AWS認定資格は、エンジニアがAWSの知識を体系的に学び、スキルを証明できる強力なツールです。効率的に勉強して資格を取得し、実務に活かすにはどうすればよいのでしょうか。2025年1月15日にAWS Startup CommunityとENECHANGE株式会社が共催したイベント
本稿では、その模様をレポートします。イベントの配信アーカイブはYouTubeで視聴できます。
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キーセッション
NRIネットコム株式会社の佐々木拓郎氏がキーセッションを発表しました。佐々木氏は、2013年に初めてAWS認定試験を受験して以来、10年以上にわたり資格取得や学習書籍の執筆を続けています。その経験を基に、試験対策の方法や資格取得の意義を説明しました。
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資格への向き合い方として、次の3つの重要事項を挙げました。
- 試験ガイドをしっかり読み、試験範囲を把握すること
- 対象となるAWSサービスの基本概念を理解し、ハンズオンを通じて実践的なスキルを身につけること
- AWSが推奨する設計原則であるAWS Well-Architected Frameworkに基づいて回答すること
また、佐々木氏はNRIネットコム社でマネージャーや役員を経験した立場から、AWS認定試験の価値について次の3点を指摘しました。
- 体系的な知識を持っている可能性が高い
- その分野において一定レベルのスキルを備えている可能性が高い
- 試験を受けようとする意欲が評価される
ただし、資格そのものが採用や評価の決定的な要因ではなく、資格取得の背景や目的が重要だと強調しました。
さらに、試験対策本の著者としての視点から、AWS認定試験の効果的な学習方法についても解説しました。佐々木氏が執筆時に重視しているのは、AWSが公開する公式情報を活用することです。試験ガイドやFAQなどの公式資料には試験範囲の詳細が網羅されており、これらを徹底的に読み込むことが重要です。加えて、AWSが提供する試験準備コース
最後に、資格取得を目指す過程で得た経験や学びが、将来の仕事に役立つと語りました。資格取得を目指す人々に対し、努力を惜しまずスキルを磨くことの大切さを伝えるとともに、応援のメッセージを送りました。
セッション① あなたの人生も変わるかも?AWS認定2つで始まったウソみたいな話
ENECHANGE株式会社の岩本隆史氏が、自身のキャリアにおけるAWS認定資格の影響について語りました。同社でVPoT
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岩本氏の資格取得のきっかけは、2017年に
AWS認定資格の取得は、岩本氏のキャリアを大きく変える転機となりました。2020年にはLinkedInを通じてAWS社からリクルートされ、同社で経験を積みました。その後、2021年にENECHANGE社に転職し、技術的な知見を高く評価されてVPoTに就任したのです。
資格取得後も継続してAWSに関する学習と情報発信を続けた結果、AWSコミュニティビルダーに認定され、AWS認定資格の全冠取得も達成しました。岩本氏は
AWSは数多くの学習リソースを提供しており、それを活用することで資格取得は誰にでも可能であると岩本氏は力説します。また、AWS認定資格を取るべきか悩んでいる人に向けて
セッション② エンジニア歴1年未満の初心者が3か月でAWS認定試験を全冠した話
アクセンチュア株式会社のTanabe Haruko氏が、エンジニア歴1年未満ながらAWS認定試験全冠を3か月で達成した体験談を語りました。Tanabe氏は2023年5月から8月にかけてAWS認定試験の全冠を取得し、その後Google Cloudの認定試験全冠も達成。現在は
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全冠を目指した当時のスキルレベルは
1つ目は
そして全冠達成の利点として、次の3点を挙げました。
- 目に見える達成感がある
- 学習意欲のアピールにつながる
- 自己紹介時にインパクトの強いネタになる
一方で、短期間で詰め込んだ知識は忘れやすく、実務スキルが伴わない場合には自信を持てないという課題も感じたそうです。そのため、資格取得後は実務経験を通じてスキルを深める重要性を認識したと語りました。
最後に、全冠に挑戦したいと考える人に向けて3つの重要なメッセージとして、
セッション③ 実体験から語る!AWS全冠で得られた価値と全冠取得の道
株式会社スタディストの若松晃洋氏が、AWS認定試験の全冠達成によって得られた価値や学習の道のりについて語りました。
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若松氏は、全冠取得の利点を大きく分けて3つ挙げています。まずは、市場価値の高さです。AWS全冠取得者は日本全体でも非常に少なく、事業会社に所属する全冠取得者はさらに希少性が高いといいます。次に、社内評価の向上です。全冠取得によって、AWSに詳しい人物として社内で認知されるようになったと話します。最後に、業務面での効果です。特にアーキテクチャ構築時に役立つ知識が得られ、試験範囲で学んだ内容が実務のさまざまな場面で活かせると語りました。
次に、仕事をしながら全冠を目指すことの難しさについて触れました。多くの人にとって短期間でまとまった勉強時間を確保するのは難しく、3~4年ほどかけて地道に学習を続ける覚悟が必要だといいます。
具体的な学習方法として、問題集の反復学習を推奨しました。最低でも260問を4セット用意し、それを3周以上解くことで正答率を高めると良いと述べています。ただし、問題を丸暗記するのではなく、内容をしっかりと理解し、AWSの機能を実際に操作することで理解を深めることが重要だと強調しました。また、複数の問題集を活用し、試験範囲を幅広く網羅することが全冠達成のための戦略だと説明しました。
モチベーションの維持については、AWSの公式ブログに
最後に、
パネルディスカッション
イベント後半では、AWS Startup Communityの前田和樹氏がモデレーターを務めるパネルディスカッションが行われました。セッション登壇者たちは、AWS認定資格取得を目指す際のモチベーション維持や効率的な学習方法、資格取得の意義について、実践的なアドバイスを共有しました。
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まず、モチベーションを高める方法について。資格取得の目標を短期間で集中して達成する
そうした事態を防ぐため、長期的な目標を立てたうえで達成度合いをこまめに確認し、小さな達成感を得ていくことが重要です。さらに、資格を取得した後の成果やキャリアへの影響をイメージすることも、学習を続けるモチベーションにつながります。
勉強方法としては、質の高い問題集をくり返し解くことが効果的だと多くの参加者が述べました。特に
さらに、アウトプットを活用する学習方法も効果的です。勉強中に得た知識をブログなどで発信することで、知識が深まり、記憶にも定着しやすくなるのです。特にネットワークのような難解な技術領域では、文章にまとめることで自分の理解が不十分な部分を発見し、補強できたという実例も紹介されました。また、AWS公式のハンズオン資料を利用することや、自社担当のソリューションアーキテクトに相談して実践的な学習機会を得ることも、効果的な方法として挙げられました。
資格を取得することで得られる利点についても、多くの意見が交わされました。特に、市場価値の向上が強調されました。事業会社に所属しながら全冠を達成するエンジニアは希少性が高く、それがキャリアアップのチャンスを増やす要因となります。資格取得によってAWSに詳しい人物として社内外で認知されることも、業務上の評価を高める結果につながります。
さらに、試験を通じて得た知識が、業務外の場面で思わぬ形で役立つこともあるでしょう。たとえば、AWS Direct Connectの知識が特殊なネットワーク接続のプロジェクトで役立った事例が語られました。
AWS認定資格は3年ごとの更新が必要であるため、更新時には過去の内容を復習し、新しい知識を取り入れることが求められます。更新に備えて定期的に問題集や模擬試験を解くことが、資格の維持のみならず知識の定着にも役立つと言及されました。
おわりに
AWS認定資格の取得は簡単ではありませんが、努力次第で必ず成果につながるものです。迷っている方は、ぜひ自分のペースで挑戦を始めてみてください。