OSSデータベース取り取り時報

第105回MySQLの監視ツールとしてのOracle Enterprise Manager⁠ PostgreSQLエンタープライズ⁠コンソーシアム成果報告会がまもなく

この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。

[MySQL]2024年4月の主な出来事

「原稿執筆時点では」2024年4月のMySQLの製品リリースはありません。

4月11日にはMySQL HeatWaveのユーザ会であるHeatWavejpの設立1周年記念イベントが開催されました。このイベントではLT(ライトニングトーク)が連続して行われ、MySQL HeatWaveの全体像の紹介から始まり、各機能の解説や実際に利用してみての使用感などLTが行われました。講演者には設立1周年記念としてノベルティ、または「牛肉」が提供されるというユニークなイベントでした。

MySQLの監視ツールとしてのOracle Enterprise Manager for MySQL

旧MySQL社の時代にMySQL Network Monitoring & Advisor Serviceとして登場し、長年にわたってMySQLの監視ツールとして提供されてきたMySQL Enterprise Monitor(MEM)が2025年1月にEnd of Lifeとなり、新規パッチが提供されないSustaining Supportのフェーズに移行することが発表されています。

Oracle Enterprise Manager for MySQLが後継製品として案内されています。Enterprise Manager(EM⁠⁠ for MySQLは2015年から利用できるようになっており、MySQL Enterprise Editionをご利用のお客様は追加費用無しでこちらの製品が利用可能です。EM for MySQLではMEMと同様に、MySQLサーバーの稼働統計情報の確認や、クエリ・アナライザでのSQL文の性能解析も可能となっています。MySQL Compliance Standardの機能では、ファイアウォールや監査、設定などのセキュリティ課題の有無などを一括して確認できるようになっています。EM for MySQLの機能概要はMySQLの公式ブログにて解説されています。

またオラクルの⁠Observability and Management⁠のブログでは、米国大手のメディアやケーブルテレビ、かつ米国最大のインターネット・サービス・プロバイダであるコムキャストでのEnterprise Manager for MySQLによるMySQL InnoDB Clusterの監視について、コムキャストのエンジニアによる解説が掲載されています。同社ではすでにOracle Databaseの運用監視にEMを活用しており、MySQLサーバーの監視にMEMではなくEM for MySQLを利用して一括管理することを選択しています。記事ではInnoDB Clusterの構成を監視するために独自の監視項目を追加していることも紹介されています。

なおMEMの後継製品としては、MySQL HeatWaveの監視に利用できるOCIのDatabase Management ServiceがオンプレミスのMySQLサーバーの監視にも利用できるようになる予定であることが公表されています。

[PostgreSQL]2024年4月の主な出来事

前回からPostgreSQLのリリースはありませんでした。最新バージョンは2月にリリースされた16.2などです。今回は、5月末開催予定のPostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム成果報告会と、前回につづき国産の高性能DBエンジン劔⁠Tsurugi⁠の最新情報をお知らせします。

5月31日にPostgreSQLエンタープライズ⁠コンソーシアムが成果報告セミナーを開催

国内の有力企業が集まって共同でPostgreSQLの普及・啓蒙活動や技術検証活動を行っているPostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)は、年度ごとに活動成果をまとめて発表をしています。前期2023年度の活動成果の成果報告会が5月31日(金)にオンラインにて開催の予定になっています。活動成果報告やその他のテーマを設けたセミナーなど、通算で第30回目のイベントになります。

セミナーのプログラムですが、技術部会の3つのワーキンググループ(WG)とコミュニティリレーション(CR)部会から活動成果が報告され、運営委員会から2024年度活動計画の概要が発表されます。開催概要や申し込み方法については、後述のイベントコーナーをご覧ください。毎年、PGEConsの成果報告セミナーはテーマのバリエーションも多く、個々の発表の密度も高い、硬派系のイベントとなっています。その分、他では聞けない貴重な知見もたくさん発表されるのではないかと期待しています。

WG1⁠定点観測(バージョン間性能比較)
定点観測として実施しているPostgreSQLのバージョン15と16の性能測定の結果です。例年通り、新旧バージョンの性能比較としてマルチコアCPUにおける性能検証を行い、15から16への性能変化の有無や傾向を確認しています。
WG2⁠はじめてのPostgreSQL移行
2012年からPostgreSQLへのデータベース移行作業と工程ごとの作業内容について調査・検証を継続しています。その中で、2018年にPostgreSQLへ移行する人が必要とする内容をまとめた「移行ガイドブック」を公開しました。今回の発表では、これまでのWG2の活動内容とPostgreSQLの最新バージョン16の変更点をふまえて更新したPostgreSQL移行ガイドブックの内容が紹介されます。
WG3⁠適切なVacuum設定の考察
PostgreSQLの機能であるVacuumについて詳細まで把握している方は少ないかも知れません。そこで、Vacuumの機能解説と性能検証を通じて、Vacuumをどのように設計すればいいのか、適切なVacuum設定について発表の中で考察します。
CR部会⁠基幹領域への適用におけるPostgreSQLの抱える課題への取り組み
CR部会は、エンタープライズ領域でのPostgreSQL適用拡大のため、PostgreSQL開発コミュニティへの技術的課題のフィードバックを行っています。この発表では、PGECons 設立当初に参加企業から寄せられた「基幹領域への適用におけるPostgreSQLの抱える課題」について、課題の解決状況や具体的なPGEConsのフィードバック活動が報告されます。

さて、この成果報告会にご参加いただけない方のために、結果についてもこの連載で報告をしようと思いますが、開催日が5月31日のため次号には間に合いませんので、第107回にてお知らせをしたいと思います。もしご都合がつけば、オンラインで開催される5月31日の報告会にご参加されて聴講されることをおすすめします。

劔“Tsurugi”の最新情報

この連載で経過をお伝えしている劔⁠Tsurugi⁠の最新情報です。4月11日にTsurugi 1.0.0ベータ4がリリースされました。2023年10月のオープンソース公開の後、おおむね2ヵ月間隔でベータ版のバージョンアップが続いています。

今回のベータ4リリースのお知らせの中から、トピックスをピックアップしてみます。

  • いくつかのケースでの性能改善
  • 運用管理機能であるトランザクションログのメンテナンス用コマンドの追加
  • トラブルシューティングやエラーコードに関するドキュメントの整備

また、ひとつ前のベータ3までに発生していたいくつかの重要な問題を解消しています。たとえば次のような問題点が発見され解消されているとのこと。

  • 特定のケースでSerializability違反が検出されない。
  • ある条件でクラッシュすることがある。
  • ある条件で正常に動作しないコンポーネントがある。
  • トランザクション競合結果が不正になることがある。

まだまだ正式リリース前のベータ版として、数々の問題を潰しつつある真っ最中であることがわかります。

劔“Tsurugi⁠関連ではもうひとつ、2月に開催されたデータマネジメントに関するイベントの中で、「光化時代のマスターデータ連携の技術要件 〜 高速・低遅延環境の分散処理でボトルネックにならないDBとは」と題して劔⁠Tsurugi⁠プロジェクトの講演も行われています。

その講演では、通信ネットワークの伝送速度(帯域)の向上や、伝送遅延の劇的な短縮によって、遠隔に分散したデータベースの運用が変わる姿を示しています。また、大手金融機関において、それを見据えて分散トランザクション処理による勘定系システムの検討が始まっていることも紹介されました。

2024年5月以降開催予定のセミナーやイベント⁠ユーザ会の活動

イベントごとに利便性のあるオンライン開催や、従来通りのオンサイト(会場)開催、またはハイブリットが混在するようになっています。興味を持たれて参加したいイベントの開催形態にご注意ください。

ウェビナー: MySQLでミッションクリティカルシステムのダウンタイム"ゼロ"を目指す ~高可用性を実現する技術的方法論と運用支援サービスのご紹介~

日程 2024年5月15日(水)11:00~12:00(10:45接続開始)
場所 オンライン開催
内容 MySQLで高可用性を実現するためには、レプリケーションの仕組みを理解し、適切な構成を設計・運用する必要があります。本セミナーはMySQLで高可用性を実現するための技術的方法論と、課題解決につながる支援サービスをご紹介します。MySQLの導入・運用支援実績が豊富なスマートスタイルより、同社のサービスをご紹介します。
経験豊富なDBAによる運用支援サービスから、MySQLに特化した高可用性支援サービスまで、課題解決につながるサービスを知ることができます。大手企業のミッションクリティカルシステムへの導入事例も交えながら、支援サービスのメリットをご理解いただけるはずです。ミッションクリティカルシステムを運用中の方、高可用性実現に向けて課題を抱えている方は、ぜひご参加ください。
主催 株式会社スマートスタイル主催、日本オラクル株式会社共催

ついに正式リリース!MySQL 8.4 LTS (Long-Term Support) の全容をご紹介

日程 2024年5月16日(木)14:00~17:00
場所 日本オラクル株式会社 本社 セミナールーム
内容 MySQLにおけるバージョン管理モデルとしてMySQL InnovationおよびLong-Term Supportリリースをご案内してきましたが、このたびMySQL 8.xの最初のLong-Term supportバージョンであるMySQL 8.4 LTS をリリースする運びとなりました。イノベーションリリースとLTSリリースの違いや8.4LTSの新機能、どのようなケースでMySQL 8.4 LTS を採用すべきかなど詳しく紹介します。イベント申込ページは近日公開予定です。
主催 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

クラウドデータウェアハウスは絶対MySQL HeatWaveを見るまで決めるな!

日程 2024年5月24日(金)16:00~17:45
場所 日本オラクル株式会社 本社 セミナールーム
内容 「DX推進支援の専門家株式会社ジール様をお招きしたデータ活用セミナー」
機械学習とビッグデータはデータ活用における近年のキーワードであり、昨今は生成AIの文字を見ない日はありません。多くのお客様がこれから導入したいテクノロジーとして検討されています。
今回はデータ活用に豊富な経験をお持ちのパートナーである株式会社ジール様をお迎えし、業務に即したデータを用いて機械学習およびビッグデータ活用の現実面をご紹介いたします。データ活用における想定外のレスポンス遅延や予算オーバーなどの課題をお持ちの方はもちろん、BIツール選定や機械学習の採用に悩まれている方もぜひこの機会にHeatWaveの驚異的なスピードと機能をご体感ください。
主催 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

opensource COBOL活用セミナー (PostgreSQL移行事例あり)

日程 2024年5月17日(金)14:00〜16:15
場所 ゲートシティ大崎(オンライン配信あり)
内容 OSSコンソーシアムによるセミナーです。多くの企業の基幹システムにはCOBOL資産が残されており、その資産を将来どう取り扱うかが課題です。OSSコンソーシアムでは、基幹系システムへのOSS適用と、その鍵となるCOBOLコンパイラopensource COBOLおよび Javaを中間コードとして出力するCOBOLコンパイラopensource COBOL 4Jを公開しています。
本セミナーでは、オープンCOBOLソリューション部会の活動内容と、opensource COBOLシリーズの製品紹介、そして実際にそれらを適用して業務システムを運用している企業より事例の紹介を行います。事例紹介では、Windows版Oracleで構築したCOBOL資産をコンバージョンツールを活用してLinux版Postgresで再構築した事例を紹介します。
主催 OSSコンソーシアム オープンCOBOLソリューション部会

PostgreSQLエンタープライズ⁠コンソーシアム成果報告セミナー

日程 2024年5月31日(金)13:30〜16:00
場所 オンライン開催
内容 本文でも紹介しましたが、PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)の2023年度分の活動成果の成果報告会です。各部会・ワーキンググループが勢揃いして成果をまとめて報告します。参加募集は連休明けから開始される予定です。PGEConsのWebサイトで発表されてconnpassで事前エントリを受け付けます。
主催 PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)

オープンソースカンファレンス2024 Nagoya/Hokkaido/Kyoto

日程 〔Nagoya〕2024年5月25日(土)10:00~18:00
〔Hokkaido〕2024年6月29日(土)10:00~18:00
〔Kyoto〕2024年7月27日(土)10:00~18:00
場所 〔Nagoya〕中小企業振興会館(名古屋市)
〔Hokkaido〕札幌市産業振興センター(札幌市)
〔Kyoto〕京都リサーチパーク(京都市)(予定)
内容 今回お知らせするNagoya、Hokkaido、Kyotoはいずれも展示とセミナーの両方を会場にて開催します。セミナーのオンライン配信は予定されていません。ただし、出展者が独自に配信を行うセミナー枠はあるかもしれません。Nagoyaはまもなくプログラムが公開されます。Hokkaidoは5月20日まで出展団体(展示・セミナー)を募集中。Kyotoは5月上旬から出展募集を開始予定です。OSSデータベース関連の展示やセミナーは、出展者の決定後に各開催回のWebページをご参照ください。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

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