AppSheetによる業務アプリケーション開発

AppSheet Automationを活用した業務自動化の推進

Googleが提供するノーコードでのアプリ開発を実現するAppSheetは、多種多様な業務フローを高度にアプリ化するための唯一無二のプラットフォームです。アプリ開発のためにAppSheet内で提供されている数々の機能の中でも、注目したいのが「AppSheet Automation」です。⁠AppSheetによる自動化」とも訳されますが、この便利機能でどのようなことが実現できるのか? 業務や作業をアプリ化することで、日々の業務にどう役立てられるのか? 今回はこのAutomationについて実際の事例も交え、深堀り解説していきます。

なお、Automation(自動化)と聞いてRPA(Robotic Process Automation)を思い浮かべる方も多いはずです。AppSheetのAutomationは厳密な意味でRPAとは異なるかもしれませんが、様々な定型の事務作業を自動化してくれるという文脈ではAppSheet Automationも一種のRPA的なものと捉えることができるでしょう。

AppSheet Automationの核は「BOT」

AppSheetのAutomationで実現できる具体的な内容について見ていく前に、AppSheet Automationの概要を紹介しておきます。

AppSheet Automationはアプリ開発画面にある「Automation」のメニューにて設定を行います。具体的には、一つの決められた処理を実行する「BOT」を設置します。

図1 BOTが動作・作業を開始するEventの設定とProcsss

Automationの核となるのがこのBOTであり、大きく分けて2つの要素から構成されています。まず一つ目の要素は「Event」と呼ばれる部分で、ここにはAutomationが処理を始める条件(イベント)を指定します。データが変更されたことをイベントとするData Change のイベントに加え、指定の日時に処理を開始させるScheduleイベントが準備されています。Data Changeでは、新規にデータが登録された場合、既存データが変更された場合など細かな条件設定ができます。それによってユーザーによるアプリ上のデータ操作を検知し、自動化処理を開始できるわけです。また、Scheduleイベントでも例えば毎週月曜日の朝9時に処理を開始させる等、日時の到来をイベントとしたバッチ処理的なトリガー指定も可能となっています。

BOTの2つ目の大きな要素が「Process」と呼ばれる部分です。BOTは前述のEventとProcessが一体となって常に動作します。このProcessという部分がBOTが実際に担う処理の詳細を設定する部分です。用途に応じて様々な処理を指定できることから、AppSheet Automationの心臓部分といっても良いでしょう。

様々なBOTを作ることができる

このProcess内に各種設定を行うことで、以下のような処理を自動化できます。

  • メール配信
  • ファイル作成・クラウドへの保存
  • SMS・Push Notification配信
  • データ変更を伴うActionの実行
  • WebhookやAPIの実行
  • Google Apps Scriptの実行と戻り値の取得
  • 別のBOTを起動させる
図2 BOT設定画面

それぞれの処理について詳細を見ていきましょう。

1. メール配信

その名称の通り、アプリから指定の宛先にEmailを送信します。例えば、備品貸出アプリや接種予約を目的とするアプリなどでは、申し込みが行われた際(新規にレコードが登録されたData ChangeのEvent⁠⁠、申請者に受付メールを自動配信させたり、関係者への周知メールの送信を行います。AppSheetのAutomationの中でも特に多く利用される処理の一つです。

また、メールの配信の際にアプリ内にある最新のデータを元にテンプレートから文書ファイル(PDF等)を作成し、メールへ添付することもできます。日報作成や各種レポートの作成を目的とするアプリでは、データの入力作業完了と同時に関係者にPDF化されたレポートを自動配信することもできます。

別の用途として、ミスや対応の遅れを防ぐなど、様々なビジネスシーンで活用できます。例えば一つのアプリで、何かしらの対応が必要なデータや案件がある場合、これを自動的に認識してリストを作成し、このリストをPDFやExcelファイルとして関係者にリマインダ―として自動配信できます。これにより、アプリを主体とする処理やワークフロー業務にも役立つ自動配信機能です。

2. ファイル作成・クラウドへの保存

会社内では様々な文書が日々作成され続けていますが、そのほとんどで社内特有のひな形・テンプレートが事前に準備されているはずです。各種申請書やレポートなど定型フォームが存在する場合、瞬時にこれらの文書を作成できます。

作成された文書は、Google Driveにも自動保存されることから、オフィスでGoogle Workspace(以下GWS)を利用されている企業では、ファイルマネージメントにも役立つ機能となっています。

業務では文書作成に多くの時間が費やされますが、アプリにデータを入力すると同時に、背景で文書を作成できるこの機能の活用で、業務負担を大きく削減してくれることは確実です。

3. SMS・Push Notification配信

SMSを送信したり、携帯電話にNotificaitonを配信します。新規の申し込みが入った際に担当者に通知する、新規のレポートがユーザーから投稿された際、チーム関係者の携帯に通知するなど、アプリユーザー間の情報共有を確実にするための機能としても利用されています。

4. データ変更を伴うActionの実行

AppSheetでは「Action」という標準機能でデータ編集を支援します。アクションボタンを押下するだけで、データ変更が実行されることからユーザーの利便性を大きく高める仕組みです。Actionでは画面遷移を支援したり、外部のURLを開く、新規メールを作成するなど、様々な処理を実行できますが、これらのアクションのうち、データ変更を伴うものについてAutomationから実行させることができます。

また、上で言及したメール配信の自動化処理などと組み合わせた形でのBOT構築なども頻繁に利用されています。例えば、定時にメールを配信するBOTを作成し自動配信機能を持たせたアプリで、配信が実施されると同時にそのデータ(レコード)にその事実を記録するためにステータスのカラムの値を「送信済」に変更させることができます。これによりデータ編集や処理のトレーサビリティを高める手段として利用できます。このほか、データ変更履歴やログの生成など、Data Change アクションの実行・自動化の用途は無限大です。

5. WebhookやAPIの実行

WebhookやAPIが提供されている外部サービスへリクエストを送ります。例えば、広く利用されているSlackやChatworkなどのチャットサービスに対し、アプリからWebhookを経由してメッセージを送信したり、APIが提供されているサービスへリクエストを送信するなど、外部のアプリとAppSheetの連携が求められる場面で利用されている機能です。

また、AppSheetの上位プランを選択するとAppSheetが提供するAPIも利用できるため、全く別のAppSheetのアプリに対し、データ変更のリクエストを送ったり大量のデータ操作を実現する際にも利用できます。

6. Google Apps Scriptの実行と戻り値の取得

2022年7月に追加された最新機能の一つです。Google Apps Script(以下GAS)は、GWSのアプリで提供されているAPIを利用し、各種アプリの操作を行う、また自動化させる便利なツールです。このGASの実行をAppSheetのAutomationから行えるようになりました。

具体的には、GASではファイルを作成する、Gmailを送信する、Google Drive内のファイルを操作するなど、GWSで日々利用されている各種アプリを自由に操作できるわけですが、今回の連携によりAppSheetのアプリ内で発生するデータ変更などのイベントをトリガーにGASを実行することができるようになっています。

例えば、アプリで取得する緯度経度などの位置情報をGoogle MAPのAPIを利用しGAS経由で住所データに変換し、アプリにデータとして保存したり、アプリから保存したファイルの名称を任意に変更したり、Google Driveに保存されているファイル形式を変換できます。

AppSheetでできることのフィールドが、GASとの連携強化により大きく広がることになったわけです。GASによる処理の自動化とAppSheetがシームレスにコラボレートする強力な機能と言えるでしょう。

7. 他のBOTを起動させる

開発中のアプリが成長してくると、一つのアプリ内に複数のBOTを設置する場面もでてきます。このような場合、ある一体のBOTが動作すると同時に、別に設置されたBOTを呼び出しその処理を実行させることができます。複雑・高度な自動化の構築の際に役立つ機能です。

業務改善のための一手段として、AppSheet Automationを利用しよう

今回見てきた通りAppSheet Automationでは日々の業務に役立てられる様々な自動化処理が標準で準備されています。簡単な設定だけでBOTを作成でき多くの工数を削減できるため、業務改善に向けた手段の一つとしてAppSheet Automationの利用が推奨されます。

AppSheetの設定では、多くの部分を「Expression(関数⁠⁠」を利用してそのアプリの動作を定義します。これはAutomationでも例外ではなく、AppSheetのExpressionをBOTの構築の過程で利用します。これによって、複雑なビジネスロジックであっても状況に応じて動的に動作が変化するBOTもノーコードで構築できます。すべては、ExcelやSpreadsheetでも利用されるようなIFを始めとした関数で条件分離させた処理を実行させることで、これを実現しています。

社内には「決まった定型の処理」であっても例外が存在するケースもあるはずです。その例外ケースなどもロジカル化してアプリの処理に反映させることで、皆さんの業務負担を軽減し、夢の自動化を実現してくれるはずです。

我々の知らないところで、昼夜関係なく勤勉に作業を実行してくれるAutomation BOT。アプリを利用していないところでもBOTは常時稼働していますし、陰ながら皆様の業務を強力に支援してくれる相棒🤖です。

AppSheetは期待を裏切りません。AppSheet Automation、是非お試しください。

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