RemNoteで実践する知的な情報整理術

読んだ資料をもう忘れない! RemNoteの注釈機能とフラッシュカードで思考と記憶を整理する

必要な機能がバランスよく揃っていて使いやすいPKM(Personal Knowledge Management)ツール「RemNote⁠⁠。前回はアウトライン形式を使ったメモのとり方や、メモからメモへリンクを作成する方法について解説しました。また、メモに対してリンクを作成すると、リンクされた側のメモにも「バックリンク」が自動的に挿入され、メモ同士の情報のつながりが自然に生まれるメリットについても紹介しました。

今回はこうした基本を押さえたうえで、RemNoteの強力な注釈機能とフラッシュカード機能を使う方法について見ていきます。

ウェブページやPDFファイルに対して注釈を加え、記憶したい情報をフラッシュカードにすると、しだいにRemNoteをつかって思考するのに慣れてきます。すると、しだいにRemNoteなどのPKMツールが「思考を残すための道具」であると納得できるはずです。

RemNoteの拡張機能をインストールしてみよう

NotionやEvernoteなどといったサービス同様に、RemNoteにも外部から情報をとりこむために利用する「RemNote Clipper」といった名前のブラウザ拡張機能が存在します。しかしRemNoteのそれはウェブページをそのまま保存したりクリッピングしたりするのではなく、ウェブページを見て感じたこと、考えたことをメモするのに特化しているところが違います。

RemNote ClipperはChromeで動作する拡張機能で、Chromeウェブストアからインストールできます。インストールが完了したら、拡張機能のボタンを一度押してみて、RemNoteにログインしましょう。

RemNote Clipperを利用するには、リンクを保存したいウェブページで拡張機能のボタンを押すだけです。実は押すだけでもすでにリンクは保存されているのですが、ここで短くメモを追加してもいいでしょう。

すると、リンクはRemNote内に存在する「Links」という名前の特殊なページに自動的に保存されます。題名や、どのウェブサイトだったのかのソースを示したリンク、そして日付などの情報がすべて自動的に保存されるのです。

さらに面白いのは拡張機能ボタンを押した際に、⁠Continue Editing」のリンクをクリックした場合です。すると左パネルにRemNoteが、右パネルにウェブページが表示されて、記事を読みながら注釈を左側でまとめられるようになります。

気になった部分は選択して表示される「Hightlight」のボタンを使えばそのまま左側のRemNoteパネルへと挿入されます。この拡張機能を使えば単にブックマークを保存するだけではなく、必要に応じてウェブページから抜き書きをしながら考えを手軽にまとめられるのです。

ウェブページ注釈機能で思考を保存する

機能だけの解説をみているとEvernoteやNotionのクリッピングツールとRemNoteのそれの違いがわかりにくいと思いますので、実例をみてみましょう。

たとえばこの「OfficeにAIツールが組み込まれることで仕事が変わる」という題材の記事に興味が湧いたので読み始めたとします。

普通は記事を読んでからメモを残したりするかもしれませんが、RemNote Clipperの使い方としては、読み始めると同時に拡張機能のボタンを押してエディターモードに移行する使い方をします。

左側のRemNoteのパネルは自由に編集できますので、たとえば記事から引用した部分は「引用」の項目の下に、自分が感じた印象は「感想」の項目の下にぶらさげていきます。必要に応じて本文をハイライトして抜き書きをすれば、あとでRemNoteだけを見た場合にもメモが何を意味しているのかが明確でしょう。

私の場合、記事の要約のために箇条書きを数点使い、その要約の根拠となる部分をハイライトしておくようにしています。また、のちのち使いたくなる引用できる文章があったら、それもハイライトにして抜き出しておきます。引用の要件を満たすように、著者や媒体の名前、日付も記録しておいて、あとで利用するときに迷わないようにします。

こうして記事の情報だけをクリッピングするのではなく、記事を読んだ際に考えたこと、感じたことも含めて同時にメモをとり、RemNoteのなかに保存できるのがRemNote Clipperの利点です。

資料の上で思考できるPDF注釈ツール

RemNoteにはウェブページに対する注釈と同様に、PDFに対しても注釈やハイライトを行う機能があります。例えば膨大にあつめた研究論文や資料といったものがあったとして、この機能を使えばそれらを読んだときに浮かんだ考えや疑問をすべて一元管理できるようになります。

PDF注釈機能を使うには、ブラウザかデスクトップ版のアプリのどちらでもよいので、RemNoteの左下の「+ Create」ボタンを使ってPDFファイルのアップロードをおこないます。

アップロードが完了すると、ウェブページ注釈機能と同様にRemNoteが左側に、PDFが右側に表示され、読みながらメモをとることができます。ウェブページのときと同様に、資料を読みながら左側のRemNoteのアウトラインにメモをとっていきましょう。

PDFのテクストに対しては任意の場所でハイライトを入れられますし、四角の領域を選んでハイライトできます。色も選べますので、重要な箇所は赤、疑問点は青といったように目的に応じて使い分けられます。

PDFに関しては他にもいくつか強力な機能が用意されています。その1つ目が画鋲のアイコンで示されている「PDF Pin」です。これはPDFのハイライトした部分へのリンクをRemNote側に配置できますので、任意のメモからRemNote内に保存されているPDFの任意のハイライトを1クリックで呼び出せます。

ハイライト部分をそのまま引用してRemNoteにコピーすることもできます。引用された箇所はリンクとして機能していますので、クリックすれば引用元をチェックできる仕組みです。

最後に、PDF側でハイライトされた箇所に対する参照数、いわばPDFに対するバックリンクを確認することもできます。資料の重要な箇所が他のどんなメモから参照されているかを把握できるわけです。

たとえばたくさんの論文を読んでいる研究者のような人がこのPDF注釈機能を使ったとしましょう。研究をする際には一つ一つの論文を読んだメモを残すものですが、そのとき「論文から知った情報」「自分がそれに触発されて考えたアイデア」は厳密に分けなければいけません。RemNoteのPDF注釈機能を使えば、アウトライン上でそれらを別々の項目の下にまとめて、それぞれがPDFのどの場所を読んで考えた内容なのかを簡単に記述できます。また、この機能は複数のウェブサイトやPDFをまたいだ考えを編集していくのにも向いています。必要があれば資料を引用し、過去に考えたアイデアを参照して、新しい考えをまとめられるのです。

いかがでしょう。RemNoteのようなPKMツールが単に情報を格納する場所なのではなく、思考の過程そのものを保存する場所であるのが見えてきたのではないでしょうか?

学びを加速するフラッシュカード機能

思考だけではなく、RemNoteは記憶もサポートしてくれます。それがRemNoteが人気である理由の一つである「フラッシュカード機能」です。

フラッシュカードはRemNoteの任意の場所で作れます。たとえば次のように質問 >> 答えの形式で入力をおこなったとします。

すると、それを自動的に単語帳のようなクイズとして利用可能になります。

つくったフラッシュカードはドキュメント単位でいつでも呼び出せます。例えば勉強のメモをとっているときには、いつでも鎌倉幕府の成立年は >> 1185年といった形式で記述すれば読む際には情報として素直に読むことができ、試験前にそれをクイズにできるわけです。

フラッシュカードはこの一問一答の「ベーシックタイプ」⁠呼び出し記号は>>⁠)意外にも、対応する概念を表現する「コンセプトカード」⁠記号は::⁠、 穴埋めカードなどを形式に応じて使えます。また、鎌倉幕府の成立年は << 1185年と符号を逆にかけば逆方向の質問も設定できます。<>という記号を使えば両方をランダムに質問にできますので、⁠年号から出来事」⁠出来事から年号」を答える小テストを両方同時に作れます。

このフラッシュカード機能には、記憶の定着を支援するための機能も盛り込まれています。フラッシュカードを実行して解答が終わったら、答えをどれだけ記憶していたかの感触を申告し、たとえば「問題なく思い出せた」場合はしばらくその問題はスキップするものの、⁠ちょっと自信がない」場合には間を置かずに再度質問が表示されるといった制御ができます。すでに覚えている質問が表示される頻度を下げ、自信のない問題が表示される頻度を高めて、学習を効率的にするわけです。

時間が経つほどに記憶が薄れてしまうのを考慮にいれ、最初は次の日に、その次は4日後、10日後といったように、間隔を開けながら繰り返し試験をするためのアルゴリズムも設定できます。

RemNoteでメモをとっているときに、⁠ここは記憶したい」⁠ここは試験にでる」といった部分があるなら、それを書いている段階で自然な記述でクイズ形式にしておけば、あとでそれをフラッシュカード機能で実行するだけで記憶の定着を促せるのです。

PKMは思考と記憶を残すためのツール

前回紹介したバックリンク機能、そして今回紹介した注釈機能やフラッシュカード機能をみていると、次第にRemNoteのようなPKMツールと、Evernoteのようなアーカイブ性の高いツールの違いが見えてきます。両者は被っている部分もあるのですが、Evernoteが基本的に情報を手軽に保管する場所であるのに対して、バックリンクで思考をつなぎ、注釈によって情報に自分なりのコメントを残してゆく使い方をするPKMツールは、どちらかといえば「思考と記憶の支援ツール」の色付けが強いのです。

RemNoteや、それ以外のいかなるツールも、私たちのかわりに考えてくれるわけではありません。いま話題のChatGPTのようなAIツールでさえ、質問に対する最適な答えは導けますので答えの有用さにおいては貴重な道具ですが、⁠なぜそういう思考・結論・感想に至ったのか」について答えるのは専門外、あるいはお門違いになります。そうした思考や動機はツールをつかう私たちの側にあるものだからです。

大量の情報をウェブから集めることができる、あるいは与えられた質問に対してAIがすばやく答えを生成できる時代だからこそ、それを使う人間の思考の解像度が求められる時代になりつつあるともいえるのです。

さて、次回はRemNoteの基本機能をさらに便利に利用するためのテンプレート機能やプラグインなどについて紹介したいと思います。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧