OSSデータベース取り取り時報

第85回【祝】連載8年目突入、MySQL Shell for VS Codeの機能紹介、Postgres Vision Tokyo 2022がまもなく開催

この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。この連載は今回から8年目に突入しました。引き続きご愛読と応援をよろしくお願いいたします。

[MySQL]2022年8月の主な出来事

2022年8月のMySQLの製品リリースは、VS Codeの拡張機能としてMySQL Shellの機能を利用できるMySQL Shell for VS Code 1.3.3+8.0.30のみでした。

MySQLサーバーに関する重要な情報としては、MySQL 8.0.29の公開取り下げがありました。

MySQL 8.0.29のリリースノートより

上記の通り、MySQL 8.0.29のリリースノートでも触れられているように、InnoDBのテーブルに対して列を追加したときの挙動に問題があったための措置となっています。現在MySQL 8.0.29をご利用の方は、早急にMySQL 8.0.30に切り替えていただくことをおすすめしています。

MySQL Shell for VS Code

MySQL Shell for VS CodeはVS Codeで利用できるオープンソースの拡張機能で、MySQL Shellの機能を利用できるGUIです。MySQLのGUIツールとしてご利用いただいている方も多いMySQL Workbenchの機能と、MySQLのクライアントプログラムとしてSQLだけでなくJavaScriptやPythonをサポートし、多彩なユーティリティを持っているMySQL Shellの機能を統合することを目的に開発が行われています。

MySQL Shell for VS Code

MySQL Shell for VS CodeではMySQLサーバーやOCI上のMySQL HeatWaveのインスタンスへの接続の管理、MySQL HeatWaveの起動停止、またMySQL HeatWaveを利用するにあたって必要となる踏み台サーバー相当のコンピュートインスタンスやBastion(要塞)サービスの設定や管理が可能です。MySQL HeatWaveのインスタンスのデータのダンプをOCIのオブジェクトストレージに出力でき、別のインスタンスなどへのロードの指示も可能です。

メインとなる機能は、データベースに接続した上でのDB Editorでの作業です。Jupyter Notebookに似たノートブック型のインターフェースでSQLやJavaScript, TypeScriptの実行が可能です。TypeScriptを用いたグラフでのデータの可視化もでき、さらに継続的に開発を進めています。VS Code上で行っているプログラミングのコード内にSQL文がある場合、そのSQL文をDB Editorで編集や実行が可能です。さらに、DB Editor側で編集したSQL文をプログラムに反映することもできるようになっています。

ノートブック型のインターフェースでSQLやJavaScript, TypeScriptの実行が可能

また、MySQL Workbenchの管理ダッシュボードと同様な機能も順次実装しており、MySQLサーバの主な設定やクライアントからの接続の表示、パフォーマンス関連情報をグラフで表示するパフォーマンスダッシュボードが実装済みです。

管理ダッシュボード機能

個人的には、データベースへの接続設定の中にMySQL以外にSQLiteが用意されており、すでにSQLiteのデータファイルも読み込んでSQLを実行できることが興味深い点となっています。

MySQL Shell for VS Codeは、2022年9月初の段階ではプレビュー版の位置づけとなっています。まだまだバグが残っている部分もありますので、お試しいただいた上で見つかったバグや機能リクエストは、バグデータベースへの登録をお願いします。

[PostgreSQL]2022年8月の主な出来事

PostgreSQLの代表的なイベントのひとつである「Postgres Vision」の日本国内向けの開催が、9月7日からに迫っています。まずは気になるセッションをピックアップして紹介します。そして、次期メジャーバージョンの新しいベータ版のリリースと、注意すべきセキュリティ修正が入った既存バージョンの修正版のリリースについてお知らせします。

Postgres Vision Tokyo 2022 がまもなく開催

9月7日~9日に、「EDB Postgres Vision Tokyo 2022」がオンラインで開催されます。今回は私たちOSSコンソーシアムのデータベース部会も、一部で関わらせていただくことになりました。

PostgreSQL関連では日本国内にて恒例開催される代表的なイベントがいくつかありますが、⁠EDB Postgres Vision Tokyo」もそのひとつです。3日間にわたり21ものセッションが予定されています。バリエーションに富んだ内容になっており、事例、企業の取り組み紹介、将来に向けたビジョン、そしてエンジニア向けの技術解説セッションももちろんあります。

ここでは一足先に、筆者が見所かなと思うものをいくつか取り上げて紹介します。一部は手前味噌なものも含まれますがご容赦ください。

Postgres Vision Tokyo 2022のWeb画面
Postgres Vision Tokyo 2022のWeb画面
デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中で考えるべきデータベースのモダナイゼーションの方向性、9/7(水)10:05~10:55
鈴木康介氏(IDC Japan株式会社)が中心となって、初日のオープニング直後に基調講演とパネルディスカッションが行われます。講演ではデータ管理やデータ活用のあるべき姿を見据えて、企業のデータベースをどの様に変革すべきなのかが示されます。先見の明がある見解というだけではなく、説得力のある調査データも示しながらお話されるのではないでしょうか。
パネルディスカッションでは鈴木氏の講演を受けて、企業ITの現状や問題意識、将来への期待などを討論します。OSSコンソーシアム・データベース部会もこのパネルディスカッションにお招きいただきました。肩の凝らないざっくばらんなディスカッションをお聞きいただけると思います。
Postgresに最も期待する4つのこと、9/9(金)10:00~10:40
MIT教授でEDB顧問でもあるマイケル・ストーンブレーカー博士による基調講演が、3日目の朝に設けられています。ストーンブレーカー博士は、データベース研究の世界的権威であり、PostgreSQL(の前身)やさまざまなDBMSの誕生にも関わられた有名人です。今年の6月に米国中心に開催されたPostgres Vision 2022でも講演されており、本連載の第83回でも紹介しました。今回はストーンブレーカー博士の講演を聴講できる貴重な機会になります。
さらに独断で選んだその他の注目セッション
1日目 9月7日(水)には、特別講演として事例の紹介「 ソフトバンクの成長を支える新DB基盤の選択肢とは」があります。著名な企業の採用事例は、やっぱり採用に向けた励みになると思います。
2日目 9月8日(木)「更に進化したEDB Postgres Distributed(旧BDR)で実現する99.999%の高可用性」では、本格的な高可用性を備えた分散PostgreSQLクラスタを構成する技術の解説があります。マルチマスタレプリケーションのクラスタ構成を説明するこのセッションは、最新技術、尖った技術が好きな方におすすめです。
3日目 9月9日(金)「初めてでもできる! 続・EDB Postgresでかんたんマイグレーション」では、タイトル通り異種DBMSからのマイグレーション(移行)の発表があります。DBサーバを移行しようとする場合だけでなく、複数種類のDBMSを使う場合の互換性の観点でも有益ではないかと思います。別のDBMSを使っていて最近PostgreSQLを使うことになった方にも向くのでは無いかと勝手に予想していますが、さてどうでしょうか。

次期メジャーバージョンPostgreSQL 15 のベータ3が登場

バージョン15のベータ版は前回にも取り上げました。初夏から秋にかけてはPostgreSQLの次期メジャーバージョンの状況が気になっており、この時期はPostgreSQL関係者が少しソワソワしている感じがあります。そんな中で8月11日にはベータ3がリリースされました

このベータ3において、ひとつ前のベータ2からどの様な追加や変更が入ったのかは、発表された情報では明確になっていません。バージョン15用のリリースノートもまだベータ2の時のものの様です(8月26日現在⁠⁠。後述するバージョン10~14の更新での不具合修正で、バージョン15にも該当する部分の修正が中心なのかもしれません。いずれにせよ、このベータ3で新機能が追加されてはいない様に思います。この点については確認できていませんので、もし違っていたらご容赦ください。

さて、このベータ3により「第3四半期の終わり頃の(正式版の)一般公開に一歩近づいた」と記されています。次のお知らせは、バージョン15の正式リリースになるのかもしれません。

サポート中の全てのバージョン10~14への更新がリリース

上記と同じ8月11日に、サポート期間にあるすべてのメジャーバージョンについての更新版、具体的には14.5、13.8、12.12、11.17、10.22 がリリースされました。マイナーバージョンアップは基本的に新たに発見・報告された問題点などの修正を行うものです。今回のリリースでも40を超えるバグが修正されているとのことです。

もっとも注意すべき点は、権限昇格を伴うセキュリティ脆弱性である CVE-2022-2625 の修正がされている点でしょう。この CVE-2022-2625 ですが、

“CREATE EXTENSION コマンドが実行される前に誤認されるようなオブジェクトを作っておいて、それを拡張に所属させるという悪用が可能⁠日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)のニュースより)

というものです。「重大」に分類される問題ですので、影響の有無を確認するとともに、修正版の適用を検討すべきと考えます。PostgreSQL Global Development Groupの記事にこの脆弱性の説明があります。また、EDB社のブログにはより詳しい解説記事が掲載されています。このブログ記事には、脆弱性を正しく理解する説明と、影響を調査するためのスクリプト、取り得る軽減策、そして推奨事項が述べられています。元記事は英語ですが、翻訳機能を使ってでも良いので一読をおすすめします。

この脆弱性ですが、影響を受ける PostgreSQL のバージョンは 10 から 14 であると述べられいます。ただし、⁠通常サポートされていないバージョンはテストしないが、この脆弱性はかなり古いものである」とわざわざ補足しています。もしバージョン10よりも古い、既にサポート期間を終了しているPostgreSQLをお使いの場合も要注意ではないかと思います。

2022年9月以降開催予定のセミナーやイベント、ユーザ会の活動

PostgreSQL 15最新情報解説セミナー ~来る新バージョンの魅力をPostgreSQLスペシャリストが解説~

日程 2022年9月2日(金)13:00~14:30(※聴講には事前申込が必要です。ご希望の方はお急ぎください)
場所 オンライン開催(Zoomウェビナー)
内容 この秋に正式リリース予定のPostgreSQL 15では、新たな SQL構文の追加サポート、ロジカルレプリケーションの機能拡張、ソート処理やウィンドウ関数などにおける性能改善、動作モニタリングの更なる拡充など、さまざまなエンハンスメントが行われています。このセミナーではこれらPostgreSQL 15の新機能を解説します。また、セミナー中に講演内容等に関する質問が可能なLive Q&Aが利用できます。
主催 SRA OSS LLC

オープンデベロッパーズカンファレンス(ODC)2022 Online

日程 2022年9月3日(土)10:00~18:00
場所 オンライン開催(ZoomおよびYouTube Live)
内容 開発者とインフラエンジニアの交流の場として、⁠DevOps」⁠開発」⁠開発者」をキーワードに、さまざまな最新情報を提供いたします。14時からのセッションでは、MySQLチームの講演として今回の記事でご紹介したMySQL Shell for VS CodeとMySQL Operator for k8sについてご紹介予定です。また、日本MySQLユーザ会が講師を務めるSQL超入門のセッションもあります。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

オープンソースカンファレンス 2022 Online Hiroshima/Fall/Fukuoka

日程 〔Online Hiroshima〕2022年10月1日(土)10:00~18:00
〔Online Fall〕2022年10月28日(金⁠⁠~10月29日(土)10:00~18:00
〔Online Fukuoka〕2022年11月26日(土)10:00~18:00
場所 オンライン開催(ZoomおよびYouTube Live)
内容 オープンソースカンファレンスは、オープンソースの「今」を伝える総合イベントとして、東京だけでなく、北は北海道、南は沖縄まで全国各地で開催しています。2020年の春以降はオンラインでの開催となっています。今後の開催予定は10月のOnline/Hiroshima(広島)Online/Fall(全国)、11月のOnline/Fukuoka(福岡)です。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

EDB Postgres Vision Tokyo 2022

日程 2022年9月7日(水⁠⁠~9月9日(金)10:00~17:00
場所 オンライン開催
内容 記事本編でも紹介しましたが、Postgresを活用してイノベーションを実現したい企業の方々のためのイベントです。⁠データを制するものは未来を制す(Own your data, own your future.⁠⁠」をテーマに、Postgresに関する最新情報がラインナップされています。
主催 エンタープライズDB株式会社

第35回 PostgreSQLアンカンファレンス@オンライン

日程 2022年9月9日(金)20:30~23:00
場所 オンライン開催
内容
  • 初心者による「使ってみた/動かしてみた」
  • 中級者による「こういうノウハウ使ってる」
  • 上級者(?)による「こういう拡張してみた」
その他、PostgreSQLに関連する話題であれば何でもOK!アンカンファレンス形式なので、何が出るかは当日参加してのお楽しみ。
主催 PostgreSQLアンカンファレンス

MySQL HeatWaveオンラインセミナー&ハンズオン

日程 日程調整中
場所 オンライン(Zoom)
内容 MySQLの検索処理を圧倒的に高速化するクラウド・データベースであるMySQL HeatWaveの技術解説セミナーと実際にMySQL HeatWaveを利用してみるハンズオンを開催予定です。MySQL HeatWave環境の構築やデータのロード方法の確認、またOCIのサービスの活用などを解説いたします。日程および申し込みサイトなどは近日公開予定です。
主催 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

Cloud Native Week 2022 秋

日程 2022年9月14日(水⁠⁠~9月16日(金)
場所 ライブ配信セミナー
内容 一般企業でもクラウドネイティブに向けた取り組みが始まっているが「クラウドネイティブ」の言葉が先行し、蓋を開けてみれば「クラウドを使っているだけ」⁠インフラをクラウドに載せ替えただけ」⁠単なる仮想化環境」⁠手作業が中心」というケースも聞かれる。本イベントではあらためてクラウドネイティブの本質にフォーカス。⁠なんちゃってクラウドネイティブ」の誤解をキーパーソンがぶった切り、正しい道を照らし出す⁠救済⁠の3日間。初日9月14日(水)13:50からのセッションではMySQL Operator for Kubernetesを中心にDevOps向けのテーマでの講演が予定されています。
主催 @IT編集部

PostgreSQL Conference Japan 2022

日程 2022年11月11日(金)10:00~18:00(開場 9:30)
場所 AP日本橋(東京)(東京駅より徒歩5分)
内容 日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)によるPostgreSQLの総合カンファレンスです。午前2講演、午後 トラック にて12講演とクロージングセッションが設けられます。本イベントは有料です。参加チケットは9月中旬から販売開始です。なお、本イベントの実行委員や当日スタッフを募集しています。協賛いただける企業・団体も募集中です。協賛会員にはご協賛口数分のご招待枠の提供があります。
主催 日本PostgreSQLユーザ会

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