OSSデータベース取り取り時報

第110回HeatWave on AWSでの生成AIサポート⁠PostgreSQLの新メジャーバージョン17リリース

この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。

[MySQL]2024年9月の主な出来事

9月はMySQLのバージョンアップはありませんでした。HeatWaveは9.0.1-u1がリリースされています。9月11~12日の2日間、米国ラスベガスにてオラクルの年次イベントOracle CloudWorld 2024が開催され、HeatWaveに関するセッションも複数実施されました

Oracle CloudWorld 2024でのMySQLおよびHeatWave関連の発表事項

HeatWaveでの生成AIのサポートが発表された2023年の同イベントと比較すると、大型の新機能追加などの発表はありませんでした。今回のイベントではオラクルとAWSの戦略的提携Oracle Database@Google Cloudの発表、そしてすでに戦略的提携を発表しているMicrosoft Azureとのさらなる連携の強化など、オラクルのマルチクラウド戦略が数多く発表されてきました。

その一環として、これまでOCI上のHeatWaveで利用できていたHeatWave GenAIによる生成AIサポートをHeatWaveをAWSで利用できるHeatWave on AWSでもサポートすることが発表されました。

HeatWave on AWSでの生成AIサポートでは、HeatWaveに組み込まれたllama2-7b-v1, mistral-7b-instruct-v1, llama3-8b-instruct-v1といったLLM(大規模言語モデル)や、Amazon Bedrockのモデルによるベクトル埋め込みの生成を、HeatWave GenAIにて自動化を利用でき、Amazon S3に格納されたドキュメントに対する自然言語での問い合わせも可能になります。OCI上のHeatWaveと同様にAWS上でもスケールアウトによって性能向上が可能で、検索処理だけではなくベクトル埋め込みの生成もコストパフォーマンス良く高速化できるアーキテクチャとなっています。AWSでのHeatWave GenAIの利用方法などは、YouTubeに掲載のデモ動画をご覧ください。

AWSでのHeatWave GenAIとAWS Bedrockとの性能比較
AWSでのHeatWave GenAIとAWS Bedrockとの性能比較

このほかHeatWave Lakehouseの機能拡張として、HeatWaveでの処理結果をCSVやParquetなど各種の形式でオブジェクト・ストレージに書き出すことが可能となりました。HeatWaveで高速に集計処理などを行った結果を他のアプリケーションなどで利用する場面で役立ちます。

HeatWaveからオブジェクト・ストレージへのデータの書き出し
HeatWaveからオブジェクト・ストレージへのデータの書き出し

[PostgreSQL]2024年9月の主な出来事

PostgreSQLは毎年秋に新しいメジャーバージョンが登場しますが、今年も新バージョンであるPostgreSQL 17がリリースされました。

新メジャーバージョンPostgreSQL 17がついにリリース

前回お知らせしたベータ3のリリース後、9月5日にRC1(リリース候補版)がリリースされました。そして9月26日、バージョン17の正式版がついにリリースされました

PostgreSQL Global Development Groupのトップページでの新バージョン17正式リリースのお知らせ
PostgreSQL Global Development Groupのトップページでの新バージョン17正式リリースのお知らせ

この新メジャーバージョンで追加された機能や変更点については、この連載でベータ版での状況をお伝えしてきましたが、正式リリースを受けて重要と思われる点をピックアップしてみます。

  • パフォーマンスの改善
    • VACUUMの性能やメモリ消費の改善
    • COPY性能の改善
    • ストリームI/Oによる性能の改善
    • WAL排他処理の改善
  • パーティショニングの強化
  • ロジカルレプリケーションの強化
  • セキュリティと運用管理機能の強化

PostgreSQLのメジャーバージョンでは多数の追加や変更点があり、上記はその一部だけです。新機能と変更された機能の完全なリストについてはリリースノートを参照してください。また、下記に紹介するSRA OSSによる「PostgreSQL 17検証レポート」も役に立ちます。

もう出ているPostgreSQL 17検証レポート

9月17日にSRA OSSから「PostgreSQL 17検証レポート」が更新・公開されました

PostgreSQL 17の新機能や性能向上点、非互換変更点の主要なものについて動作検証を行った結果が示されています。動作検証を行った実施手順をコマンドレベルで記載しているので、実際に動作させたい場合のガイドブックとしても有益です。この検証レポートは9月26日の正式リリースよりも前に公開されていることからおわかりのように、ベータ版を元にしたものです。6月27日のベータ2を使用して検証を行い、その後8月8日のベータ3に対応していくつか記載を修正されています。

このレポートにどのような項目が記載されているのかをピックアップして紹介します。上記のようにベータ版が元になってはいますが、正式リリースされたPostgreSQL 17の新機能・変更機能を理解するのにも役に立ちます。

  • 性能向上のセクションでは、新バージョンで性能が改善された機能を実測し、バージョン16.3と比較されています。WAL排他処理の改良、VACUUM性能改善、COPY性能向上、ストリームI/Oなどが測定結果と共に示されています。
  • SQL機能のセクションでは、SQL/JSONの関数・メソッド追加、MERGE文の拡張、COPY FROMにON_ERRORオプション追加、EXPLAIN文の拡張、などが説明されています。
  • ロジカルレプリケーション、パーティショニングについてもセクションを設けられています。
  • クライアント機能としてはlibpqライブラリとpsqlコマンドでいくつか拡張と改善がされていますが、libpqの重要な改善と機能追加が取り上げられています。
  • バージョン17で追加された運用管理機能については次の項目が記載されています。
    • インクリメンタルバックアップ(増分バックアップ)が利用可能になりました。
    • pg_combinebackupコマンドが追加され、完全なベースバックアップにインクリメンタルバックアップを統合できるようになりました。
    • pg_dumpに--filterオプションが追加され、ダンプファイルに出力するオブジェクトを選択・除外することがまとめて指定できるようになりました。
    • サーバの活動状態を見るための新たなビュー pg_stat_checkpointer、pg_wait_eventsが追加されました。
    • 新たな定義済ロールとしてのpg_maintainと、関連してGRANT/REVOKE文で付与・剥奪する権限MAINTAINが新たに追加されました。
  • 旧バージョンと互換性がない変更点についても説明されています。
    • メンテナンス操作時のsearch_path
    • interval型の表現文字列の厳格化
    • SET SESSION AUTHORIZATIONの仕様変更
    • WALファイル名関数の仕様変更
    • システムテーブル/ビューの変更
    • 設定パラメータの変更

OSS-DB認定者数上位企業(2024年版)

9月4日、PostgreSQLの技術認定試験合格者数の企業別ランキングが発表になりました

OSS-DB技術者認定はPostgreSQLの技術認定試験で、⁠OSS-DB Gold」「OSS-DB Silver」という2つのレベルがあります。OSS-DB Goldの認定はPostgreSQLの内部構造についての深い知識を持ち、設計・構築からパフォーマンスの改善やトラブルシューティングまで行える技術力を証明します。OSS-DB SilverはPostgreSQLを使ったデータベースシステムの運用管理を確実に行える技術力を認定するものです。

今回発表されたのは、合格者を多く輩出している企業など組織の2024年版ランキングです。ランキングは、OSS-DB GoldとSilverのそれぞれについて、単年の合格者数と、有意性期限(5年)以内の認定取得者数が発表になっています。このランキングは、PostgreSQL技術者育成に積極的な企業であることを示す指標のひとつになります。

新しいOSS-DB認定教材「OSS-DB Silver 試験対策問題集 Ver3.0対応」がリリース

9月17日、前述の技術者認定試験 OSS-DB Silverの試験対策問題集の新しいバージョンがリリースされました。試験を運営実施しているLPI-Japanの審査を受けた認定教材です。試験範囲であるPostgreSQL 12~14のカテゴリ別練習問題と模擬試験を含めた全154問を収録しており、Amazonから購入できます。現時点では電子書籍では提供されていないようです。

2024年10月以降開催予定のセミナーやイベント⁠ユーザ会の活動

イベントごとに利便性のあるオンライン開催や、従来通りのオンサイト(会場)開催、またはハイブリットが混在するようになっています。興味を持たれて参加したいイベントの開催形態にご注意ください。

データベース技術者のための“自分アップグレード”セミナー

日程 2024年10月3日(木)20:00~21:30
場所 オンライン(ライブ配信)
内容 確かな技術力を身に付けてワンランク上のDBエンジニアになるには、どのようなステップで学習していけばよいのでしょうか。このセミナーでは、DBエンジニアが現在地から自分をアップグレードしていくための指針を明らかにします。OSS-DB Silver取得者、および同等レベルのDBエンジニアが対象です。
主催 株式会社アシスト、特定非営利活動法人エルピーアイジャパン
協力:LinuC Open Network

MySQLによるデータを守るセキュリティ機能と構築のポイント

日程 2024年10月8日(火)16:00~17:00(15:45接続開始)
場所 オンラインセミナー(Zoom)
内容 データベースセキュリティを強化するための具体的な手法とMySQLの強力なセキュリティ機能の活用方法を詳しく解説します。本Webinarでは、SQLインジェクション対策、暗号化設定、ファイアウォールの設定、監査機能の有効化、マスキングの実装など、MySQLのセキュリティ設定を一から学び、ベストプラクティスを習得し、現場で即活用できる具体的なノウハウを提供いたします。
主催 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

次世代高速RDB 劔"Tsurugi"について(日経クロステックNEXT 東京 2024にて)

日程 2024年10月10日(木)14:05~14:35
場所 東京国際フォーラム(東京・有楽町)
内容 劔"Tsurugi"は、従来のRDBに比べて書き込み性能に強く、In-memory/many-coreで性能がスケールするため、高い処理性能を発揮します。本講演では、Tsurugiの特性を生かしたバッチ処理高速化、低遅延AIなどの活用例を中心に紹介をします。日経クロステックNEXT 東京 2024での1セッションです。
主催 日経BP

第49回 PostgreSQLアンカンファレンス@東京

日程 2024年10月12日(土)13:30~17:30ころ(終了時刻は目安)
場所 株式会社アシスト(東京都千代田区)
内容 この回は会場開催です。
  • 初心者による「使ってみた/動かしてみた」
  • 中級者による「こういうノウハウ使ってる」
  • 上級者(?)による「こういう拡張してみた」
その他、PostgreSQLに関連する話題であれば何でもOK!アンカンファレンス形式なので、何が出るかは当日参加してのお楽しみ。
主催 PostgreSQLアンカンファレンス

PostgreSQL 17 最新情報セミナー ~ ポイントをスペシャリストが解説 ~

日程 2024年10月25日(金)15:00~16:30
場所 オンライン開催(Zoom Webinar)
内容 9月末に正式リリースされたPostgreSQL 17では、VACUUM 処理の性能改善、増分バックアップ対応などさまざまな機能強化が行われています。このセミナーではPostgreSQLの概要とバージョン16までの歩みから、PostgreSQL 17の新機能をスペシャリストがわかりやすく解説します。また、セミナー中いつでも講演内容について質問ができるLive Q&Aを実施します。
主催 株式会社SRA OSS

PostgreSQLの障害⁠性能問題解決への道しるべ!「PWR」徹底解説(アシストテクニカルフォーラム2024にて)

日程 2024年10月25日(金)13:00~13:45
場所 オンライン開催(ライブ配信)
内容 PostgreSQLコミュニティの代表貢献企業であるEDB社が日本ユーザーの声を受けて開発した性能分析ツール「PWR⁠⁠。実際の事例をもとに、よくある障害から急な性能劣化まで「PWR」を用いた性能分析・障害調査手法を徹底解説します。これまでにない解決シナリオをご紹介します。
主催 株式会社アシスト

オープンソースカンファレンス 2024(10月開催分)

日程 〔Nagaoka〕2024年10月12日(土)10:30~17:00
〔Online/Fall〕2024年10月18日(金⁠⁠~10月19日(土)10:00~18:00
〔Tokyo/Fall〕2024年10月26日(土)10:00~16:00
場所 〔Nagaoka〕長岡技術科学大学(新潟県長岡市)
〔Online/Fall〕オンライン開催
〔Tokyo/Fall〕東京都立産業貿易センター台東館(東京都台東区)
内容 10月開催の3つの回は、それぞれの開催形態にご注意ください。Nagaoka(長岡)は会場での展示とセミナー、Online/Fallはオンラインでのセミナーのみ、Tokyo/Fall(東京都台東区)は会場での展示のみになります。OSSデータベース関連の展示やセミナーは、出展者の決定後に各開催回のWebページをご参照ください。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

オープンソースカンファレンス 2024(11~12月開催分)

日程 〔Shimane〕2024年11月2日(土)10:00~17:00
〔Yamaguchi〕2024年11月9日(土)11:00~17:30
〔Ehime〕2024年11月16日(土)10:00~18:00
〔Fukuoka〕2024年12月7日(土)10:00~18:00
場所 〔Shimane〕島根県民会館(島根県松江市)
〔Yamaguchi〕山口大学工学部(山口県宇部市)
〔Ehime〕愛媛大学城北キャンパス(愛媛県松山市)
〔Fukuoka〕九州産業大学(福岡県福岡市)
内容 11月と12月開催の上記の回は、すべて会場にて展示およびセミナーが設けられます。一部の回ではオンライン配信も計画されています。OSSデータベース関連の展示やセミナーは、出展者の決定後に各開催回のWebページをご参照ください。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

PostgreSQL Conference Japan 2024

日程 2024年12月6日(金)10:00~18:10
場所 AP日本橋(東京都)6F(東京駅より徒歩5分)
内容 恒例の日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)主催のPostgreSQL Conference Japan 2024は今年は12月6日の開催です。午前に2講演、午後は4トラックで16講演とクロージングセッションが予定されています。イベント協賛、実行委員・スタッフの募集をしております。参加にはチケットの購入が必要です。一般参加チケットは10月6 日から発売予定です。講演終了後の18:30 から懇親会が予定されています。
主催 日本PostgreSQLユーザ会

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