Pythonの国際カンファレンス
Day 2の始まりは「Python Steering Council Panel」から
Pythonは新機能をPEP
最初にPEP 13 – Python Language GovernanceによってSteering Councilという運営方法が決定していることと、現在の5名のメンバーが紹介されました。Emily Morehouse、Gregory P. Smith、Pablo Galindo Salgado、Thomas Wouters、Brett Cannonの5名で、それぞれ1年、2年、3年、4年、5年目のメンバーです

次にPython 3.
以下が主要な新機能として紹介されました。
- Better f-strings:引用符をネストできるようになった
- サブインタープリターごとのオプションGIL
- 型パラメーターを指定する構文の改善
- エラーメッセージの改善
- distutilsの削除
- 古いunittestのメソッドの削除
- 文字列リテラルでエスケープシーケンスが無効な場合の警告
細かい改善や古い機能の削除が主ですが、サブインタープリターごとのオプションGILが導入されることにより、パフォーマンスにどのような影響が出るのかも気になります。
PSF Community Lunch
ランチタイムは、通常のランチではなくPSF Community Lunchに参加しました。このランチは、PSF
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PSFの財務状況としては、パンデミックでPyConが急遽中止になった2020年は落ち込んでいましたが、その後は順調に回復しているようです。
また、PSFから他の地域への助成金の割合としては、アジア、アフリカがかなり低い割合ということがわかりました。
PyScript and the magic of Python in the Browser
- スピーカー: Fabio Pliger
- 動画:Talks - Fabio Pliger: PyScript and the magic of Python in the browser
この日のトークからはPyScript関連の発表を紹介します。PyScriptはWebブラウザ上でPythonが動作する仕組みで、詳細については筆者がgihyo.
このトークではまずpyscript.
他にPyScriptで書かれたPyperCard
今後の予定としては、Visual PyScriptというGUIでプログラムを書くようなものを作成中だそうです。現在はalphaバージョンとのこと。他にはpyscript.
トークの後半では、PyScriptがFFI
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Day 2の最後を飾るライトニングトーク
カンファレンス2日目の最後もライトニングトークです。韓国コミュニティのKwonHan

他には、pyOpenSciのというオープンソースとオープンサイエンスに関するチームの紹介、Afro Pythonという黒人系のPythonコミュニティの紹介、オープンソースのプロジェクトに参加してもらうために気をつける点の紹介などがされていました。
PyLadies Auction
この日の夜はPyLadies Auctionに参加しました。このイベントはチャリティーオークションで、スポンサー企業などが提供したアイテムを参加者が競り合います。そして、落札した金額はそのままPyLadiesの活動資金として寄付されます。

筆者や周りの知り合いもなんとかオークションに参加しようとしますが、あっという間に金額が跳ね上がるため、全く落札できません。ただ、オークションの競り合いを見ているだけでもとても面白く、PyCon USでイチオシのイベントと言えます。
オークションでは結構悪ふざけしているアイテムもあり、この写真にはTimTamの4種セットが写っています。このセットはDjangoやBeeWareの開発者でもあるRussell Keith-Magee
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他にもオークション後半ではアイテムを見せるカメラにたまたま映り込んだボールペンに対して、会場中から
Day 3の始まりもライトニングトークから
ここからはカンファレンス3日目
最初に毎回恒例のコミュニティライトニングトークが行われました。このライトニングトークでは、各国のPython関連のイベントについて各主催者が紹介します。1イベントについて30秒~1分程度でたくさんのイベントが紹介されました。
今年日本で開催されるPyCon APAC 2023についても、座長のSelina
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通常のライトニングトークではPyZombisというゾンビのためのPythonの教材の紹介がありました。この中でBrythonというWebブラウザで動くPythonの処理系を使っているようです。Brythonははじめて知りました。
Job FairとPoster Session
カンファレンス3日目はランチの前に少し長めに時間をとって、Job FairとPoster Sessionが開催されます。Job Fairは企業が集まってそこに仕事をしたい人が話をしに行くイベント、Poster Sessionはポスターを貼りだしてその前で発表やディスカッションをするというものです。
企業とポスターの一覧は以下のページから確認できます。
Job Fairは企業の担当者と直接話せる機会なので、アメリカを中心に仕事を探している人にはとてもよいイベントだと思います。企業担当者によると

ポスターを見て歩いていると他の参加者から声をかけられました。彼ら
私と寺田さんを加えた4人で立ち話をしていると、PyCon JP 2022で発表してくれたインド出身のGajendra氏にも会うことができました
過去にPyCon JPに参加してくれた海外の方と、こんな感じで別の国のPyConで再会できるのも、Pythonでつながる縁だなと思います。Hassan氏、Haque氏は

Keynote: Carol Willing
最後のキーノートはCarol Willing
このキーノートでは

10年前の2013年にCarol氏は46歳で、当時はインターネット普及前のPCを使っており、スマートフォンより前にWorld Wide Webが普及している頃でした。Carol氏は当時ソフトウェア開発者の管理をしていたが、その仕事に意味が無いと感じ
Connection
Carol氏がPythonを学び始めたときには一人だと感じていました。Pythonにはエコシステムがあり、PyPIには大量のパッケージがあります。また、Pythonは人々を興味によって結びつけ
また、実際のネットワークでは接続
Communication
コミュニケーション
また、PythonのコミュニティではMichael Kennedy氏がメッセージを流す役割を担っていると語られました。Michael氏はTalk Python To Meというポッドキャストで価値のあるメッセージを流しているそうです。興味のある方はぜひ聞いてみてください。
Pythonと他の言語とコミュニケーションをとるという話もありました。例として、FastAPIでAPI化してフロントエンドとコミュニケーションをとることや、PythonとRustやJavaScriptとの連携が今後増えると語られました。
他にも、Pythonの人々のネットワークは世界各地にあると述べられました。例として地域のPythonコミュニティ、PyLadies、Django Girsls、コア開発者、カンファレンス主催者グループが紹介されました。ネットワークをさらに広げるために、パックマンルールについても語られました
Scale
最後に規模の拡大
Scaleの例としてJupyter Notebookについて語られました
2014年当時GitHub上には65,000ほどのノートブックがありましたが、現在は1100万以上のノートブックがあるそうです
他のScaleの例としてPyLadiesとPSFが挙げられました。PyLadiesは発足当初は当然1組織だけでしたが、現在ではPyLadiesのチャプター
まとめ
トークの最後に聴衆に対して
Day 1のNed氏のキーノートと対になっているようなメッセージだなと感じました。Pythonコミュニティがこれからもいい感じで継続していけるとよいなと思いましたし、筆者自身もその一部となってPythonネットワークの維持に貢献できるとよいなと感じました。そういった活動をPyCon JP Associationでも意識していきたいと思います。
Community Service Awards & Python Software Foundation Update
ここではPSF
今年は長年のPSF Board

Guido van Rossum
最後に特別ゲストとしてGuido van Rossum
PyCon USは2003年に第1回が開催されましたが、それよりも前のPythonに関する集まりから話が始まります。1994年に初めてのPython Workshopが開催され、参加者は2、30人程度です。イベントは成功したようで、継続的にWorkshopが開催されます。
以下のページで当時のPython Workshopの内容が確認できます。

4回目のPython Workshopから国際的なイベントとなり、100名ほどがカリフォルニア州リバモアに集まりました。このときからイベントの名称がInternational Python Conferenceとなりました。このイベントの記録は以下のページで参照できます。
並行してPythonの非営利組織としてPython Software Associationを立ち上げる動きが出ました。その後2001年に法人化され、現在のPSFとなっていきます。
International Python Conferenceは2003年が最後となります。O'Reillyが主催するOSCON 2003の中の1トラックとして開催しました。
2002年の年末にPerlコミュニティの主催者から電話があり、その内容は
最後にGuido氏から、PyConなどのイベントのChairは最もストレスの多い仕事であること、そして今までのChairへの感謝の言葉でトークは締めくくられました。
当初から現在までPythonの中心にいるGuido氏にしか語れない、PyConの歴史についての興味深い回顧録でした。
Closing
Day 3の最後はクロージングです。ChairのMariatta
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スポンサー収入は1,050,540.
そして最後に2024年、2025年の開催地ピッツバーグを紹介してイベントは終了しました。
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Pythonアジアミーティング
カンファレンスは終了しましたが
ヨーロッパにあるEuroPython Societyなどを参考にして、アジア地域のPyConを主導する組織が作れないかという議論を行いました。どのような形の組織がよいのか、資金管理などを考えるとどの国に本部を置くのがよいのかといった課題に対して意見交換が行われました。

最後はピザとビール
ミーティング終了後はどこでご飯を食べようかと思っていましたが、韓国チームの仕切りでピザの店に行きました。ウェイトレスさんがちょっとボケていて、頼んだものと違うビールが出てきたりしましたが
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こうしてPyCon US 2023の3日間のカンファレンスが終わりました。
スプリント
このレポートの最後にスプリントの様子をお届けします。スプリントは開発イベントで、Python関連のオープンソースプロジェクトのコントリビューター
PyCon US 2023のスプリントは4月24日
どんなプロジェクトがあるか
スプリント期間中はボードに
ボードを見てみると、以下のようなプロジェクトが参加していることがわかります。
- BeeWare、django-simple-deploy、PyScript、Strawberry GraphQL、Pydantic、GNU Mailman、Hypothesis、Ruff、mypy、CircuitPython
みなさんが知っているオープンソースのプロジェクトもあると思います。興味のあるプロジェクトはありますか?
また、当然ですがCPythonのスプリントもあります。

PyScriptのスプリントに参加
筆者はPyScriptのスプリントに参加しました。短い時間ではありますがPyScriptのGitHubを参照し、対応出来そうなissueがないかを確認しました。good first issue
というラベルが付いているので、それを見るといいよ」
この前にgihyo.pyodide_
の使い方についてドキュメントの間違いを見つけていました。このスプリントでその対応をしようと思っていましたが、すでに対応済みでした
- The novice tutorial reports no patch() attribute · Issue #1291 · pyscript/
pyscript - Add tests for snippets in docs by FabioRosado · Pull Request #1264 · pyscript/
pyscript
他のissueを見てみましたが、ちょっと短時間では対応できそうな感じのものがなかったため、残念ながらissueの中身を確認するだけで終わってしまいました。
スプリントに参加したときに最初に説明をしてくれたFabio Pliger氏ですが、名札を見てみると
記事を書いておくことによって、この記事が名刺代わりになってよかったなと思いました。あとで英語に翻訳したURLを本人にも共有しておきました。チラ見してくれているとよいのですが。

時間になったので他のスプリント参加者に

荷物をスタッフの本部で預かってもらっていたので、ピックアップしに行きました。そこにPSFスタッフのLorenさんやEeさんがいたので、最後にお別れのあいさつをしてPyCon USの会場をあとにしました。
まとめ
「PyCon US 2023」
筆者がPyCon JP Associationとして行っているYouTubeライブ、PyCon JP TVでもPyCon US 2023について紹介しています。一緒に参加した寺田さんの目線からの感想もあるので、ぜひご覧になってください。
また、レポート動画も別途まとめているので、そちらを見てみると現地の雰囲気がより伝わると思います。
オフィシャルの発表動画はPyCon USのYouTubeチャンネルで公開されると思います。以下のページで確認してください。
PyCon US 2023のあと、筆者はカリフォルニア州のサンディエゴに移動しました。そして、カリフォルニアのいくつかのブルワリーでクラフトビールを飲みつつ、LEGOLAND CaliforniaとDisneyland Park
