Linus Torvaldsは5月26日(米国時間)、次期Linuxカーネル「Linux 6.10」の最初のリリース候補版となる「Linux 6.10-rc1」を公開した。Linusは「通常サイズのカーネルリリースに見えるが、少し小さいかもしれない。(Linux 6.10には)新しいファイルシステムはなく、xfsのオンライン修正により、bcachefsの修正はもはや最大のファイルシステム変更ではない」とコメントしている。
Linux 6.10では多くのアップデートが予定されているが、その中でも注目されるのがRISC-Vに関連したサポートの拡張だ。5月22日付けで行われたマージでは、RISC-Vにおける以下のサポートが含まれている。
- バイト/ハーフワードの比較と交換
- Rustサポート
- hwprobe内のZiHintPause拡張のサポート
- PR_RISCV_SET_ICACHE_FLUSH_CTX prctl()
- lockless lockrefsのサポート
メインラインカーネルでのRustサポートはまだ限定的な範囲にとどまっているが、今回のアップデートによりx86_64やARM64といった主要なアーキテクチャともにRISC-VもRustをサポートするハードウェアリストに加わることになる。
これに加えて、5月24日付けで行われたマージでは以下の変更が含まれている。
- ブートイメージに使用される圧縮形式をビルド時に設定可能に(
make help
に表示)
- access_ok()の最適化
- uaccessハンドラにおけるパフォーマンスバグの修正
- IMSIC(incoming MSI controller)のbuild failure対応を含む多数の修正とクリーンアップ
また、RISC-V関連でもうひとつ注目されるアップデートが、シングルボードコンピュータ(SBC)「Milk-V Mars」のイニシャルサポートだ。RISC-Vの量産型SoCである「StarFive JH7110」を搭載したMilk-V Marsはクレジットカードサイズの高性能SBCとして注目されており、Canonicalは5月28日、Milk-V Mars向けに最適化されたUbuntu 24.04イメージの提供を発表している。Linux 6.10では新たなサポート対象SoCとしてARMベースのハンドヘルドゲームコンソールやASUSのワイヤレスルータなどを追加しているが、Milk-V Marsが加わることでRISC-Vの存在感がさらに高まることになりそうだ。
Linux 6.10は開発が順調に進めば7月中旬(7月14日または7月21日)にリリースされるとみられる。