2023年8月にCIQ(Rocky Linuxの開発元)、Oracle、SUSEの3社が設立したOpenELAは、Red HatによるRed Hat Enterprise Linux(RHEL)のソースコードアクセス制限に対抗し、新たなRHEL互換ソースコードの“リポジトリ”となることをゴールに掲げている。そのOpenELAが11月2日、最初のマイルストーンといえるELソースコードを公開した。現時点で提供されるのはRHEL 8およびRHEL 9ベースのディストリビューションを構築するのに必要なパッケージのソースコードで、RHEL 7互換のものに関しては近い将来に公開予定だとしている。
OpenELAのエグゼクティブのひとりであるSUSEのCTO兼CPOであるThomas Di Giacomoは「設立時に表明した“ソースコードを公開する”という約束を果たせてうれしい。我々はEnterprise Linux(RHEL)のソースコードが今後も自由にアクセスできるようにし、顧客に選択肢を提供できるように努力していく」とコメントしており、引き続きRHEL互換ソースコードの公開を進めていく意向を示している。また、CIQのCEOであるGregory KurtzerはCentOSサポートの終了により「(エンタープライズLinuxの)エコシステムに大きな穴があいた」と表現、この穴を埋めるために、コミュニティが団結して動いた結果がOpenELAの設立だと”コミュニティベース”である点を強調している。
今回のOpenELAの発表に対し、Red Hatはとくにアクションを起こしていない。今回公開されたソースコードはRed Hatが過去に提示している条件にもとづいており、また、OpenELAはあくまでリポジトリであって、RHEL互換ディストリビューションを直接提供しているわけではないため、現時点でRed Hatが法的措置などのアクションを取る可能性は考えにくい。
しかし今後はRed Hatとサブスクリプション契約を結んでいる顧客/パートナー以外は最終的なRHELソースコードに直接アクセスすることはできなくなるため、OpenELAやその他のダウンストリームが完全な1:1で対応することが難しくなるのは必至だ。バグ対応を含めたRHELソースコードとの完全な互換性をどう維持していくのか、そして「RHELのダウンストリームはもう必要ない」という立場を明確にしているRed Hatがどう動くのかが引き続き注目される。