前回の記事で、「ユーザー数」や「セッション数」はGA4でもとれますが、UAとは計算方法が異なるということをお話しました。まずはこれに慣れていかないといけないということになりますが、違いを知っておいたほうがよい数字がもう少しあります。
それが、「直帰率」と「離脱率」です。今回の記事ではこれにフォーカスを当てます。
「直帰率」と「離脱率」はGA4で見ることができなくなるの?
「直帰率」と「離脱率」って、UAではめちゃめちゃ大事な数字でしたよね。UAのレポートの、行動>サイトコンテンツ>すべてのページを見ると、こんな項目が出ています。これを見て「うわ、直帰率高すぎ……?」とドキドキしたものです。
ところが、GA4では通常のレポートでは「直帰率」「離脱率」といった数字が出てきません。以下がGA4のレポート>エンゲージメント>ページとスクリーンを選択した状態です。ほぼ同じような趣旨の画面ですが、項目に「直帰率」も「離脱率」もないことがわかります。
そもそもGA4はページ単位ではなくイベント単位の計測なので、UAで言う「直帰」(1ページだけ見て離脱)という概念がなく、数値としては前面に出ていないんですね。
でも、似たような意味合いの数字は取れなくもありません。
ここでは、UAとGA4の「直帰率」と「離脱率」の数値の考え方の違いについて見ていきます。
UAとGA4の直帰率の考え方の違い
UAでは、「全セッションのうち、1つのページだけにアクセスして離脱するセッションの率」のことを直帰率と表現していました。直帰率が高い=サイトを回遊していないから成果が良くない という判断をする場合もあったかと思います。
でも実際には、ページのアクセスだけで判断するのは難しい場合もあります。
サイトへのアクセスが1ページだけであったとしても、そのページを見て疑問や不安が解決したから直帰したというパターンもありえますよね。「よく読んで納得して直帰」なのか、「これは役に立たないと思って一瞬で直帰」なのかでは、そのページがもたらした成果の判断は異なってきます。
UAではこの違いがあっても両方「直帰」になりますが、実際には以下の図のように「そのページでのユーザーの行動」で、直帰の質が変わるということがわかると思います。
GA4ではイベント単位での計測をしているので、こういった「同じ直帰でも意味合いが違う」というところが可視化されます。そういう意味では、UAの解釈での「直帰率」はGA4ではあまり意味がないため、もともとはGA4では「直帰率」という項目がそもそもありませんでした(現在は、「探索」機能を使うと直帰率という項目が追加されています)。
ただ、GA4での「直帰率」は、定義がUAとは異なります。GA4のヘルプでは以下のように記載があります。
「エンゲージメント率」というのは、前回の記事で書いたとおり、「ページ内でユーザーが特定の行動をした率」です。この逆数、つまり「100%-エンゲージメント率」が、直帰率と定義されています。エンゲージメント率が60%だったとしたら、100-60=40%が直帰率です。
UAは「ページのアクセス」を基準としていたのに対し、GA4は「ページ内での行動」を基準としているため、「セッション内で(サイトに興味があるとわかるような)行動がされなかった率」を「直帰率」と定義しているのです。
UAは、ページ内でどんな行動をしていても最初の1ページで離脱すればとにかく「直帰」でした。GA4の場合、1ページだけのアクセスであっても、そのセッションでエンゲージメント(10秒以上見ていた、コンバージョンイベントが発生した)が記録されれば直帰ではないという解釈になります。このため、UAとGA4の直帰率の数字としては大きく変わります。
基準がページビューであるUAと比較すると、ページ内での行動も含まれるGA4のほうが、直帰率が小さくなる傾向にあります。
UAとGA4の離脱率の考え方の違い
「離脱率」の前に、「離脱数」の定義について見てみます。
ページごとの離脱数を計測する場合、以下のような定義の違いがあります。
- UA:セッション内でそのページを最後に見た数
- GA4:セッション内の最後のイベントが発生した数
ページAの離脱数を見る場合、「最後にページAを見たか」「ページAでの最後のイベントが記録されたか」の違いなので、ページかイベントかの違いはありますが離脱するタイミングは同じで、カウントとしては違いが出ないということになります。
大きく変わったのは、離脱率の出し方です。
UAでは分母が「ページビュー」でした。つまり、離脱数÷ページビュー×100が離脱率になります。「ページAのページビューの合計のうち、離脱が発生したページビューは何件?」というカウントの仕方です。
GA4の定義では、分母が「セッション」になります(参考:GA4ヘルプ)。離脱数÷セッション×100が、離脱率になります。「ページAを含むセッション数全体のうち、最後のイベントが発生したセッションは何件?」というカウントになります。
UAで計測をされていた方ならご存知かと思いますが、「セッション」は一定の時間内に「ページAを見てBを見てCを見た」といった行動のひとまとまりを1とカウントします。このため、複数ページで構成されているサイトであれば、原則としてページビューのほうがセッションよりも数字が大きくなります。分母が違うと当然、離脱率にも影響が出ます。
離脱率を計算してみよう
では、以下の場合のページAの離脱率は、UAとGA4でどう変わってくるでしょうか?一緒に考えてみてください。(すぐ下に答えがあるので見ないようにしてください!)
- セッション1:ページA→ページB→ページC(離脱)
- セッション2:ページA→ページC→ページB→ページA(離脱)
- セッション3:ページA→ページB→ページA→ページC(離脱)
上記の動きの場合、以下の数字が割り出せます。
- ページAを含むセッション数:3
- ページAのページビュー数:5
- ページAの離脱数:1
ここまではよく数えればわかるかなと思います。
それでは回答です。この数字を使って離脱率を出してみます。
- UA:1(離脱数)÷5(ページビュー数)×100=20%
- GA4:1(離脱数)÷3(セッション数)×100=33.3%
同じものをもとにした離脱率でも、13.3%も違いが出ました。分母=割っている数字が違うからです。
上記の3セッションではページAに5回アクセスしています。UAではこの5回のアクセスを重視しますが、GA4では一つのセッションでページAに複数回アクセスしていても考慮されず、3セッションで割ることになります。概念を図で表すとこんな感じです。
このように、1つのセッションにページビューが複数あった場合、セッションよりもページビューのほうが分母が大きくなるので、離脱率についてはGA4のほうが数字が大きくなる傾向があります。UAとGA4とでは同じ「離脱率」でも簡単に比較ができないことがわかるかと思います。
情報が伝わっているかどうかは、ページビューだけでは測れない
執筆時現在、GA4での「離脱数」は指標としては存在していますが(探索レポートでしか使えません)、「離脱率」という指標は用意されていません。このため、GA4のヘルプで離脱率の定義はされているものの、GA4の画面内では使えず、自分で計算をする必要がある指標になります。
そういう意味では、GA4には「表示回数(=UAで言うページビュー)」という指標もあるので、離脱数÷表示回数×100で、Excelなどで計算すればUAの定義での離脱率も出すことはできます。
ただ、「UAで使っていた数字をGA4でも同じように見る」のでは、GA4のメリットが活かしづらいかもしれません。
Webサイトがそもそもなんのためにあるかと考えると、「自分が発信した情報を、世の中の色々な人に伝えたいから」ですよね。
情報が伝わっているかどうかを「ページへのアクセス数」を重視して判断していたUAも、1つの指標としてはありうると思います。でも、「その人がそこで何をしていたのか」が見えたほうが、情報が伝わっているかどうかがわかりやすいと思いませんか?
「自分が発信した情報を、世の中のいろいろな人に伝える」ために、ページビューを増やすことはたしかに大事です。でもそれだけではなくて、そこでの行動を可視化して、ユーザーの行動を変えていくような改善が、「伝わるWebサイト」を作るためには大切だと思うのです。
そのような意味でGA4は、「よりアクセスを増やす」だけではなく、「より情報を伝えるようにする」ためのしくみができた、と言えるのではないかと思います。
そのためにはどういう数字をどんな風に見ていけばよいかということで、次回はGA4の特徴的な機能である「探索」について見ていきます。