Linus Torvaldsは9月15日、「Linux 6.11」のリリースを発表した。約2ヵ月の開発期間と7本のリリース候補(RC)版を経た通常通りの開発スケジュールで、リリース時は9月17日開催の「Linux Kernel Maintainer Summit」(オーストリア・ウィーン)の直前だったが、とくに大きな問題が発生することもなく、静かなローンチとなったようだ。
Linux 6.11は最新版のAMDプラットフォームに向けた改善が多く実施されており、なかでも注目されるのが「Zen 3」に実装されている仮想マシン(VM)のセキュリティ機構「SEV-SNP(Secure Encrypted Virtualization Secure Nested Paging)」をx86カーネルでサポートしたことだ。AMDは2016年からSEVと呼ばれるVMのセキュリティ機構を開発しており、VM外部のハイパーバイザによる攻撃(メモリ内部の情報の盗聴など)を防ぐ透過的な暗号化システムを提供してきたが、SEV-SNPはその最新の拡張機能となる。Linux 6.11では「Secure VM Service Module(SVSM)」というRustで書かれたモジュールを利用することで、x86カーネルがゲストとしてSEV-SNPを実行できるようにしている。
Linux 6.11のその他の主なアップデートは以下の通り。
- AMD P-StateドライバにAMD Core Performance Boostコントロールが追加、ターボ/ブースト周波数範囲のオン/オフや個々のコアのパフォーマンスブーストを制御可能に
- AMD Zen 4モバイルプロセッサ(Ryzen)に対応した電力効率機能「AMD Fast CPPC」のサポート
- Intel/AMDプロセッサにおけるAES-GCM暗号化/復号化の高速化(最大160%)
- Intel Gaudi 2Dアクセラレータのサポート
- Intel Meteor Lake以降に搭載のNPU(Neural‐network Processing Unit: 推論アクセラレータ)サポートの強化
- Linus自身によるARM64カーネルコードの改善
- RISC-Vシステムでのメモリホットプラグのサポート
- io_uringサブシステムにおけるblind()およびlisten()のサポート
- Rustで書かれたブロックドライバのサポートの統合(現時点ではnull_blkドライバのみ)
なお、Linux 6.11は今秋リリースされる「Ubuntu 24.10」「Fedora Linux 41」といったメジャーなディストリビューションのカーネルとして採用される予定だ。
Linusはすでに次のカーネルとなる「Linux 6.12」のマージウィンドウをオープンしており、プルリクエストへの対応を開始している。開発が順調に進めば、11月中旬ごろにはLinux 6.12のリリースを迎えることができそうだ。