Bluesky⁠AT Protocol開発助成金を発表 ――招待制廃止⁠連合機能の実装に続き⁠オープンな開発エコシステムによる成長がさらに加速

2024年3月6日、分散型SNS「Bluesky」は、同サービスの根幹となるオープンプロトコル「AT Protocol」の一層の開発拡大・促進を目指すために、AT Protocol開発を対象とした助成金を発表した。

開発促進のエコシステムとしての助成金

Blueskyは、2023年1月にiOS/Android版アプリとしてリリースされた分散型SNSの1つ。元々、Twitter共同創業者の1人であるJack Dorsey氏らが集まって始まったプロジェクトで、リリース当初は招待制のSNSとして、熱量の高いユーザを中心に限定した中でサービスが動いていた。

その後、後述のように招待性が廃止、さらにBlueskyの注目機能の1つである連合機能の実装などから、ユーザ数が一気に増え、また、運営母体の開発体制強化が必須となり、今回のAT Protocol開発助成金が発表された。

今回の助成金は、ブラウザの拡張機能やクライアント開発、PDS実装、AT Protocolツール開発など、AT Protocolに関連した開発が対象となっており、審査を通過したプロジェクトには、1プロジェクトごとに500~2,000USドルの単位で、最大10,000USドルの助成金が配布される。

発表時点ですでに、パイロットプログラムとして以下3名の開発者に助成金が支給され、次のプロジェクトに対して各1,000USドルが授与された。

この他、審査通過者には、Bluesky PBCからの助成金に加え、AT Protocol関連開発者には、Amazon Web Services(AWS)と提携して5,000USドル分のAWS Activateクレジットが提供される。

助成金の申請は以下URLから。

AT Protocol Grants Program(申請フォーム)

AT Protocolとは

今回の助成金対象となるAT Protocol(Authenticated Transfer Protocol)とは複数のプロトコルの総称で、Blueskyの根幹をなす技術の1つ。

The AT Protocol

AT Protocolは、中央集権型ではないモデルで、地方分権型とアカウントポータビリティを備えているのが特徴となっている。

各ユーザは、それぞれのPDS(Personal Data Server)と呼ばれるサーバに所属し、PDS上のデータを、Crawling Indexerで同期し、データのやり取りが行われる。

詳しくは、公式ドキュメントやmattn氏による開発視点から見る、新しい分散型SNS「Bluesky」とAT Protocolの可能性をご覧いただきたい。

招待制廃止からの動き

リリース当初、Blueskyは招待制分散型SNSとして、限られたユーザによるコミュニケーションおよびネットワーキング、ソーシャルグラフの構築が行われていた。これは、X(旧Twitter)をはじめとしたサービスの現状などをふまえ、運営側でBlueskyの成長を管理し、新しい分散型ネットワークの基盤や枠組みを機能させる準備段階として位置付けられていたからである。

その中で、招待を受けたユーザは、Blueskyの特徴的な機能であるカスタムドメインやカスタムフィード、モデレーションなどをユーザ自身が試験的に活用しながら、新しい分散型SNSの可能性を模索し、ユーザとともにサービスとして進化・成長し続けてきた。そして、ユーザ・運営双方において、他SNSで起きているフェイク投稿や誹謗中傷といったトラブルを未然に防ぐための取り組みが行われていた。

そして、リリースから約1年が経過した2024年2月6日に招待制が廃止され、誰もが自由に登録できるオープンな分散型SNSとして生まれ変わった。

この点については、Bluesky CEO、Jay Graber氏のBlueskyでの投稿Bluesky公式ブログ記事などが参考になる。

また、サービス継続にとって重要なプラットフォームとしての収益の観点では、広告型モデルからの脱却として、Bluesky PBCによるカスタムドメインの販売を開始するなど、新しい展開が模索されており、今後も健全なプラットフォームを維持するための取り組みが進んでいる。

連合機能の実装⁠今後に向けて

今回の助成金開始の発表の直前の2024年2月22日には、AT Protocolの重要な機能であり、分散型SNSとしてのBlueskyにとって核となる連合機能が実装された。

これまでの多くのSNSでは、ユーザの行動履歴はプラットフォーム側に保存され、プラットフォームの存続により、その履歴が残る、いわばプラットフォーム依存の仕組みとなっている。

Blueskyの場合、AT Protocolの仕組み、PDSの準備により、各ユーザの行動履歴となるデータを、ユーザ自身がホスティングして開設できる仕様となっているが、これまではBlueskyが運営するPDSのみでデータのホストを行っていた。

2月22日の発表により、まず、アーリーアクセス版として、Self-Hostingを行いたいユーザに向けて、自身のPDSの開設およびPDSの連合機能が公開された。

詳しくはBluesky開発者ブログの記事を参照のこと。

ここまで紹介したように、リリースから1年が経過したBlueskyは、直近約1ヵ月のあいだでさまざまな発表を行った。

そして、今回発表されたAT Protocol開発助成金は、Blueskyを支える開発者たちの支援、その先にあるBlueskyのオープンな開発エコシステムの整備、その結果として、新しい分散型SNSとしてのBlueskyのさらなる成長を後押しするものとなるだろう。

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