今回は、本格的な普及が始まっている5Gモバイル通信網の今とこれからを解説します。私たちにとって携帯電話は身近でごく当然なものになりました。通信網としてその歴史を振り返ると、2Gサービスが1993年に開始され、3Gが2001年、4G/LTEが2010年、そして2020年に5Gの商用サービスが始まりました。移動通信システムの歴史としては、自動車電話サービスが日本で最初に開始されたのが1979年ですから、実に40年以上の歴史になります。総務省の資料によれば2020年9月時点で、携帯電話1契約あたりの月間通信量は、上り905MB、下り6,786MBまで増加しています[1]。
しかし、現在整備が進められている5Gサービスは設備的には途上段階にあり、ほとんどの場合4G/LTEに設備を相乗りする形となっています(図1)。
このためすべてのサービスエリアで、広帯域・低遅延の5Gサービスをユーザーが享受することはできていません。現時点で観測可能な5Gサービスエリアを図示すると図2のようになります。
これはあくまで一例ですが、2021年1月から12月までに高速道路上から5Gエリアを観測すると虫食い状態になりました。しかし、ここから通信可能エリアの広がりが見えてきます。2026年までに世界的な5G人口カバー率は60%を目指していると言われていますが、日本国内の通信設備の増強も急ピッチで進んでいるようです。現在でも4G/LTEサービスで十分に機能しているモバイル通信網ですが、近い将来に5Gのサービスエリアが広がると、さらに広帯域でかつ低遅延のデータ通信が可能になっていくであろうという期待が筆者にはあります。モバイル環境でのデータ通信網は、さまざまな業界からその発展が待望されています。まだ5Gへの移行の途中ですが、移動中の端末から都内のサーバへの応答時間が最小遅延値で30ms付近を記録するほど低遅延でかつパフォーマンスが高速になりました(図3)。
いつでもどこでも使えるモバイル通信網と気軽に使えるクラウド・インフラの進化と発展はIT業界にとって新たな世界を作り上げるものです。筆者は引き続き注目していきます。