今回の「明後日のコンピューティングを知ろう」では、計算機とデータ処理の「今とこれから」についてみていきましょう。私たちが生活する空間を計算機で取り扱うには、センサーやカメラ、受信機などを通して得られたデータが必要になります。それらには、人の目で見るよりも多くの情報が含まれており、普段気づくことができない有効な情報を発見することも可能です(図1)。
しかしデータを社会生活で有効活用する場合、さまざまな「ルールの壁」が存在しています。プライバシー権の取り扱いにより、カメラから得られたデータをインターネットで共有することが問題となるケースもありますし、野放図に電波受信してデータを解析・共有することが、電波法の取り扱いによっては懸念される場合もあります。たとえば、航空機の位置情報を無線のADS-Bから取得公開しているFlight radar24や、船舶の位置情報を無線のAISから取得公開しているMarineTrafficなどは、そのサービスが、各国の電波法上、未整理なグレー状態のままの場合もあります。技術的には可能なことでも、国によっては、類似サービスを自国で組成することが難しいケースもあるのです。しかし、新しい技術によって「今まで見えていなかったモノが見えるようになる」ことは、社会をより豊かにする意味で大きなインパクトを持っています。たとえば、普段見ることができなかった水中の様子を、三次元かつリアルタイムに見ることができれば、そこから新たな発見や発明のチャンスが生まれます(図2)。
陸上のカメラやセンサーを用いたデータ解析手法と同じく、水中のデータ特性に合わせた解析手法が今後も日々改善されていくことでしょうが、それらをひとつひとつ「当たり前」に変えていく研究開発が今後も継続されていくことを筆者は願っています。計算機が取り扱うデータは場合により「豊かさの源泉」であったり「忌避すべき脅威」であったりとさまざまですが、最新技術の変化に継続的に注目していきたいと思います。