AppSheetによる業務アプリケーション開発

2022年中にリリースされたAppSheetの3大新機能 ~ユーザーエクスペリエンスがさらに向上!

2022年に実装された主な新機能

AppSheetは2022年冒頭に実施したユーザーとの情報共有の場で、同年中のリリースを目標として次の3つの新機能について情報を公開していました。

  1. Google Apps Scriptとの連携
  2. デスクトップPCでの利用を想定した新デスクトップモード(デスクトップに最適化されたUX)
  3. 独自データベースとなるAppSheet Database

いずれもAppSheet既存の特性は活かしたまま、AppSheetで開発できるアプリケーションの機能や動作を大きく向上する機能です。そのため発表直後より、これらの機能のリリースが待ち望まれる状況となっていました。

現在は、①がリリースされていて、②と③はプレビューリリースのステータスです。今回は時期尚早かもしれませんが、2022年のAppSheetを振り返る意味も込め、これら3つの新機能について解説します。

Google Apps Scriptとの連携

AppSheetは2022年よりGoogle Workspace(以降 GWS)製品群の一部としてGWSの各種アプリケーションとの連携がさらに強化されています。この流れの中で、Google Apps Script(以降GAS)との連携機能がリリースされています。AppSheet Automationの中で、 GASを呼び出すタスクを設定することで、GASで作成したファンクションを実行します。これまで実現が不可能であったAppSheetのイベントをトリガーとしたGASの実行です。これによりGmailやGoogle Drive、スライド、スプレッドシート、ドキュメントといった一連のGWSのアプリケーションに対する様々な操作をGAS経由、AppSheetから直接実行できることとなりました。極めてパワフルな新機能と言えるでしょう。

具体的なユースケースは多岐に及びます。これまでスプレッドシート等のデータソースでホストされるデータマネジメントを基本としていたAppSheetの機能を拡張し、これまでAppSheet単独での実現が難しかったビジネス要件もカバーできるようになっています。

最も分かりやすい例としてはGWSコンテンツへのアクセスや操作です。AppSheetからGoogleカレンダー上にスケジュールを新規作成、Google Driveにファイルを自動作成し保存、Driveに保存されているファイルからデータを取得、保存されたファイルタイプの変換等々、ビジネス要件に応じGWSコンテンツの操作をGASを活用することで様々なワークフローの自動化をサポートします。

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また、GASのファンクションを利用して外部のAPIを呼出し、応答のあった戻り値をAppSheet内で取得することで、カラム値として保存することになりました。この機能が「Game Changer」と呼んでも過言ではありません。これまでAppSheetにはWebhookや外部APIへのGETリクエストを送信する機能は存在しましたが、GASとの連携により、いわゆる「POSTリクエスト」へも対応が可能となったのです。

GASからの戻り値を取得して、様々な用途で活用できる

この「POSTリクエスト」への対応は一つの大きな新機能と呼ぶにふさわしい存在です。この機能について深堀してみみます。

AppSheet Automationのタスクの中でGASを指定すると、BOTの実行と同時にGASが実行されます。そのGASの中で外部APIを呼び出し、取得したデータを戻り値として受け取る場合(GASのFunctionがReturnにより戻り値を返すように設定されている場合)は、Automationのタスク設定の中でReturn Valueを指定することで、GASの戻り値を取得できるようになっています。

その後、AutomationのProcess設定の中で、前のステップでGASから取得した戻り値を利用するためのExpressionを活用します。データテーブルの指定のカラムにこの値を渡し、データベースに保存したり、メールの本文の中に落とし込んだりと、AppSheet内で取り扱える通常の「値」として様々な用途で活用することが可能となります。

これによりAPIが提供されている様々なサービスとAppSheetを連携し、外部サービスから取得したデータをAppSheet内で利用する道筋が開かれます。これにより、AppSheetと外部サービスのさらなる連携強化を実現できることになるでしょう。

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UI/UXが改善される「新デスクトップモード」

2022年の8月にプレビューリリースされているのが新デスクトップモードです。PC上でWebアプリとしてAppSheetをブラウザー上で利用する際に提供される全く新しいUI/UXを指します。プレビュー機能ですので、運用アプリでの利用は推奨されていませんが、バグ修正やコミュニティーを通じて得られたユーザーからのフィードバックを受けた改訂などを経て、近い将来の正式リリースが見込まれる機能です。

AppSheetの生い立ちは、モバイルアプリケーションの開発プラットフォームとしてスタートしました。この背景から、モバイルレイアウトでのUXが優れいていた一方で、デスクトップでも携帯利用時と同一のレイアウトや画面の遷移となっていました。そのためPCでのアプリ利用時において、UXが最適化されていないといった指摘が数多く届けられていました。今回の新デスクトップモードにおいてこの課題を解消すべく、デスクトップでのアプリ利用の「最適化されたUX」を提供することを目的として進んでいるプロジェクトです。

画面レイアウトの変更で、デスクトップで使いやすくなる

画面レイアウトとのもっとも大きな違いとして、これまでテーブルやデッキタイプの複数レコードを表示するコレクション画面と、それら個別のレコード詳細を確認する詳細画面の一体化があります。これまでコレクション画面と詳細画面を組み合わせた機能を開発する場合はダッシュボードタイプにおいて、別途作成したそれぞれのViewタイプをダッシュボード画面で指定し並べる方法を取る必要がありました。新デスクトップモードにおいてはわざわざダッシュボードビューを利用せずに、標準のコレクションビューであるテーブルやデッキタイプの画面の個別のレコードを選択することで、右側のエリアに詳細画面が表示される形となります。

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新デスクトップモードでは画面遷移することなく詳細データの表示や関連データの深掘りが可能。またモニター画面全体を活用できるレイアウトに変更されています。
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さらに詳細画面の中で関連するテーブルを指すインラインビューで子レコードを選択することにより、その詳細画面が続けて右側に表示されていきます。このような基本的なレイアウトや画面遷移の変更により、データを選択するたびに異なる画面タイプに遷移する現行の画面レイアウトからUXの改善が見られます。若干のストレスを伴う過度な画面遷移を経ることなく、必要なデータにアクセスできる点が大きな変更点です。

また、同時に画面を遷移するための機能となるメニュー設定やActionボタンの配置も変更されており、アプリ操作のUXを向上させつつ同時にデータの参照性も改善しています。

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個別の詳細画面においても視認性の向上が図られています。現行の詳細画面レイアウトではデータを一列で上から下に列記する形式しか選択の余地がありませんでしたが、新デスクトップモードにおいては、カードブロックというコンポーネントを設定することで、カラム内容ごとにデータをまとめることができます。カードブロックを使うことで、詳細画面の中で2カラムもしくは3カラムで配置できます。

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データ編集機能においても改善があります。編集時にフォーム画面へ遷移するのではなく、該当の詳細画面でデータ変更可能な項目が入力フィールドに切り替わり、データを編集することが可能となります。

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データ編集時は詳細画面のレイアウトを基本に入力フィールドに切り替わる形となり、編集対象とする箇所がわかりやすくなっています。
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データの新規登録時も画面遷移が発生することなく、右から新規登録フォームが差し込まれる形で表示されます。連続したデータ登録作業では作業負荷が軽減されます。
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上記で述べた変更以外にも新デスクトップモードにおけるUXの改善があり、その正式リリースが待ち望まれる状況です。

AppSheet内で使えるデータベース「AppSheet Database」

AppSheetで最も利用されているデータソースといえばスプレッドシートですが、一部の市民開発者の目線からするとAppSheet Editorとスプレッドシートの2つのツールを使い分けることが難しいという声がAppSheetチームに寄せられていました。この問題の解決のため開発が進められていた機能が10月にプレビューリリースされたAppSheet Databaseです。

AppSheet DatabaseはAppSheetプラットフォーム自体に組み込まれたデータソースとなり、AppSheetアプリケーションの開発において一貫したユーザ体験の実現を目的としています。

この機能追加にあたっては、完全にゼロから開発が進められたものではなく、Google社内のインキュベーション機関である「Area 120」において開発されていたGoogle Tablesの技術が採用されています。Google Tablesは非開発者のビジネスユーザにおいても直感的なデータの管理が可能なデータストアとして、現在は北米地域のみを対象としてベータサービスとして提供しています。これをAppSheet Databaseへと拡張するにあたって、北米以外の全世界で利用を可能にすべく各国セキュリティ要件に対応するための見直しを含め、大幅なブラッシュアップが行われていることが報告されています。

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AppSheet Databaseも新デスクトップモードと同じく、現在世界のAppSheetユーザからのフィードバックを受けている状態ですが、正式リリースの際には市民開発者となるユーザの対象を大きく広げる機能となることが期待されます。

最後に

今回紹介した機能以外にもAppSheetでは様々な機能の追加や改善が継続されていますが、その対象ユーザとしてはGoogle Workspaceを代表としたオフィススイーツを利活用しているビジネスユーザが想定されています。

これは今後IT開発者が社会に不足する時代にむけて、ビジネスユーザの誰しもがアプリケーション開発者となれるプラットフォームが必要であるとGoogleが考えていることが背景でしょう。市民開発者にむけて利便性が日々高まっていくAppSheetの展開を社内で進めることにより、今後は現場業務を理解している現場従業員こそが社内のDXをさらに推進していく存在となるはずです。

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