MiB
Total Installed Size:  207.97 MiB

:: Proceed with installation? [Y/n]
(中略)
(1/3) Arming ConditionNeedsUpdate...
(2/3) Distrobox hook /etc/distrobox-post-hook.sh...
(3/3) Distrobox hook /usr/share/libalpm/scripts/distrobox_post_hook.sh...

dbox$ helix --version
helix 25.07.1

無事にインストールできました。

HelixはVim・NeovimライクなRust製のテキストエディタです。高速かつ多機能なCLIテキストエディタとして人気を得ています。ただしあくまで「ライク」であって、選択操作など操作性やキーバインドが大きく異なる部分もあります。

コマンドモードに入ると、コマンド名や説明を表示してくれる。よく覚えていないコマンドを使う際に助かる

コンテナの中のコマンドをホストから使えるようにする

さて、Helixが使えるようになったわけですが、毎回distrobox enterするのは面倒です。そこでこのHelixをホストから呼び出せるラッパースクリプトを作ってしまいましょう。実はこれは、すでにDistroboxに備わっています。

コンテナの中でdistrobox-exportを実行するだけです。

host$ distrobox enter arch
dbox$ distrobox-export --bin /usr/bin/helix
/usr/bin/helix from arch exported successfully in /home/shibata/.local/bin.
OK!

上記のログにあるように~/.local/bin/以下に「`--bin``」で指定したコマンドを実行するスクリプトがインストールされます。

host$ file ~/.local/bin/helix
/home/shibata/.local/bin/helix: POSIX shell script, ASCII text executable

host$ cat ~/.local/bin/helix
#!/bin/sh
# distrobox_binary
# name: arch
if [ -z "${CONTAINER_ID}" ]; then
        exec "/usr/bin/distrobox-enter"  -n arch  --  '/usr/bin/helix'  "$@"
elif [ -n "${CONTAINER_ID}" ] && [ "${CONTAINER_ID}" != "arch" ]; then
        exec distrobox-host-exec '/home/shibata/.local/bin/helix' "$@"
else
        exec '/usr/bin/helix' "$@"
fi

スクリプトを見ればわかるように、これは単にdistrobox enterを実行して当該ファイルを実行しているだけです。ちなみに環境変数CONTAINER_IDは自分が今distroboxの中にいるのか、外にいるのかを判断するために使われています。

~/.local/bin/にいるバイナリはそのままだと、実行バイナリの検索対象とはなりません(つまり環境変数PATHに入っていません⁠⁠。ただ、Ubuntuでは、⁠ログイン時」~/.local/bin/が存在するとPATHへとそのディレクトリを追加します。よって初めて~/.local/bin/が作られた状態なら、一度ログアウトしてログインしなおしておきましょう。echo $PATHを実行して~/.local/bin/が存在すれば大丈夫です。

host$ helix --version
helix 25.07.1

これでUbuntuからもHelixを使えるようになりました。なお、distrobox-export --bin /usr/bin/helix --deleteを実行すると、このホスト上のファイルを削除してくれます。

ちなみに--bin 実行ファイルパスの代わりに--app アプリケーション名を使うと、指定したアプリケーション名に一致するdesktopファイルをホストに作成します。GUIアプリケーションをコンテナの外から使いたい場合に便利です。ただしGUIアプリケーションは、ホームディレクトリを共用すると意図しない動作になる可能性があります。そこで次項では、GUIアプリケーションを使う例を紹介します。

FedoraのGUIアプリケーションを動かしてみる

Dropboxの強みは、コンテナの中のGUIアプリケーションもホストから動かせることです。Snapのように権限管理が厳格ではないため、大抵のものがそのまま動いてくれます。

たとえばGNOMEの開発版のアプリケーションを動かす例を考えてみましょう。今ならFlatpakやGNOME OS Nightylyを使うという手もありますが、FedoraのRawhideを使うのもまた昔ながらの定番でした。

そこでRawhideのイメージを作って、GNOME Text Editorをインストールしてみます。

host$ distrobox create --name rawhide --image fedora:rawhide
Image fedora:rawhide not found.
Do you want to pull the image now? [Y/n]:
Resolved "fedora" as an alias (/etc/containers/registries.conf.d/shortnames.conf)
Trying to pull registry.fedoraproject.org/fedora:rawhide...
Getting image source signatures
Copying blob 4a4db5b599c2 done   |
Copying config 7e6677824c done   |
Writing manifest to image destination
7e6677824c77539efc31997c30ad2a4fe7bcf5bd5c9fb4e9d934d97d410174ed
Creating 'rawhide' using image fedora:rawhide    [ OK ]
Distrobox 'rawhide' successfully created.
To enter, run:

distrobox enter rawhide

ここはこれまでと同じ手順です。ただ、Fedoraのregistryはそこまで速くないのか、若干時間がかかります。

次にコンテナの中に入るわけですが、ここでひとつポイントです。Linuxのアプリケーションは伝統的にホームディレクトリ以下のドットファイルに各種設定や状態を保存します。独立したソフトウェアなら設定ファイルも独立しているために、気にしなくても問題ありません。しかしながらGNOMEアプリケーションはgsettingsといった設定フレームワークによって、統一的に設定を保存・管理しています。さらにホストとコンテナで異なるバージョンのソフトウェアを使う場合も、設定に不整合を起こす可能性が存在します。

そこでドットファイルのうち、GUIアプリケーションが使いそうなディレクトリは別扱いにしてしまいましょう。あらかじめホスト上で、設定ファイルようのディレクトリを作っておくことにします。

host$ mkdir -p ~/.distrobox-xdg/rawhide/{config,cache,share}

準備ができたらコンテナの中に入ります。

host$ distrobox enter rawhide
Starting container...                            [ OK ]
Installing basic packages...                     [ OK ]
Setting up devpts mounts...                      [ OK ]
Setting up read-only mounts...                   [ OK ]
Setting up read-write mounts...                  [ OK ]
Setting up host's sockets integration...         [ OK ]
Integrating host's themes, icons, fonts...       [ OK ]
Setting up distrobox profile...                  [ OK ]
Setting up sudo...                               [ OK ]
Setting up user's group list...                  [ OK ]
Setting up existing user...                      [ OK ]
Ensuring user's access...
 Warning: There was a problem setting up the user, trying manual addition [ OK ]

Container Setup Complete!
bash: /usr/share/byobu/profiles/bashrc: そのようなファイルやディレクトリはありません

先ほど作成したディレクトリ群をGUIアプリケーションが参照できるように、環境変数を設定しましょう。

dbox$ export XDG_CONFIG_HOME=$HOME/.distrobox-xdg/rawhide/config
dbox$ export XDG_CACHE_HOME=$HOME/.distrobox-xdg/rawhide/cache
dbox$ export XDG_DATA_HOME=$HOME/.distrobox-xdg/rawhide/share

次にFedora上でGNOME Text Editorをインストールします。

dbox$ dnf info gnome-text-editor
リポジトリの更新を読み込み中:
リポジトリを読み込みました。
利用可能なパッケージ
Name           : gnome-text-editor
Epoch          : 0
Version        : 49.0

dbox$ sudo dnf install gnome-text-editor
(snip)
Transaction Summary:
 Installing:       248 packages

パッケージサイズ 131 MiB 、ダウンロードサイズ 131 MiB 。
完了後、467 MiB のサイズが利用されます(インストール 467 MiB、削除 0 B)。
Is this ok [y/N]: y
(snip)
完了しました!

これで準備完了です。2月半ば時点でのFedora RawhideのGNOME Text Editorは開発版の49.0でした[5]

実際にコンテナの中でGNOME Text Editorを起動してみましょう。

dbox$ gnome-text-editor
もちろん日本語入力・表示も可能

先ほど作成したディレクトリを見ると、いろいろなファイルが作られていることもわかります。

dbox$ ls -ltr ~/.distrobox-xdg/rawhide/{config,cache,share}
/home/shibata/.distrobox-xdg/rawhide/config:
total 0

/home/shibata/.distrobox-xdg/rawhide/share:
total 4
drwxr-x--- 3 shibata shibata 4096 Feb  9 00:21 org.gnome.TextEditor

/home/shibata/.distrobox-xdg/rawhide/cache:
total 16
drwxr-xr-x  4 shibata shibata 4096 Feb  9 00:17 libdnf5
drwx------ 52 shibata shibata 4096 Feb  9 00:20 radv_builtin_shaders
drwx------ 36 shibata shibata 4096 Feb  9 00:21 mesa_shader_cache
drwxr-xr-x  3 shibata shibata 4096 Feb  9 00:21 gtk-4.0

ここで通常はdistrobox-export --app gnome-text-editorとしたいところです。しかしながらこの方法ではホームディレクトリを分離するのが非常に手間がかかります。そこで今回はホスト側でランチャースクリプトを作って、デスクトップファイルからはそれを呼び出すことにしましょう。

ランチャースクリプトを次のように作成し、実行権限を付与します。

host$ cat << 'EOF' > ~/.local/bin/gnome-text-editor-rawhide
#!/bin/sh
exec distrobox enter rawhide -- \
  env \
    XDG_CONFIG_HOME="$HOME/.distrobox-xdg/rawhide/config" \
    XDG_CACHE_HOME="$HOME/.distrobox-xdg/rawhide/cache" \
    XDG_DATA_HOME="$HOME/.distrobox-xdg/rawhide/share" \
    gnome-text-editor "$@"
EOF

host$ chmod +x ~/.local/bin/gnome-text-editor-rawhide

さらにそれを呼び出すデスクトップファイルを作成しましょう。

host$ cat << EOF > ~/.local/share/applications/gnome-text-editor-rawhide.desktop
[Desktop Entry]
Categories=GNOME;GTK;Utility;TextEditor;
Name=Rawhide Text Editor
Exec=/home/shibata/.local/bin/gnome-text-editor-rawhide
Icon=org.gnome.TextEditor
StartupNotify=true
Terminal=false
Type=Application
Actions=new-window;
EOF

これで「rawhide」で検索すれば、⁠Rawhide Text Editor」が表示されます[6]

名前を変えることでUbuntuのGNOME Text Editorと区別できる

このようにDistroboxはかんたんに他のディストリビューションのCLI/GUIツールをUbuntu上で動かせます。不具合調査で比較対象が欲しいとき、デバッグ用に最新版を使いたいときなど、その用途は様々です。さらに他にも便利な仕組み・オプションがありますので、自分に合った使い方を探してみてください。

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