PyCon Hong Kong 2023 カンファレンスレポート

鈴木たかのり@takanoryです。2023年11月に香港で開催された、プログラミング言語Pythonの国際カンファレンス「PyCon Hong Kong 2023」に参加してきたので、その様子をレポートします。

PyCon Hong Kong 2023とは

PyCon Hong Kong(以下:HK)は香港で開催されるPythonに関するカンファレンスです。2015年から開催されており、今回で8回目となります。

PyCon HK 2023のイベント概要は以下の通りです。

項目 内容
URL https://pycon.hk/2023/
日程 2023年11月11日(土)
場所 香港
会場 The Hong Kong Federation of Youth Groups Building
PyCon Hong Kong 2023 Webサイト
PyCon Hong Kong 2023 Webサイト

筆者は今回が初めてのPyCon HKへの参加であり、香港へ行くのも初めてです。

カンファレンス前日まで

今回は飛行機の関係で11月9日(木)に移動しました。ここではカンファレンス前の様子を軽く紹介します。

香港への移動

初めて行く香港では、空港でOctopusカードというsuicaのような交通カードを購入し、Airport Expressと地下鉄(MTR)を乗り継いで、スムーズにホテルに到着することができました。

Octopusカードの自動販売機
Octopusカードの自動販売機

晩ご飯は到着が少し遅かったのもあり、ホテルの近くの店に適当に入って食べました。漢字なのでなんとなくメニューの意味がわかります。

漢字のメニュー
漢字のメニュー

このメニューで「D」を指さして頼んだんですが、予想通りネギと鶏肉が出てきました。この料理で48HKDですが、現在は香港の物価高と円安もあり、1HKDは約20円となっています。⁠これで約1,000円か…」と思いながら食べました。味は想定通りといった感じです。

蔥油雞扒
蔥油雞扒

Speakers Dinner

カンファレンスの前日11月10日(金)の夜には、スピーカーを招待してのディナーがありました。Yat Lung Heenというお店です。

最初に主催者のSammyとCalvinからあいさつがあり、2つのテーブルに分かれて楽しく会話をしながらおいしい中華料理を楽しみました。

主催者あいさつ
主催者あいさつ
筆者のいたテーブル
筆者のいたテーブル
もう1つのテーブル
もう1つのテーブル

食べきれない量の中華料理が出てきて、あまった料理は持ち帰り用に詰めてもらっていました。これって中華料理あるあるなんですかね(台湾でもそんな感じでした⁠⁠。

Dinnerのあとは一緒にビールを飲んでくれる人がいなかったので、腹ごなしがてら30分歩いてHong Kong Island Taphouseを訪れ、香港のクラフトビールを軽く飲んでから帰りました。

PyCon Hong Kong 2023

次の日の11月11日(土)がカンファレンス当日です。MRTでQuarry Bay駅まで行ってから徒歩です。8階がメインとなるホールとブースがある会場で、10階にTrack 2の部屋があります。

オープニング

最初はSammy氏によるオープニングです。今年はWebサイトを見てもわかるとおり、マージャンがデザインのテーマとなっています。スポンサー紹介、オーガナイザー紹介などが行われました。

オープニング
オープニング

続いてプログラム担当のScotty氏よりプログラムの概要が紹介され、そのあとに写真撮影が行われました。オープニング直後に写真撮影とは珍しいなと思いましたが、ホールの座席に詰めて座って集合写真が撮られました。

キーノート: Introduce to you! about PyLadies Tokyo

オープニングのあとのキーノートは2つの部屋で行われ、私は友人でもあるMaaya Ishidaさん@maaya8585のキーノートに参加しました。

Maaya Ishida氏
Maaya Ishida氏

トークの内容としては最初にPyLadiesの紹介があり、世界中に支部がたくさんあること、それぞれの支部で異なる言語を使っているため、コミュニケーションには問題があるという話がありました。

続いてMaayaさんが主催をしているPyLadies Tokyoについての紹介がありました。2014年9月に発足し、そのきっかけは1人の女性PythonistaがPyCon JPでポスターセッションを実施したことがきっかけでした。コロナ禍でオンラインイベント中心となったが、最近は現地開催のイベントを増やしているとのことです。また、9年間毎月イベントを開催しているそうです(すごいですね!⁠⁠。

PyLadies Tokyoは女性が一般のITコミュニティに参加する、最初のステップになればと思っているとのことです。日本にはPyLadies TokyoだけでなくKyoto、Okinawaもあること、それらのメンバーが集うPyLadies JapanのSlackにはいろいろなチャンネルがあって交流しているという話がありました。またPyLadies Caravanという各地域のPyLadiesとオフラインで交流するイベントも紹介されていました。

トークの後半では「自分たちの思い」として以下の3点が語られました。コミュニティを継続的に運営するためには、どの点も大事だなと筆者も感じました。

  • やり過ぎない→やりすぎると燃え尽きてしまう
  • 主催者がやりたいことをやる
  • 楽しむ→主催者自体がイベントを楽しむ

最後に、PyLadiesが将来的に不要になるとよいなと思っている、ということが語られました。これは、女性エンジニアがコミュニティに参加するときに障壁を感じなくなるといいなということだと思います。多くのエンジニアコミュニティが男女半々くらいの参加者になるといいなーと思いました。

Automate the Boring Stuff with Slackbot(ver.2)

筆者の発表です。⁠Automate the Boring Stuff with Slackbot (ver. 2)」と題して、Slack用にbotを作ってさまざまな作業を楽にしよう!というトークをしました。

発表時間が30分で、前半をちょっとていねいにしゃべりすぎたようで、少し時間が足りなかったです。途中を少し飛ばしながら、なんとか最後は時間内に発表を終えることができました。

筆者の発表の様子
筆者の発表の様子

質疑応答では以下のようなやりとりがありました。

  • Q:ChatGPTとつなげられますか?
  • A:ChatGPTのAPIがあるので、ここに書いてある例と同様につなげることは可能。ただし、SlackがオフィシャルでGPT対応などをすると思います
  • Q:Slack SDKを使っていますか?
  • A:Slackが提供するSlack SDKBolt for PythonというSlackが提供するSlackアプリを作るためのフレームワークを使っています

PyCon APACブース

PyConなどのカンファレンスではスポンサーがブースを出していますが、PyCon Hong KongではコミュニティブースとしてPyCon APACブースを出させてもらいました。ブースでは直前に開催されたPyCon APAC 2023グッズ(Tシャツ、トートバッグ、タオル、ステッカー)を持っていきましたが、あっという間になくなりました。

アジアの各国でPyConが開催されていることや、PyCon APAC 2024がインドネシアで開催されることなどが多少でもアピールできたかなと思います。

PyCon APACブース
PyCon APACブース

PyScript: Empowering Rich Python Applications in the Browser

Anacondaに所属するSophia Yang氏によるPyScriptに関する発表です。PyScriptはWebブラウザ上でPythonが実行できるフレームワークです。PyCon US 2022でAnacondaのCEOであるPeter Wang氏によって発表されました。

Sophia Yang氏
Sophia Yang氏

簡単なhello worldの書き方や、イベントハンドラーの指定方法など、基本的なPyScriptでのプログラムの書き方について説明がありました。PyScriptを使うとWebブラウザ上でPythonが動作するので、PCにPythonをインストールする必要が無く、デプロイもHTMLを配置するだけで簡単だということがメリットとして語られました。

そのあとはデモとして、scikit-learnでのクラスタリング、スター・ウォーズの出演者の関係をd3.jsで表現、Pyxelを使ったゲームといった例で、PyScriptでできることを伝えていました。Pyxelが動くのには個人的にびっくりしました。

最後にpyscript.comにサインアップしてPyScriptのコードを書いてほしいということと、PyScriptのdiscordに参加してほしいと伝えていました。

質疑応答では以下のようなやりとりがありました。

  • Q:GPUは使えるか?
  • A:今は対応していない、難しい課題です
  • Q:どのブラウザーに対応しているか?
  • A:スマホブラウザーでも対応している。WebAssemblyに対応したブラウザーであれば対応しています

Automating Victory: Beating browser games with accessible Python

このトークはゲームをプログラムで自動的に解くというチャレンジについての発表です。対象となるのはマモノスイーパーというゲームで、マインスイーパーの拡張版といったゲームです。Jon氏が言っていましたが上のレベルはまず解けないそうです。

Jon Gaul氏
Jon Gaul氏

このトークではどのようにマモノスイーパーをPythonで自動的に解くのか、そのステップが説明されました。最初にMSSというライブラリで画面のスクリーンショットを撮り、それをOpenCVで画像処理をします。画像処理したデータを元にマス目を認識し、各マス目をデータ化して計算し、安全なマスをクリックしていくということを繰り返します。クリック処理にはPyAutoGUIを使用したとのことです。

問題点としては、もしも画面の構成が変更されると、画面をデータ化する部分やクリックする処理がすべて書き直しとなります。このあたりはWebスクレイピングにも通じるところがあると思います。

ゲームを自動的に解くという試みはなかなか面白いなと思いました。また、このあと実際に手でマモノスイーパーを解いてみましたが、なかなか面白い(そして難しい)という感想をJonさんに伝えました。

クロージング

イベントの最後はクロージングです。再びSammy氏によりスポンサーやスピーカー、オーガナイザーへの感謝が述べられました。参加者は最終的に261名だったそうで、参加者がかなり増えてよかったなと感じました。

参加者数は261名!!
参加者数は261名!!

PyCon HKのオーガナイザーとボランティアのみなさんにより、無事PyCon HKは終了しました。

オーガナイザーとボランティアのみなさん
オーガナイザーとボランティアのみなさん

Networking Hour

イベント終了後はNetworkng Hourということで、参加者を交えてパーティーがありました。会場はKAKI Izakayaというお店です。日本の居酒屋スタイル?のお店のようです。確かに居酒屋っぽいメニューの枝豆、鶏の唐揚げ、たこ焼き、野菜の天ぷらなどが出てきました。ただ、鶏の唐揚げにイクラを乗せるのは「日本の感覚じゃない」ということは伝えておきました。

居酒屋っぽいメニュー
居酒屋っぽいメニュー

パーティーではオーガナイザーであるSammy氏、Calvin氏や、香港から来ていたCheuk氏(彼女はPyCon APAC 2023にも来ていました)などいろいろな人と交流しました。次はどこのPyConで会えますかね〜?

PyCon Hong Kong参加者たちと
PyCon Hong Kong参加者たちと
筆者、Sammy氏、Maaya氏、Cheuk氏ほか参加者と
筆者、Sammy氏、Maaya氏、Cheuk氏ほか参加者と

パーティーのあとはCheuk氏やMaaya氏などと一緒にYARDLEYS CAFE・BISTRO・BARSで二次会ビールを楽しみました。香港島のめちゃくちゃ長いエスカレーターで坂道を登っていくのが面白かったです

まとめ

PyCon Hong Kong 2023レポートは以上です。初参加のPyCon Hong Kongは、新しい出会いもあり、これからの盛り上がりに期待できるイベントでした。香港にはまた訪れたいなと思いました。

筆者がPyCon JP Associationとして行っているYouTubeライブ、PyCon JP TVでも12月1日の回でPyCon Hong Kong 2023について紹介する予定です。もしよかったらご視聴ください。

PyCon Hong Kongの前後は飛行機の都合で1日観光ができたので、香港の街を散歩したり、LEGO Storeに行ったり、ビールを飲んだり、フェリーに乗ったり、エッグタルトを食べたり、飲茶を食べたりしました。Victoria Peakに行けなかったことが心残りです。

さて、来年はどこのPyConに行こうかなぁ。

香港島側から半島側を望む
香港島側から半島側を望む

おすすめ記事

記事・ニュース一覧