GitHubは7月20日(米国時間) 、同社が提供するエンタープライズ向けサブスクリプションサービス「GitHub Copilot for Business」のアップデートとして、統合開発環境(IDE)でコーディングを行う開発者を会話形式の自然言語でサポートする「GitHub Copilot Chat」の限定パブリックベータをリリースしました。GitHubプロダクト担当バイスプレジデント マリオ・ロドリゲス(Mario Rodriguez)氏はアナウンスにおいて「自然言語がコーディングにパワーを与える、Copilot Chatはそんな新しい時代の扉を大きく開く存在になると我々は信じている」とコメントしており、Copilot Chatが開発者やチームの生産性を大幅に向上させることを強調しています。
Copilot ChatはGitHubがテクニカルレビューとして3月に発表したCopilot向けの機能強化「GitHub Copilot X」のひとつで、OpenAIの大規模言語モデル「GPT-4」がコーディング支援に組み込まれていることが最大の特徴です。これまでCopilot Chatの利用を希望するユーザはウェイティングリストに登録し、GitHubから承認されるのを待つ必要がありましたが、今回の限定パブリックベータの公開により、GitHub Copilot for Businessのユーザであれば誰でも利用が可能になっています(管理者による簡単な設定と利用条件への同意が必要) 。
“開発者はより長い時間をIDEの中だけで過ごせるようになる”
今回のパブリックベータでCopilot Chatが利用できるIDEはVS CodeおよびVisual Studioです。おもな特徴は以下となっています。
パーソナライズされた支援 … 開発者に対してコンテキスト固有のサポートを提供、エンジニアがコーデング中にスタックしがちなコードスニペットや、プログラミングコンセプトへの理解が不足している部分を支援
リアルタイムガイダンス … 特定のコーディング課題にひもづいたベストプラクティス、ヒント、ソリューションなどをリアルタイムで提案
セキュリティ問題の修正 … コーディング中に修復の提案を行い、セキュリティスキャン中に見つかる脆弱性の数を削減
コード分析 … コードブロックが行うべきことを提案、複雑な概念を分解してコードスニペットを説明
簡単なトラブルシューティング … 問題を特定するだけでなく、その問題の説明、解決の提案、代替アプローチなどを提供
開発者がハイライト表示したコード(pointlight(255, 255, 255, 80, -100, 100);
)について質問、Copilot Chatが回答しているところ
表示したコードスニペットをコールバック関数のかわりにawait()を使って書き直してほしいという依頼にCopilot Chatが修正して表示
これらを見ればわかるように、Copilot Chatはコーディングにおける” コンテキスト” を重視しており、リアルタイムな会話形式のインタフェースで適切な解にナビゲートできるようになっています。Stack Overflowが開発者に対して行った調査 では「開発者の63%が1日のうち30分から2時間ものあいだ、コーディングにおける解答とソリューションを探すのに費やしている」という結果が出ていますが、開発者自身が” 正解さがし” で無駄な時間を費やすのではなく、IDEに組み込まれたAIがその場で解を示すことができれば、開発者の生産性は大きく向上するというのがCopilot Chatの狙いです。ロドリゲス氏は「( Copilot Chatにより)開発者はより長い時間をIDEの中だけで過ごせるようになる」とコメントしており、コーディングで問題が生じたときもその解決とガイダンスをフローの一環として組み込んでいるとしています。
ロドリゲス氏は「今回のリリースは、開発者が生成AIのパワーによって経験する経済性/生産性の向上の始まりに過ぎない」ともコメントしており、今後も生成AIによって強化されたCopilot Xの新機能をリリースしていくことを明らかにしています。「 Copilot Xにより、すべての開発者の生産性が10倍向上すると信じている。つまり今まで10日かかっていた作業が1日で終わり、10時間の仕事が1時間で終わるようになるということだ。作業時間は10分、コマンドプロンプト1つで完了となるだろう。これにより開発者は真の自己表現を強化できるようになり、新しい世代の開発者は” 考えるスピード” で学んでビルドするようになるだろう」というロドリゲス氏の言葉が実現するのなら、これからの開発者は” 真の自己表現” により注力する必要があるのかもしれません。