今回は将来的に普及する可能性が高いため、研究者や開発者から注目が集まっているPCI Express 5.0(PCIe 5.0)について紹介していきましょう。PCIe 5.0はデスクトップPCに搭載のものとしてすでにリリースされています(このPCには最新技術が実装されたDDR5メモリが搭載済み)。
コンピュータアーキテクチャの進化の歴史を紐解くと、その中でデバイス間接続を行うバスとメモリは、相互に影響を及ぼしながらその性能向上と成熟を繰り返しています。使用されるアプリケーションの特性にもよりますが、ソフトウェア側のコードをまったく変更することなく、新しいアーキテクチャのPCが性能向上を果たす事例は現在も続いています(図1)。
一見するとメモリとCPUさえ処理が高速になっていけば、そのデータ処理が高速化していくようにも思えます。しかしデータを処理・蓄積するデバイスまでのバス幅が細いままでは、それが大きなボトルネックとなってしまいます。
PCI Express規格は前のリビジョンである4.0から加えて、さらに新しい機能が備わっていく予定です。その中でCXL(Compute Express Link)と呼ばれる技術は、PCIe 5.0バス上に、外部デバイス上のキャッシュやメモリ・特殊処理ユニットを共有アクセス可能とする機能を有しています。今後はクラウド・コンピューティング上の仮想ネットワーク処理や暗号化処理の一部をIPU(Infrastructure Processing Unit)と呼ばれるネットワークカード(NIC)に相当するデバイスにオフロードする開発ロードマップが示されるなど、コンピュータアーキテクチャ上の転換点を迎えつつあります(図2)。
クラウドコンピューティングを利用する側からのユーザー視点としては、それらを認識することはないのかもしれませんが、データセンターで稼働するサーバの内側では、さまざまな技術革新と進化によって、私たちが日常で使っているクラウド環境がより豊かになっています。当研究所では、引き続き「ハードウェアとソフトウェアの進化」の最新動向について、継続的に注目していきます。