32ビット(IA32)をいつまでorどこまでサポートするか ――ここ数年、多くのLinuxディストリビュータやカーネル開発者がこの問題に頭を悩ませてきた。実際、ほとんどのディストリビュータが「i386のISOイメージが必要とされることはほとんどない」という認識で一致しているものの、現実には組込み業界など32ビットシステムを継続的に使用しているケースは少なくない。ハードウェアは64ビット、カーネルも64ビットだが、アプリケーションは32ビットを利用し続けているというユーザも存在するため、ベンダにとって32ビットサポートの完全終了を宣言することはなかなか難しい。どの世界でもレガシーとの決別はそう簡単にはいかないのである。
SUSEもまた、32ビットのサポートに苦労しているディストリビュータである。同社のエンジニアであるNikolay Borisovは6月7日、カーネルレベルでこの問題を解決すべく、Linuxカーネル開発メーリングリスト「LKML」にパッチセットを投稿、現在、レビュー中となっている。
Borisovは「SUSEではIA32互換レイヤを無効にしたいと考えている。だが32ビットがまだ使われている環境があることも考慮しなければならない」として、これを実現する最初のアプローチとして32ビットプロセスを無効化する起動時パラメータ「ia32_disabled」の導入を提案している。このパラメータが存在する場合、64ビットカーネル上でも32ビットシステムコールを無効化できるが、起動時のオプションとして設定されるため、32ビットのソフトウェアに対応することも可能だ。
Borisovは「将来的には、起動時のパラメータでIA32を無効化するのではなく、理想的には新しいKconfigオプションを導入し、ディストリビューションではia32_disabledをデフォルトで設定して、アップストリームは現在の動作を維持するのが良いと思っている。だが最初のアプローチとして今回の提案がおかしなものではないことを確認しておきたい」とコメントしている。カーネルレベルでの“ia32_disabled”に向けた、ディストリビュータからの提案としても注目される。