この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。
[MySQL]2022年10月の主な出来事
2022年10月のMySQLの製品リリースは、MySQLサーバー8.
ラスベガスで開催されたOracle CloudWorldでは、オブジェクトストレージ内のファイルをMySQLのSQL文で分析できるMySQL HeatWave LakehouseをはじめとするMySQL HeatWaveの新機能が複数発表されました。
MySQL 8.0.31リリース
MySQL 8.
(
(SELECT a, b, c FROM t ORDER BY a LIMIT 3) ORDER BY b LIMIT 4
) ORDER BY c LIMIT 5;
新しい構文として"INTERSECT"と"EXCEPT"がサポートされています。なお、これらの構文については日本MySQLユーザ会副代表の坂井さんのブログにて解説されていますのでご覧ください。
このほか同梱されるOpenSSLライブラリが1.
MySQL HeatWaveの機能拡張
2022年9月にMySQL HeatWaveがAWS上で動作するMySQL HeatWave on AWSが発表されましたが、10月から一般利用が可能になっています。まずは米国東部
10月にラスベガスで開催されたOracle CloudWorldでは、MySQL HeatWaveについて数多くの発表がありました。特に、オラクルの創業者であるLarry Ellisonによる基調講演の冒頭では、オラクルの戦略としてマルチクラウド
この基調講演の中で触れられた、AzureユーザーがMySQL HeatWaveを利用できるようになること以外に、大きな機能拡張として発表されたのがMySQL HeatWave Lakehouseです。MySQL HeatWave Lakehouseはオブジェクト・
MySQL HeatWave Lakehouseはこれらのデータを高速にロードして、MySQLサーバのSQL文でデータ分析が行えるように設計されています。MySQL Autopilotの機能としてロード対象のデータに対してインテリジェントなサンプリングを行い、データ型の推論を行った上でテーブル構造のDDLを自動生成します。MySQLサーバー内のデータとオブジェクトストレージ上のデータをJOINすることも可能となっており、数100TB級のデータ分析も迅速に行えるソリューションとなっています。なお、MySQL HeatWave Lakehouseは2022年10月末現在ではベータ版として提供されています。
[PostgreSQL]2022年10月の主な出来事
PostgreSQL 15 が正式にリリースされました。開発コミュニティからのリリース情報に加えて、PostgreSQLを支える主要企業からも参考になる情報が発信されています。その前に、前回の記事で少し触れましたが、EDBのCEO Ed Boyajian
「EDBはPostgreSQL開発コミュニティと共に進化する」~EDB CEO Ed Boyajianさんとの対談
データベース
ところで、Edさんは明るくて格好いいおじさんでした。明るく明快なお話を聞いているとPostgreSQLとOSSの将来が明るいものに思えてきます。リーダーの魅力って大事です。
- ── Postgres Vision Tokyo 2022でのEdさんのメッセージビデオでは、今ではPostgreSQLやEDB Postgresの存在が当たり前になったということ、そして、ここまで普及するのに時間が掛かったということを話されていました。PostgreSQLに限らず多くのOSSも同様に普及に時間が掛かっていると思います。PostgreSQLとEDBの普及の度合はOSSのなかでは一歩先に進んでいるもののひとつだと思いますが、それでももっと早くに普及しても良かったのでは無いだろうかと感じています。多くのOSSが普及に時間が掛かっているのはなぜでしょう。
-
2008年以前はRed Hatにいて、当時はいろんなOSSが登場・
成長してくるところでした。そしてOSSは非常に多くの技術が必要だということに皆が気付き始めていました。DBも同様で、OSSのDBが普及に時間がかかったのは、それがとても複雑な技術でできているからです。他のOSSに比べても、DBは難しい部分がたくさんあります。また、普及に時間が掛かった理由のひとつには、この世界 (DB) の巨人が顧客をガッチリとロックインするのに成功していたことも挙げられます。 -
時間はかかりましたが、結果的にそれらの難しい課題にEDBとPostgreSQLはうまく対処できたと思います。EDBはもう20年もPostgreSQLに関わっていますが、PostgreSQLの発展と普及に貢献できたと思います。
- ── PostgreSQLやEDBに限らずDBにはいろいろな種類のものがありますが、DBを使おうとする立場としては、さまざまな種類のものを使い分けるのが難しいジャンルではないかと思います。少なくともこれまではそうでした。多種多様なアプリケーションやサービスが登場しつつある中で、必要に応じて複数種類のDBを使い分けるようになるでしょうか。
-
伝統的なアプリケーションにはどの様な処理が必要か、そして、これからの新しいアプリケーションではどの様な処理をしないといけないのかを考える必要があります。伝統的なアプリケーションではトランザクショナルなDBが必要だと考える方が圧倒的に多いでしょう。新しいアプリケーションの中で特殊な処理を持つものでは、特別なスキルが必要な特別なDBが必要になることもあります。その様な状況では特殊用途のDBが役に立つので、それらのDBは残り続けるでしょう。
-
新しい特徴的なDBが登場してくるときに
「ハイプ」 という現象がみられます。一時的にドンと注目を集めて人気が上がりますが、一過性の注目で盛り上がったあとに、再び汎用のDBに戻ってくるということもよくあります。一般の開発者は、汎用のプログラミング言語から使いたい、汎用のDBを使いたいという場合の方が多いのが現実です。この汎用DBでは、OSSのDBでも十分な能力があることが誰の目にも明らかになりました。汎用のDBというのは、一見魅力が少ないようにも見えますが、実はこの方が使い勝手が良いという面もあります。 - ── Edさんのお話がヒントになって、PostgreSQLだけでなく他のOSSについてももっとよく使われるようになって欲しいと思っています。しかし、EDBのみなさんが長期間にわたってたいへんな努力をされてきたこともよくわかりました。
-
EDBの歴史はPostgreSQLに貢献してきた歴史です。ですからEDBの経営者としての役割は、PostgreSQLとEDBの両方ともが市場で広がっていくことに尽力することです。PostgreSQLのコミュニティは独立性が高く、かつ組織がしっかりとしているからこそ、その様な貢献もできたのです。大事なことは、EDBの貢献が広く世界で使えるOSSとなって世の中に出て行くことです。この様な貢献の仕方は、OSSではない分野のビジネスリーダにとっては風変わりなものに見えるかもしれません。
- ── OSSからスタートしてビジネス展開を進める企業の中には、だんだんOSSコミュニティから離れて独自に進化する道を歩み始めるところも少なからずあります。EDBはPostgreSQLコミュニティと共に進化し発展することをとても大事に思っていることがよくわかりました。
さて、上記はEdさんのお話を筆者の理解と解釈でまとめたものです。もしかしたらEdさんの意図を正確に伝え切れていない部分があるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。また、今回のこの記事では載せきれなかった話題として、昨今のIT業界で避けて通れないデジタル変革
PostgreSQL 15 が正式リリース
10月13日、PostgreSQLグローバル開発グループは最新のメジャーバージョンであるPostgreSQL 15のリリースを発表しました。プレスリリース
- ソート性能が向上しています。インメモリとディスク上のソートアルゴリズムを改善し、ソートする対象のデータ型によって25%から400%の速度向上が実現したベンチマーク結果となっています。
- ウィンドウ関数 row_
number(), rank(), dense_ rank(), count() の性能が向上しました。 - SELECT DISTINCT を使用した問い合わせが並列に実行できるようになりました。
- 外部データラッパーであるpostgres_
fdwで非同期コミットをサポートするようになりました。 - LZ4とZstandard
(zstd) ライトアヘッドログ (WAL) ファイルへの圧縮のサポートが追加され、ワークロードによって容量と性能の両面で改善が期待できます。 - リカバリ時間を短縮するためにWALによって参照されるページのプリフェッチのサポートが追加されました。
- 組み込みバックアップコマンドであるpg_
basebackupでは、サーバサイド圧縮をgzip、LZ4、zstdから選択できるようになりました。 - 標準SQLの MERGE コマンドが使えるようになりました。
- 文字列を検査するための正規表現を使用する新しい関数が追加されました。
- security_
invokerと呼ばれる、ビューの作成者ではなく呼び出し元の権限を使用してデータを問い合わせるビューを作成できるようになりました。 - 論理レプリケーションを柔軟に管理可能になりました。
- 競合するトランザクションの再生をスキップする機能や、エラーが検出された場合に自動的にサブスクリプションを無効にする機能など、競合管理を簡素化する機能が追加されました。
- 論理レプリケーションでの2相コミット
(2PC) の使用がサポートされました。 - 新しいログ記録形式としてjsonlogが導入されました。
- サーバレベルの設定パラメータを変更する権限をユーザに付与する機能が追加されました。
EDBブログでのPostgreSQL 15情報
開発コミュニティによる公式情報以外にも、各社からPostgreSQL 15の関連情報が発信され始めています。まず、PostgreSQLに大きな貢献をしているEDBのブログ記事から紹介します。
- Postgres 15 がやってきた!
- 「やってきた!」
というタイトルですが、日付をよく見ると正式リリース直前の10月10日付けでした。このブログではPostgreSQLのリリースサイクルとロードマップの概要がわかりやすく整理されています。 - 排他的バックアップ モードが Postgres 15 で最終的に削除
- PostgreSQL 9.
6 以降に非排他的な (排他的ではない) バックアップが導入されて、非排他的バックアップモードは長く推奨されていませんでしたが、今回のバージョン15でついに削除されました。これは通常では問題になることはほとんど無いとは思えるものの、独自の自家製バックアップスクリプトを作っている場合に影響が出る可能性もあると、注意を促しています。 - Postgres 15 はCOPYコマンドのHEADERとMATCHを追加
- PostgreSQL 15では、COPYコマンドでのHEADERオプションが使える場合が増え、MATCHオプションが追加されています。このブログはその有用性について説明した記事です。ブログの投稿者であるBruce Momjianさんは次の様な言葉でブログを締めくくっています。
“これは華やかな主要機能ではありませんが、使いやすさを向上させる改善のひとつです。小さな改良が誰からでももたらされ、Postgres の有用性に大きな影響を与えることができます”。
SRA OSSによるPostgreSQL 15検証報告
日本国内からも有益な情報が発信されています。SRA OSS LLCから、PostgreSQL 15の主要な新機能について動作検証を行った結果が報告書として出ています。この報告書ではコマンド実行手順も詳細に記載しています。PostgreSQL 15を使って実際に新機能を確認したい場合のガイドブックとしても重宝します。また、PostgreSQL 15の公式ドキュメント日本語訳はまだ公開されていませんので、新機能部分について理解するための日本語情報としても役に立つでしょう。
2022年11月以降開催予定のセミナーやイベント、ユーザ会の活動
オープンソースカンファレンス 2022/2023 Online
日程 | 〔Online Nagaoka〕2022年11月12日 〔Online Fukuoka〕2022年11月26日 〔Online Osaka〕2023年1月28日 |
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場所 | オンライン開催 |
内容 | オープンソースカンファレンスは、オープンソースの |
主催 | オープンソースカンファレンス実行委員会 |
PostgreSQL Conference Japan 2022 (有料)
日程 | 2022年11月11日 |
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場所 | AP日本橋 |
内容 | 日本PostgreSQLユーザ会 |
主催 | 日本PostgreSQLユーザ会 |
db tech showcase 2022
日程 | 2022年11月16日 |
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場所 | 11月16日・ オフライン会場:九段会館テラス コンファレンス&バンケット |
内容 | 国内最大規模のデータベース技術カンファレンスです。MySQLやPostgreSQL関連ではそれぞれ複数のセッションがあり、その他のOSSデータベースの発表も予定されています。 |
主催 | 株式会社インサイトテクノロジー |
MySQL HeatWaveテクノロジーアップデート(ハイブリッドイベント)
日程 | 2022年11月25日 |
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場所 | 日本オラクル株式会社 セミナールーム & オンライン |
内容 | このウェビナーでは、Oracle CloudWorldで発表されたMySQL HeatWave Database Serviceの最新の技術情報を、お客様導入事例とあわせてご紹介します。2022年9月にはAWS上で動作する |
主催 | 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit |
MySQLテクノロジーセミナー スペシャルエディション “Facebook & MySQL”
日程 | 2022年12月2日 |
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場所 | 日本オラクル株式会社 セミナールーム |
内容 | MySQL株式会社のコンサルタントで現在はFacebookのオンライン・ |
主催 | 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit |
MySQLサーバーを守るセキュリティの5つのポイント
日程 | 2022年12月8日 |
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場所 | オンライン |
内容 | データはどの企業や組織にとって最も重要な資産の1つです。特にデータベースには機密情報が多く格納させていることもあり、多様な攻撃の標的となり得るため確実な対策が必須となっています。データベースに対する攻撃は外部からとは限らず、組織の内部の者である可能性もおおいにあります。このウェビナーではMySQLが提供するデータベース監査や暗号化、マスキングなどの包括的なデータ保護を主に5つのポイントから解説していきます。お申し込みページは近日公開予定です。 |
主催 | 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit |
HeatWave on AWSテクノロジーウェビナー
日程 | 2022年12月15日 |
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場所 | オンライン |
内容 | AWS上で動作する |
主催 | 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit |
MySQL Autopilotが実現するデータベース管理の自動化
日程 | 2022年12月21日 |
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場所 | オンライン |
内容 | MySQL Autopilotが機械学習を活用してデータベースの運用自動化や運用負荷の軽減を実現する機能です。MySQL Autopilotにはデータベースの負荷に応じた最適なスペックの提案やデータロード時の並列度の自動調整、さらにはクエリ実行時の最適化などが含まれます。MySQL HeatWave Lakehouseでのロード対象のデータにする高効率のサンプリングやデータ型の推論を行った上でのテーブル構造のDDLの自動生成もMySQL Autopilotの一環です。このウェビナーではこれらのMySQL Autopilotの機能によるデータベース管理の自動化と運用効率化についてご紹介いたします。お申し込みページは近日公開予定です。 |
主催 | 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit |
新春恒例「MySQL 8.0 入門 チューニング基礎編、SQLチューニング編 2023」
日程 | 2023年1月12日 |
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場所 | オンライン |
内容 | 毎年ご好評をいただいている新春恒例のMySQLパフォーマンス・ |
主催 | 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit |