今現在のインターネットは、ビデオが溢れ始めています。みんなでYouTubeやニコニコ動画を見ているように思えますし、Ustreamによる配信も増えてきました。一昔前までは、インターネットビデオと言えば非常に手間とお金がかかるものでした。インターネット上で多数のユーザに対して十分な品質のビデオを配信するには、結構お金がかかりました。
しかし、無料でビデオ配信を個人がバンバンできるYouTubeが登場したことで状況が一変しました。YouTubeは急激に成長し、いまや、個人だけではなく、政治家、芸能人、歌手、大手コンテンツホルダやテレビ局などもYouTubeに公式チャンネルを開設するようになりました。
このように、インターネットビデオは大流行しています。そして、この流行によってビデオトラフィックがインターネット上で激増しています。
2010年のビデオトラフィックは約40%
前々回に紹介したCisco SystemsによるCisco Visual Networking Indexが、その後更新されています。最新の「Cisco Visual Networking Index:Forecast and Methodology, 2010-2015」では、2015年までのインターネットトラフィック総量は毎年約32%ずつ増加し、2010年の約8倍になると推測しています。
このように増え続けるインターネットトラフィック総量ですが、その中で急激に増加しているのがビデオトラフィックです。2011年のP2Pを含まないビデオトラフィックは、全体の約40%であり、2015年の終わりには62%に達するそうです。
去年と今年だけを見てもビデオトラフィックが増えているのがわかります。さらに、ビデオトラフィックのパーセンテージだけではなく、トラフィック全体の総量も増えているので、実際には単純に1/3から4割弱になったというだけではありません。インターネットテレビ、VoD、そしてP2Pの中身も主にビデオトラフィックであると仮定したときの合計ビデオトラフィックは、2015年にはインターネットトラフィック全体の90%になるとホワイトペーパーでは推測しています。
このように、かつてない勢いでビデオトラフィックが急激にインターネットトラフィックを占有しはじめています。
インターネットただ乗り論
このような状況下で登場するのが、いわゆる「インターネットただ乗り論」です。
ISPにとっては、トラフィックが増えれば増えるほど電気代が上昇しますし、環境によっては上位ISPへ支払うピアリング料金が上昇します。また、新しい高性能通信機器への増強が求められるのだろうと思います。
そのようなISP的な視点で見ると、コンテンツ事業者がインターネット上に流すビデオコンテンツは、ISPに直接利益をもたらすわけでもないのに、設備投資だけを要求するという存在に見えそうです。ISPにとっては、ビデオトラフィックが増えてもユーザ数が増えるわけでも、ユーザから得られる収入が増えるわけでもなく、全く関係ない海の向こうのコンテンツ事業者よって設備増強を求められ、運営経費が増大するという状況です。
現時点で主流である固定料金のインターネット接続は、「ユーザができるだけ使わないこと」が利益につながるという、ある側面から見ると、いびつな構造となっています。この矛盾は「インターネットただ乗り論」として結構前から議論されています。 インターネットビデオの激増は、このインターネットただ乗り論に関しての議論を活発化させそうです(インターネットただ乗り論に関しては別の機会に書くかも知れません)。
最後に
このように、ここ数年はインターネットビデオが大流行しています。恐らく、このトレンドは今後数年続くだろうと思われます。今後もインターネットビデオは大きな意味を持つでしょうが、インターネットそのものもビデオの「重み」によって変化するのではないかと推測しています。
次回は、多少毛色を変えてセキュリティ系のホワイトペーパーを紹介したいと思います。