AlmaLinuxプロジェクトは10月22日、AlmaLinuxディストリビューションの次世代リリースに備える開発ブランチ「AlmaLinux OS Kitten」のローンチを発表した。AlmaLinuxの次期リリースの“ベータ版”に近い位置づけのプレビュー版で、開発者はKittenを利用することで、リリース前に追加された新機能や変更点をテストすることが可能になる。現時点では2025年第2四半期にリリースが予定されている「Red Hat Enterprise Linux 10」をターゲットに、ソースとなる「CentOS Stream 10」から構築した「AlmaLinux OS Kitten 10」を公開中だ。
AlmaLinuxがKittenを公開した理由についてAlmaLinux側は「RHELのマイナーリリースバージョンに対するベータ版提供の終了」を挙げている。Red Hatは2024年2月、「Red Hat Enterprise Linux 9.5」以降はマイナーリリースバージョンを簡素化するとして、これまでマイナーリリース前に提供してきたベータ版の提供を行わないことを明らかにした。この方針変更により、RHELをクローン元とするAlmaLinuxはリリースプロセスの変更を余儀なくされたが、その解決策としてローンチしたのがCentOS StreamをベースにしたKittenである。
Kittenは“Streamではない”
なおAlmaLinuxは「Kittenは“AlmaLinux Stream”ではない。(CentOS Streamをベースにしているものの)KittenはAlmaLinuxの“次期バージョンの開発過程”として位置づけられる」と説明しており、AlmaLinuxの直接のアップストリームであることを強調している。Kittenの提供により、AlmaLinuxコミュニティやAlmaLinuxをアップストリームとするディストリビューション(サイバートラストが提供するMIRACLE LINUXなど)の開発者は、リリース前からリリースプロセス/ビルドプロセスに参加することが可能となる。
また、AlmaLinux OS 10のプレビューとなるKitten 10とアップストリーム(CentOS Stream10 / RHEL 10)との違いについて、以下のように説明されている。
- RHELではデフォルトで無効化されたフレームポインタを有効化
- RHELがサポートを終了した古いハードウェアアーキテクチャ(x86-64-v2)を追加でサポート
- RHEL 9以降にサポートされなくなったSPICE(Simple Protocol for Independent Computing Environments)の有効化
- RHEL 9.0 以降サポートされていないIBM Power用のKVMをサポート
- AlmaLinux 8.10および9.4以降で再度有効化した150を超えるデバイスを引き続きサポート
- アップストリームではCentOS Stream 10リポジトリにあるFirefoxおよびThunderbird RPMパッケージのパッケージバージョンを削除しFlatpakバージョンを使用することを決定したが、AlmaLinux OS Kitten 10ではこれらを引き続き通常のRPMパッケージとして出荷
なお、プロジェクト名を“Kitten”(子猫)にした理由については、「AlmaLinuxはこれまでコード名にcatを使用してきたが、このプロジェクトが次のAlmaLinux catに成長する」という意味を込めたものであるとしている。