2011年4月21日に日本で児童ポルノに対するブロッキングが開始されました。全てのISPで行われているわけではなく、各ISPによる自主的な取り組みとして行われています。
今回から数回にわけて、日本におけるブロッキングが開始されるまでの経緯等を紹介していきます。多少話がゴチャゴチャしてしまっていますが、これからの日本のインターネットを構成する要素の一つになっているので解説しようと思います。
フィルタリングとブロッキングの違い
この話題では、フィルタリングとブロッキングの違いを理解することが重要です。
フィルタリングもブロッキングも両方とも特定のコンテンツが見られなくなる仕組みです。しかし、その2つは、似ているようで全く違うものです。
フィルタリングは、ユーザの同意を得たうえで一定のサイトやURLに対するアクセスを遮断するものです。フィルタリングを行いたいと判断したユーザがフィルタリングサービスを利用するという形です。初期設定がフィルタリングを有効にしてあるのか、それともフィルタリングを利用したいと思うユーザが申し込むのかで利用者数等は大きく変わりはしますが、「ユーザが選択可能」という点が大きな特徴と言えます。
一方、ブロッキングは、ユーザ側の同意を得ずに一定のサイトやURLに対するアクセスを強制的に遮断します。ユーザが見たいと望んだとしても、その設定を変更できないのがブロッキングです。
このように、ユーザ側の同意を得ているものをフィルタリング、得ずに強制的に行うものがブロッキングと呼ばれています。
ISPによるブロッキングへの流れ
日本におけるブロッキングは、突然湧いて出た話ではありません。インターネットインフラを扱う業界内では2010年に入ってから大きく話題になっていますが、流れとしてはそれ以前から続いています。
ブロッキングやフィルタリングの話題の中心は基本的にWebです。議論の大まかな流れとしては、携帯電話フィルタリングから始まり、PCを含むインターネットへのフィルタリング及びブロッキングへと向かっています。
携帯電話フィルタリング(2005~2007)
2005年6月に、政府の「IT安心会議」が「インターネットにおける違法・有害情報対策について(PDF)」を公表しました。そこでは、集団自殺志願者募集サイトなどの違法・有害情報を念頭に、フィルタリングソフトの普及啓蒙、フィルタリング技術の開発、プロバイダ等による自主規制の支援に関して述べられています。
2006年9月に警察庁の「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」が「携帯電話がもたらす弊害から子どもを守るために-これまでの審議から-(PDF)」を公表しました。そこでは、携帯電話による子どもへの弊害が述べられています。それらの弊害に対処するために、携帯電話でのフィルタリングが重要であるとしています。
2006年11月に総務大臣から携帯電話事業者3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル)および業界団体である電気通信事業者協会に対して、未成年者が使用する携帯電話におけるフィルタリングサービスの普及促進に向けた自主的取組を強化するように要請しました。同日、総務省からの要請を受けた事業者3社と電気通信事業者協会は、フィルタリングサービスのさらなる普及促進を表明しました。
2007年12月に総務大臣が、携帯電話・PHS事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、ウィルコム)と電気通信事業者協会に対して、フィルタリングサービス導入促進のために、18歳未満の既存契約者に対するフィルタリングの原則化と、不使用の場合には親権者の意思確認を行うことを要請しました。要請を受けた携帯電話事業者各社と電気通信事業者協会は、同日付で大臣要請を実施する発表が行われました。
このような流れで、18歳未満に対する携帯電話でのフィルタリングサービスが原則化されました。
次回に続く
次回は、議論が携帯電話からインターネットへと推移した経緯を紹介します。