JJUG×gihyo.jp特別企画

JJUG CCC 2023 Spring レポート ――初となるオンライン⁠オフラインのハイブリッド開催

こんにちは。まーや@maaya8585です。2023年6月に再開されたJJUG CCC 2023 Springというカンファレンスイベントに参加してきたので、レポートします。

JJUG CCC 2023 Springとは

JJUG CCCは日本Javaユーザーグループ(以降JJUG)が主催の、毎年春と秋の2回開催されるJavaユーザ向けコミュニティカンファレンスです。⁠CCC」はCross Community Conferenceの略で、その名の通りJavaだけではなく関連する他言語やツールをテーマにしたセッションなども見ることができるイベントです。

2019年までは会場開催、2020年からはオンライン開催でしたが、今回のJJUG CCC 2023 Springは会場開催とオンライン配信のハイブリッド開催でした。

JJUG CCC 2023 Spring イベント概要

JJUG CCC 2023 Spring 公式サイト https://eventregist.com/e/luIcqEmpqPI2
開催日 2023年6月4日
会場 野村コンファレンスプラザ新宿
参加費 無料
主催 日本Javaユーザーグループ (JJUG)
主催グループ公式サイト https://www.java-users.jp/
Twitterハッシュタグ #JJUG_CCC

ハイブリッド開催について

すべてのセッションはカンファレンス会場で聞くことができ、オンラインから視聴することも可能です。スピーカの皆さんの登壇についても、さまざまなタイプがありました。

  • カンファレンス会場でLive登壇・質疑応答
  • 事前に録画しておいたビデオを流す+質疑応答もオンラインから
  • 事前に録画しておいたビデオを流す+質疑応答はカンファレンス会場で

質疑応答については、カンファレンス会場の参加者を中心に行われました。

カンファレンス会場にはスポンサーブースエリアも用意され、各スポンサー企業さんが用意したゲームなどにたくさんの参加者の方が挑んでいました。

スポンサーLTもありました

JJUG総会

JJUG CCCでは、JJUGの1年間の活動報告を行っています。これを「JJUG総会」として毎年春のJJUG CCCの朝一番のセッション枠で報告しています。

内容としては、前年度の活動報告や収支報告、幹事メンバーの新任・退任決議、今年度の活動計画提示などです。Javaの技術的なセッションではないものの、どういう人たちが運営しているコミュニティなのか、1回のカンファレンスにどのくらいお金がかかっているのかなど知ることができるおもしろい機会です。

今年は諸事情によりリーダーではなくサブリーダーによる登壇でした

アンカンファレンス

カンファレンス会場に入ってすぐのエリアでは11時からアンカンファレンスが行われました。会場オープンから10時30分くらいまでの間に参加者から話したい・聞きたいテーマを募集し、投票してもらいます。そのあと、採択されたテーマについて1時間ずつ自由に議論します。

JJUG CCCは、基本的に登壇者が話し、参加者は聴くだけのスタイルをとっています。登壇者へ質問をすれば気になったことについて対話することも可能ですが、どうしても登壇者と1:1のコミュニケーションになってしまいます。

そんな中、唯一複数人で対話をしながら情報交換することができるのがアンカンファレンスです。技術カンファレンスに参加すると情報のインプットばかりになってしまいがちですが、アンカンファレンスで意見のアウトプットし、考えを整理する良い機会にもなります。

今年のアンカンファレンス会場では、Javaのバージョンや設計などのテクニカルなテーマもあれば、リモートワークやイベント運営など技術から少し離れたテーマもありました。

今年のアンカンファレンススケジュール

私も15時からの「AIとJava⁠⁠、18時15分からの「JJUG CCCはオンライン開催がよいかオフライン開催がよいか」の2つのアンカンファレンスに参加しました。

AIとJava

今後AI技術とエンジニアはどう向き合っていけば良いのか、どんな形に仕事が変わっていくのかを中心に議論しました。この手の話になると話題が「エンジニアの仕事なくなってしまうのでは?」といった悲観的な話が長く続くことも多いのですが、⁠しばらくなくなることはない」ということを前提に、⁠どうアプリに組み込んでいくべきか」⁠どういった思想で設計していくべきなのか」などAIを使ったアプリケーションの全体像の話に花が咲いていたあたり、JJUGらしいなぁと感じました。

JJUG CCCはオンライン開催がよいかオフライン開催がよいか

ここ最近コミュニティ運営に携わる人々の間でよく上がる話題の1つなのではないでしょうか。イベントをオンラインでやるべきかオフラインでやるべきか。

オンライン開催は手軽に参加できるため、日本のみならず海外在住の方を含め遠方の参加者にアプローチしやすい一方、参加者の反応が見えづらく、運営やスピーカのモチベーションは下がりがち。オフライン開催は参加者の反応やフィードバックをリアルタイムに受け取れることや何気ない雑談から得られる知見がある一方、どうしても遠方からの参加しづらくなります。

どちらの方式にも良い点・いまいちな点があるが、毎回ハイブリッド開催をするには金銭的にも運営体力的にもなかなかつらい……。

本アンカンファレンスはオフライン会場で行われていたので、結論としては「やっぱりJJUG CCCはオフライン開催がいいよね」となったわけですが、引き続き議論し、試行錯誤しながら柔軟に選択していくべきテーマだなと思いました。

セッション

本イベントでは30を超えるセッション発表がありました。その中で私が参加したセッションをいくつかご紹介します。

当日のセッション会場の様子

Spring Boot 2 から 3 へバージョンアップしてみた⁠Sakuya Inokuma

自社業務システムのSpring BootやSpring SecurityなどのSpring系フレームワーク群をマイグレーションした際にぶつかったエラーとその対応について紹介されたショートセッションでした。

Spring Frameworkのバージョンアップ時に遭遇したjavaxをjakartaへひたすら置換した(Java EEがJakarta EEに変更になったため)という地道な対応から、Spring SecurityのDispatch typeがfilter適応対象になるいう仕様変更のために起きた無限ループとその対処方法など、きっとエラーが発生した瞬間ちょっとした絶望を感じたであろうマイグレーションエラーまで、短い時間ながらテンポ良くぎっちりたくさんの体験を話されていました。

複雑性に立ち向かうためのサーバーサイドコード分割⁠Hirokuni Maeta

リリースして10年経過し、肥大化・複雑化したサイボウズ社のコードを機能単位にパッケージ分割する実験プロジェクトを行ったことについての発表でした。

  • 現在のコードについて、何ができていて何ができていないのかを把握する
  • できていることをベースに分割方針を立てる
  • 分割の基準については自分たちのチームとして違和感なく適用できそうなメンタルモデルを採用してみる
  • 分割について学習し、プロジェクト終了後も参加メンバーが自走して分割を行えるようにする

などなど、なぜこのチームではそれを採用するのかという部分に筋が通っており、事例としてとても興味深いプロジェクトのお話でした。今回はお試しの数カ月のみのプロジェクトということでしたが、ぜひこのプロジェクトが終了した後のチームやコードの変化などのお話も聞いてみたいなと思いました。

FaaSにおけるJava起動時間の比較 (AWS / Azure / GCP)⁠tacck

FaaSとJavaはFunctionの起動時間が遅くなってしまうことが多いことから、相性が悪いと言われていました。けれど、最近になっても本当に相性が悪いままなのか?といった疑問から調査を開始し、やり方次第で起動速度上げることもできるということを数値とともに提示した興味深いセッションでした。

各クラウドのFaaSにはそれぞれ特徴があり、別々のオプションがあることを前提にし、無理な横並び比較をしないフラットな調査結果は意外と世の中に出回っていないように思います。どのベンダもFaaSにおけるJava起動に対してそれぞれ別のアプローチで起動時間を早くしていることと、それぞれのオプションを使うとどのくらい早くなるのかがわかりやすくまとまっており、納得感のある素敵なセッションでした。

懇親会

100人ほどの方が参加された懇親会。一部屋にこれだけの大人数が集まって缶ビールやソフトドリンクを片手に会話する雰囲気はとても久しぶりで懐かしく感じました。1時間だけの短い会ではありましたが、皆さん笑顔でとても盛り上がっていました。

Java界の著名人やJJUGに長く参加されている古株の方がたくさんいらっしゃる一方、⁠JJUGのイベントに初めて参加しました」⁠今年社会人になりました」というフレッシュな方々も同じくらい参加されており、JJUGの層の厚さを体感できる懇親会でした。⁠令和」の文字を掲げたDuke(Javaのマスコットキャラクター)のTシャツをかけたじゃんけん大会なども行われていました。

懇親会終了時の集合写真

おわりに ~ 運営メンバーとしてのJJUG CCC

私はJJUGの幹事ですので、JJUG CCCも運営メンバーとして長く携わっています。今回は久しぶりのオフラインJJUG CCC、どのくらいの方が来場されるのだろう、と不安と期待が入り混じって前日までそわそわしていたものですが、当日は300人近くの方が来場し大変盛り上がった1日となりました。私はセッション部屋の司会進行などに携わりましたが、ただの司会であっても参加者のみなさんの反応が見えてとても楽しかったです。

コミュニティカンファレンスとしては比較的古株のJJUG CCC。毎回何か新しいことにチャレンジし、試行錯誤しながら開催しています。次回は2023年秋に開催予定です。次回はどんな新しい形のカンファレンスになるのでしょうか。私も楽しみです。

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