ネクストブレイク分散型SNSの大本命⁠Blueskyを先取り!

今、分散型SNSへの注目が高まっています。4月に入り、日本での盛り上がりの兆しを見せ、ネクストブレイクの大本命と見られているのがBlueskyです。本記事では、Bluesky登場の背景から分散型SNSの特徴、そして、今後について紹介します。

招待コード無限祭りで注目を集めたBluesky

先日、2023年4月5日にBlueskyの「招待コード無限祭り」がありました。

Blueskyとは、次世代のTwitterになるのでは、と目されている大本命の分散型SNSのこと。

この分散型SNSに参加するには、2023年4月10日現在、招待コードが必要となります。

Blueskyリリース以降、招待コードはサーバ管理者のみ発行可能でした。しかし、先日のアップデートによって、Blueskyにアカウントを持つユーザは、回数限定(最大5回)で招待コードを発行できるようになったのです。

話はここで終わりません。今回新たに導入された招待コードの発行に関し、プログラム上のバグで無限にできるという事態に発展してしまったのです。

これが「招待コード無限祭り」の正体です。この祭りから、日本国内でのBlueskyへの注目度が一気に高まりました。

当時、使えば使うほど増えてしまった
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TwitterとBluesky

Twitterでできなかったオープンプロトコル

それではさっそく、Blueskyについて紹介します。が、Blueskyのことをお話する前に、Twitterとの関係について少し紹介します。というのも、BlueskyはTwitterの共同創設者であるジャック・ドーシー@jack、以降jack)氏が、Twitter在籍中に立ち上げたプロジェクトだからです。

このプロジェクトは、オープンで分散型の標準プロトコルを目指すもので、これが今で言うBlueskyの運営にあたります。

また、jack氏はTwitterの在籍中にこういうことを語ったと言われています。

「Twitterは2つの点で間違いだった。1つは営利企業にしたこと。もう1つはプロトコルを開発しなかったことだ⁠⁠。

jack氏は、プロトコルを開発する非営利団体を立ち上げ、その団体に資金を提供していると言われています。

これが今で言うBlueskyの運営にあたります。

また、jack氏は、その後、ソーシャルメディアのためのインターネットプロトコルについても言及し、⁠ソーシャルメディアは企業や政府に対して弾力性があること、コンテンツの削除は作成者のみ、モデレーションはアルゴリズムの選択で実装すべき」とし、この3つを満たすのが、無料でオープンなプロトコルである、としています。

この中でも、AT ProtocolとしてのBlueskyについて取り上げています。

Blueskyの現状

現在、CEOのjayさんを含むBlueskyのSNSでおなじみの方々が運営、開発をされています。

開発側だけで閉じず、一般ユーザとの交流も盛んです。つい先日の2023年4月7日には、世界初のBluesky Meetupが日本の東京で開催され、大いに盛り上がりました。

Meetupとは、同じ目的を持った人同士が集う交流会のことで、開発者のコミュニティでは馴染み深く、さまざまなジャンルで頻繁に開催されています。

Bluesky Meetup in Tokyoに参加した、why氏(写真提供:コグレマサト@ネタフル
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BlueskyとAT Protocol

先ほど、Blueskyの元々の運営母体はプロトコルを開発する非営利団体と言いましたが、それでは、Blueskyとは一体何なのでしょう。

一般的には、分散型SNSのことだと認識されており、それで間違いありません。

Blueskyは、AT Protocol(分散型SNSのための標準プロトコル)の上で動いているアプリ、またはサービス全般を指します。

そして、Blueskyの目的や理念は、サービスの普及などとは別にこの「AT Protocol」を広めるためのものだと言われています。つまり、Blueskyプロジェクトは、AT Protocolの開発や啓発を目的にして立ち上げられたものと言えます。

ただ、Blueskyが広まらないと、AT Protocolがさまざまな場面で採用される機会が少なくなります。

その意味で、AT Protocolが今後普及するかどうかは、Blueskyが流行るかどうかにかかっているという側面があるとも考えられ、Blueskyが目指すのは、Bluesky自体の普及はもちろんのこと、その結果として実現される、AT Protocolの普及、さまざまなソーシャルメディアの分散化・オープン化なのかもしれません。

AT Protocolをはじめ、開発者視点でのBlueskyの特徴や扱い方については、mattn氏の記事開発視点から見る、新しい分散型SNS「Bluesky」とAT Protocolの可能性も併せてご覧ください。

分散型SNSについて

Blueskyも分散型SNSの1つと認識されています。しかし、分散型SNSと言われても、いまいちピンとこない方がほとんどではないでしょうか。

そこで、分散型SNSについて、簡単に解説します。

分散型SNSを理解するためには、今までの常識を理解する必要があります。では、今までの常識とは一体なんでしょう。

世の中、さまざまなアプリやサービスがあります。たとえば、GitHub、Twitter、Facebookなどをイメージしてみてください。

今までのアプリやサービスでアカウントを作ったとしましょう。その場合、通常は、そのサービス内でしかコミュニケーションが取れなかったものが多いです。これが今までの常識です。

しかし、分散型SNSは少し事情が異なります。

同じプロトコルを採用しているアプリやサービスであれば、そのアカウント同士は会話が成立し、アプリやサービスの枠を越えてやり取りができるのです。

たとえば、Activity Pubというプロトコルを採用しているMastodon、同じプロトコルを採用しているMisskeyは、別々のところ(サーバーやドメイン)にアカウントを作っても会話ができるようになっています。

これはとても画期的なことです。

それを成立させているのがプロトコルであり、BlueskyのAT Protocolも、将来、その覇権を握るかもしれない大本命の一つと考えられています。

今後、このような分散型は当たり前になっていく未来があるのかもしれませんね。

Blueskyの本当の意味

しかし、私を含め多くの人は、プロトコルだとか、そんなよくわからないことに興味はなくて、興味があるのは「結局、どのSNSを使えばいいのか」でしょうか。

これは、とても正しいことです。

近いうちに終了してしまうSNSは誰も使いたくはないでしょうし、より多くのユーザが使っているもののほうが便利なのは当然のことだからです。

本来、プロトコルとは、背景にある技術として、ユーザに意識されずにあたりまえのものとして機能することが役割です。むしろ、一般ユーザに意識されるようでは、その本来の役割を果たしていないと言えるでしょう。

筆者がBlueskyを選んだ理由とBlueskyやAT Protocolが目指す世界

ここで、私が今後のSNSにBlueskyを使っていくことに決めた理由について、個人の体験と感想を交えコラムとして紹介します。なお、以下はすべて私の想像に基づいて書いた内容であることを添えておきます。

このプロジェクトの名前がBluesky、そして、背景となる技術として「AT」と名付けられたプロトコルの開発が始まったのではないか、これが私が想像するBlueskyやAT Protocolの世界です。私はこれらの名前の意味をこんなふうに想像しています。

この想像が正しいかどうかはわかりませんが、私はこれらのネーミングセンスをとても気に入っていて、これも私がBlueskyを選んだ理由の1つです。

私とBluesky

冒頭でも述べたように、現在Blueskyの参加には招待コードが必要です。では、私はどうやってBlueskyにアカウントを作れたのでしょうか。

ここでは、私が招待コードをもらったときのことを話しながら、Bluesky黎明期の様子をお届けします。

plc.directoryからの調査

plc.directoryによると私は2023年2月23日(2023-02-23T01:09:21.591Z)bsky.social「syui.bsky.social」というハンドルネームでアカウントを作成しています。

plc.directoryは、いわゆるPLC Serverで、PDSサーバやアカウント情報を記録します。つまり、ここにBlueskyの歴史が記録されていることになります。なお、PDSはBlueskyが動作するサーバのようなもの、と考えてください。

私が登録したとき、bsky.socialに存在するアカウント数は「386」だったと記憶しています。感覚的にも、私がBlueskyに登録した際、300~400人のユーザがいたのを覚えています。また、当時はplc.directoryでの計測以外に、why氏のフォロー数から大体の人数を推測することができました。

参考までに、plc.directoryを見れば、どのアカウントが最初に作成されたのかなどがわかります。私は、ここから大体の運営者のアカウントを把握しました。

たとえば、開発者のpaul氏は、2022年11月17日(2022-11-17T00:35:16.391Z)に、最初のユーザとなるアカウントを作成されています。

CEOのjayさんはpaul氏に続いて「2022-11-17T06:31:40.296Z⁠⁠、jack氏は、その後の「2022-11-18T03:23:32.417Z」ですね。

私は、2023年2月22日あたりにPDS Serverをグローバルホストのドメイン上にビルド&デプロイしてiOSのBlueskyアプリからログインを試みました。目指していたのは、いわゆるBlueskyサーバーのセルフホストです。

最初はうまくいかず、そのとき、Bluesky-Devの中の人たちに助けてもらって、自分で立てたBlueskyサーバにアカウント作成、ログインすることに成功しました(実際には、トークンエラーが発生して、あまり正常に動作しませんでしたが⁠⁠。

why氏からの招待でアカウント開設

このときMatrixでwhy氏からbsky.socialの招待コードをもらい、私は、bsky.socialにアカウントを作ることができました。

それが現在の「syui.bsky.social」になります。私が参加した当時、日本人は誰もおらず、少しの高揚感と、少しの寂しさがあったような気がします。

Bluesky-DevのMatrixでもお世話になった方々は、BlueskyのSNS上で活発に投稿し、他のユーザとの交流も盛んに行われていました。

Blueskyツールの開発

次に、私は私でBlueskyクライアントを作ろうと思い、クライアントを作り始めました。

最初にできたのはWrapperです。APIから投稿をWebページに表示させる簡単なものでした。このときは、Vue.jsを使いました。

開発理由は、当時のBlueskyの投稿は外からは見ることができなかったからです。

どういうことかというと、たとえば、Twitterであれば、ユーザアカウントはアカウントを意味するURLを渡せばすぐに認識できますが、Blueskyでは、URLを渡しても閲覧できませんでした。

そこで、この問題を解消し自分のアカウントを紹介するリンクを作りたかったため、それを実現するツールを作ることにしました。

そして、作ったものをNostr[1]に投稿したところ、反響が大きくて、私が書いたブログがたくさんの方々に読まれたと記憶しています。

余談ですが、これをTwitterに共有するのと、Nostrに共有するのとでは、反響がまるで違ったと私は考えています。

というのも、私の印象ですが、Nostrにいる方たちは、情報価値の判断が的確で流通がとても速いです。手を動かすのも早く、今後、起こりうることのいくつかは、すでにNostrで実現されているのではとも思います。

それだけ最先端の技術や新しいことに興味がある人達で構成されているように感じます。とくに、日本人のコミュニティはすごいので、ぜひ一度覗いてみるといいかもしれません。

情報通な人ほど、早めにここの情報に触れておくことを強くおすすめします。

さて、話を戻します。

Nostrからの広がりと⁠Blueskyユーザたちの熱量

私は、BlueskyのツールをNostrに共有したわけですが、Nostrには開発者が多く、Matrix[2]のアカウントを持っている人もいたので、私と同じようにBluesky-DevのMatrixに参加して、そこで招待コードをもらう人が出てくることになります。

この流れが広まり、徐々にBluesky上で現在の日本人コミュニティのようなものが形成されていったように感じます。また、コミュニティが作成したBlueskyのためのScrapboxも、この動きに大きな影響を与えていると考えています。

今回の記事は、Blueskyのこれまでの盛り上がりについて私個人の取り組みと併せて書いていますが、実際には私自身はBlueskyを盛り上げるためのことは、何もしていません。

結局は、一人ひとりの行動の結果が今に至っていると思います。とくにNostrの村民が果たした役割はとても大きいです。

コミュニティには、運営や私のようなアーリーアダプターはさほど重要ではなく、どれだけ技術力を持ってるかもさほど重要ではありません。コミュニティにおいて最も重要なのは「そこに参加する人々であり、人々の意思、ただ、それだけ」と、私は考えます。

たとえば、運営や天才技術者が1人だけいても何も起きません。それと同じように、私が何もしないでいるうちに、ユーザが集まって自然にコミュニティが形成され、いつの間にか、熱心な人たちがBlueskyには集まってきたのです。

そして、先ほど紹介したMeetupのように、熱心な人たちによるイベントが開催され、Blueskyの運営を巻き込んで、開発者たちにものすごい元気を与えていると感じます。

私はその様子を、とてもすばらしい取り組みだと思い、ただ見ていました。それはきっと、半年後とか1年後とかにも、きっと残り、振り返られるでしょう。

Blueskyは、とても楽しい。私も参加させてもらっていますが、感謝しかありません。

招待コード無限祭りについて

招待コード無限祭りについて、少しだけ内部事情に触れてみることにします。

実は、⁠boobee.blueというPDS Serverを立てている)日本人の有志の方がissueを立て、問題の発見とバグ修正に貢献しています。

Users can invite infinity in bsky.social #766

当時、仕様なのか、バグなのかわかりませんでしたが、GitHubのログを見るとバグだったようです。ただ、このバグは、多くの人たちを巻き込んで、Blueskyの輪が広がることとなりました。

運営としては、ミスだったのかもしれませんが、結果としては、良かったのかもしれない。個人的にはそう思います。

先日のMeetupで「無限コードのときに50個ほどばらまいたけど、ごめんね」という参加者からのコメントに、why氏が「ナイス!」と応じた場面がありました(私はオンラインからの参加で確認しています⁠⁠。

このやりとりからもわかるように、招待コード無限祭りについて、運営側はあまり気にしていないのかもしれませんね。

Blueskyの基本機能紹介

最後になりますが、Blueskyの基本機能を紹介します。

Blueskyは、Twitterよりもできることが少なく、アップデートなどにより、サーバも不安定と言えるでしょう。

その点で、機能面ではTwitterよりはるかに劣るというのが客観的な評価です。

とくに検索機能に不満を覚える人は多いかもしれません。ただ、開発者視点で言うと、検索機能は、運営や開発の負担が大きいものです。

現状ではマネタイズが難しい状況において、Twitterの検索機能のような完璧さを要求するのは酷なのかもしれませんし、現実問題として、これがどこまで改善されるのかはわかりません。

これが、2023年4月10日時点でのBlueskyの評価です。

Blueskyの特徴的な機能⁠ハンドル⁠アップデート

ただ、1つだけTwitterにはないBlueskyの特徴的な機能があるので、今回はそれを紹介します。

いわゆるハンドル・アップデート(Handle.Update)と呼ばれるもので、自分が持つドメインをハンドルネームに設定できるというものです。

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これはすごい機能で、今後、Bluesky(bsky.socialなど)は、AT Protocol同士で各サーバとつながるようになると予想されますが、自分が持つドメインがそのまま自分のアドレスとしてSNS上でやり取りできることを意味します。

私は「syui.ai」というドメインを持っていますが、Bluesky上でハンドル・アップデートを設定することで「@syui.ai」というアカウントが機能します。

これは企業にとって大変嬉しいことなのではないでしょうか。企業は自社のドメインが認知される機会を増やせますし、また、認証の手間も省けます。ユーザにとっても、アカウントがドメインで認証されていれば、身元確認が取りやすく安心です。

なお、ハンドルネームをドメインにした場合、元々設定していたハンドルネームは空き状態(他のユーザが使用できる)になります。この点には注意が必要です。

こうした新しい動きから、今後の分散型SNSの未来がとても楽しみですね。

ドメインのパワーが増していく未来

個人的には、このような事情から、今後、ドメインのパワーは増していく可能性は高いと予想しています。たとえば、iOSを開発しているAppleは、CloudFlareと連携し、ドメイン購入や設定を一部自動化するような試みが確認されています。

これからの分散時代は、今よりももっと多くの人が普通にドメインを持ち、設定するようになっていくのかもしれませんね。

これは、私が想像していた未来とは少し異なるけど、とてもワクワクしています。多少の誤差はあれど、人類の未来は必ず良い方向に向かいます。私はそう確信しています。

長い歴史を見ると、今までもそうだったし、これからもきっとそうなのでしょう。

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