PyCon US レポートの2回目は、カンファレンス2日目の様子をお伝えします。さまざまなトークに加え、Diversity & Inclusionパネル、PyLadiesオークションといったPyCon USならではの特色あるイベントが開催されました。
Diversity & Inclusionパネル
- スピーカー:Debora Azevedo、Dima Dinama、Jessica Greene、Jules、Mason Egger、Abigail Dogbe
- 動画:Keynote Speaker - Diversity and Inclusion Panel
2日目の朝はDiversity & Inclusionパネルです。各国のコミュニティメンバーがパネリストとして登壇し、ディスカッションをするというよりは、それぞれの経験や考えを共有するということがメインに行われた印象でした。アジアからはインドネシアのDima氏が登壇していました。
Dima氏は昨年東京で開催されたPyCon APAC 2023に参加して、クロージングで
Abigail氏は0日目のパーティーで同じテーブルにいた方でした。2017年にガーナで開催されたDjango Girlsに参加し、その後ガーナのPythonコミュニティやPyDataガーナに参加し、自らPyLadiesガーナを立ち上げたそうです。
挑戦したことや大変だったことは?
国を超えても似たような課題もあれば、まったく異なる課題もあると感じるパネルディスカッションでした。
Day 2 Keynote:Simon Willison
2日目のキーノートスピーカーのSimon Willison氏はDjangoの共同作成者ですが、最近はAIとLLM
まずAI
このようなサービスができることは文中の次の単語を予測するだけで、統計的にオートコンプリートしているだけです。ただ、より良いオートコンプリートになると便利になるということです。筆者もこの考え方には非常に同意しました。
どのモデルを使うのがよいか?
多くのモデルはオープンなライセンスモデルですが、オープンソースではありません。iPhoneを使っている人にはMLC Chatというアプリをインストールすると、オープンソースライセンスのMistralというモデルが使えるためおすすめだそうです。ここでは例としてPythonでCSVを解析する方法を質問し、ほぼ正しいコードが回答されていました。
Simon氏の現在のメインプロジェクトであるdatasette.
他にもAIとLLMに対して、ここでは書き切れないほどさまざまな知見が紹介されていました。興味のある方はぜひビデオを確認してみてください。
食事がおいしいPyCon US
筆者は過去PyCon US 2019
その過去2回と比べると、今回はダントツでカンファレンスで提供される食事がおいしい!!
Column:PyConでのPSFメンバーランチ
一般社団法人PyCon JP Association理事の吉田
PSFメンバーランチとは、PyCon US中のどこか1日、カンファレンスランチの時間帯で、Python Software Foundation
例年ここではランチを取りながら、PSFのスタッフとボードメンバーから昨年の活動や会計に関する報告がされ、他のPSFメンバーと交流します。今年もPythonの生みの親のGuido van Rossum氏が参加していました。今年は主にPSFのExecutive DirectorであるDeb Nicholson氏から説明がありました。
活動や会計報告と言うだけでは無味乾燥に思われるかも知れませんが、今年はプレゼンテーションの他、フルカラーの20ページほどの報告資料の冊子が準備され、大変分かりやすくなっていました。特に配布物については昨年まではモノクロコピー数枚組の配布で読み解くのに少し苦労する部分はあったのですが、写真付きのカラー資料でとても分かりやすくなっていました。
PSFの収入の主要な物としては、年間スポンサーおよびPyCon USなどのイベントの参加者収入となります。また、主な支出としてはPyCon USの開催費用や遠方などからの参加者に対する費用の援助であるTravel Grant、スタッフ人件費、またPython開発者の保険料の支払いなどがあります。今年の報告を聞いて、読んで興味深かった点は、Travel Grantが世界、特にアジアなどの地域にもより公平に分配される傾向になってきたことや、アメリカでのインフレの進行によりスタッフ系のコストが増大していることです
Travel Grantについては前年などにアジア地域を対象とした支出が少ないように思われる点を、以前のこの会議などで日本含めアジアのメンバーから主張してきたことが、反映されたのでは無いかと思います。
PSFメンバーランチはPSFのメンバーであれば、PyCon USの開催の少し前に登録案内が来て、それに登録すれば、無料で参加することができます。
PSFメンバーランチはその場で質問などもできる貴重な機会です。PyCon JPと関わりの深いイクバルさんなど多くの方が意見や質問を出していました。
PSFのメンバーにはいくつかの種類があります。私は投票権のあるマネージングメンバー
CPython's Compilation Pipeline
- CPython's Compilation Pipeline
- スピーカー:Irit Katriel氏
- 動画:Talks - Irit Katriel: CPython's Compilation Pipeline
本トークはCPythonのコア開発者であるIrit Katriel氏による、Pythonのコードを解析して実行するパイプラインをPython 3.
現在のコンパイルのステージは以下のような流れ
- トーカナイザーがPythonのコードをトークンに変換
- パーサーがトークンをAST
(抽象構文木) に変換 - コンパイラーがASTをバイトコードに変換
Python 3.
- AST optimizerでASTを
「最適化されたAST」 に変換 - コード生成で最適化されたASTを疑似命令に変換
- peephole otimizerで疑似命令を
「最適化された疑似命令」 に変換 - アセンブラで最適化された疑似命令をバイトコードに変換
このように変更したモチベーションとしては、
トークの後半ではASTや疑似命令のコードに対して、どういった最適化が行われるかを例をで示していました。ASTの最適化の例では、サブノードに
これらの処理は新しいPython APIとして_testinternalcapi
モジュールに含まれています。これは、標準ライブラリに含めるにはPEP
めちゃくちゃ難しい内容でした。ただCPythonの内部がどんどん書き換えられていってるんだなと感じました。
Day 2 ライトニングトーク
2日目のライトニングトークです。ライトニングトークではPure Pythonを標準ライブラリを使ってクラッシュさせる話、ソフトスキルとしてレビュー時のコメントをChatGPTを使って優しくする方法、NumPy 2.
アジアからの参加者では、朝のパネルにも出ていたDima氏が発表していました。Dima氏は政府で働いており、オフィス製品を使うつまらない仕事がたくさんあるそうです。そこで、PyAutoGUIでマウスとキーボード操作を自動化したり、PDFをReportlabで自動的に処理したりして時間を作り、たくさん眠ったそうです。仕事が終わっていると上司にバレると新しい仕事が来るので気をつけてくださいとのことです。
もう一人は韓国のJoeun Park氏で、Joeun氏は自身のストーリーを共有しました。現在2児の母でもあるJoeun氏は育児休暇を取得した後に以前の仕事に戻ることができず、新しい仕事を探す必要ができました。子育て中にPythonのチュートリアルビデオを作り始め、少しの空き時間でもビデオを作成して公開を続けたそうです。古いMacbookとQuickTimeを使い、編集をほぼしていないそのチュートリアル動画の公開を続け、現在そのチャンネルには25,000人のチャンネル登録者がいるとのことです
Joeun氏のYouTubeチャンネルは以下です。339本の動画、2.
PyLadiesオークション
2日目の夜はPyLadiesオークションです。このイベントはコミュニティメンバーやスポンサーから提供された物品を、参加者がオークション形式で競り落とすというイベントです。集まったお金はすべて寄付金となり、PyLadiesの運営資金となります。おいしい食事を食べながら、面白おかしく展開するオークションを見られるため、とても楽しいイベントです。
最初にオークションに出品されているアイテムを見て、どれに入札するかを考えます。今年はなんか品数が多いぞ?
写真の
オークションでは競りが始まる前に、アイテムをよく見てもらうためにスタッフがアイテムを持って会場を練り歩きます。それがこの帽子のときには実際にコア開発者が出てきて帽子を被って歩きました。
他には、PSFのブースに展示されていたGuido van Rossum氏の等身大じゃないパネル2枚も出品されていました。写真を見ると上半身はほぼ同じです。この日のために衣装を合わせてきたんでしょうか。
当初思った通りアイテム数が多く、なかなかオークションが終わりません。18:45から開始し、19:20ごろからご飯を食べ始めたPyLadiesオークションですが、22時を過ぎてもまだアイテムが残っていました。最後の方は数点をまとめて
PyLadiesオークションが終わって会場の外に出てみると、橋がPython色にライトアップされていました。長い一日が終わりました。