大改訂!『図解即戦力AWS』 ——ニャゴロウ式 AWSの学び方指南

[若手エンジニア向け] AWSを学ぶには

新年度となり、多かれ少なかれ環境が変わって1ヶ月。そろそろ落ち着いてきて、新しいジャンルを勉強したいなら、AWSはいかがでしょうか。

AWSのことを人に尋ねると、⁠簡単である」という人もいれば、⁠難しい」という人もいます。それは、どちらも正しくて、⁠操作は簡単だけれど、使いこなそうと思うと難しい」のがAWSなのです。つまり簡単なことであれば、誰でも始められるということですし、バリバリ使いこなしたいならば、学習や経験を積み重ねる他ありません。

どちらにせよ、今始めて困ることなどないのですから、この機会に一緒にスタートしましょう!

この連載では、それぞれのレベル別にAWSの学び方を紹介します。第1回は若手エンジニア向けです。オンプレ構築経験のある人向けや、AWSを既に触ったことのある人向けは次回以降に取り上げます。

AWSとはどんなもの?

まずは、軽くAWSの紹介から入りましょう。

AWS(Amazon Web Services)は、インターネット通販で有名なAmazon.comのノウハウを基にした「クラウドコンピューティングサービス」です。Amazon Web Services社が提供しています。

クラウドコンピューティングサービスとは、かんたんにいえば、サーバー機能やネットワークといった、システム構築にかかわるいろいろなものをインターネット経由で貸してくれるサービスです。いつでもどこでも始められます。

出典:記事末掲載書籍、12ページより

AWSが貸してくれるものは、Webサイトや業務システムを構築・運用するのに必要な機能すべてといっても過言ではありません。コンテンツ以外のおおよそほとんどの機能やサービスが借りられます。

AWSでは、コンピューティング、ストレージ、データベース、分析、ネットワーキング、モバイル、開発者用ツール、管理ツール、IoT、セキュリティ、機械学習、エンタープライズアプリケーションなど、多岐にわたるサービスが用意されています。AWSのさまざまなサービスを組み合わせれば、あらゆるアプリケーションのためのインフラ(サーバーやネットワークなど、システムを稼働させるのに必要な基盤のこと)を実現できます。

AWSで何ができるの?

このような通り一遍の説明では、ピンと来ない人もいるでしょう。もう少し丁寧に説明すると、現在のシステム構築では、サーバーやネットワークが欠かせません。

サーバーとは、プログラムや、データベースを入れて、アクセスしてきた人にサービスを提供する役割のパソコンのことです。皆さんが普段見ているウェブサイトや、業務で使っているシステムなど、多くのサービスがサーバーの形で提供されています。

出典:記事末掲載書籍、47ページより

そして、サーバーがあるだけでネットワークにつながっていないと、そのサーバーにアクセスするのは難しいです。接続する方法がないからです。サーバーを家とするなら、山奥の一軒家になってしまいます。そこで、辿り着くまでの道が必要なのですが、サーバーにおける道の役割がネットワークです。

出典:記事末掲載書籍、48ページより

こうしたサーバーやネットワークは本来、構築するのに時間のかかるものなのですが、AWSでは、インターネット越しにいくつか操作をするだけで簡単に借りられます。それだけでなく、生成AIを手軽に使えたり、データ分析やIoT(家電などのモノをインターネットにつなぐこと)のために必要なものを使えたりと、様々なツールをサービスとしてレンタルできるので、大変便利なのです。

どうやって学べばいいの?

AWSは、⁠特定のサービス」というよりは「サービスの集合体」です。たとえば、Microsoft OfficeにWordやExcelがあるように、AWSにもサーバーを貸してくれるAmazon EC2や、ストレージ(データを保存するもの)を貸してくれるAmazon S3など、様々なサービスがあります。

ですから、⁠何を借りるのか」によって、必要な知識は違うのですが、若手エンジニアの皆さんは、まず「AWSは何ができるのか?」がわからない人も多いでしょう。そこで、以下のような学習の順番をオススメします。

① AWSとは何者なのか概要を知る

AWSとは何者なのか、そして、一体何ができるのかを知りましょう。

時折、最初からハンズオンに挑戦する人がいますが、AWSの場合、僕はハンズオンからのスタートを勧めません。初心者が体験するであろうAWSの操作は、いくつかクリックするだけで、難しいコマンドなどはないからです。それよりも「どんなことができて」⁠なぜこれをクリックするのか」を理解することが肝要です。やっていることがわからないのに手だけ動かして、できた気になってはいけません。

ですから、⁠AWSとは何か」⁠どんなサービスを借りられるのか」⁠サービスを借りる場合に何を選べばいいのか」など、情報収集から始めましょう。

② AWSの操作方法を知る

AWSの概要がわかったところで、ハンズオンです。AWSには無料で試せるものがあるので、確認してみましょう。

多くの初心者は、Amazon EC2で、インスタンスというものを立てるところからはじめると思います。AWSでは、最近、コンテナ技術(Dockerが代表的)や、サーバーレス(AWS Lambdaが有名⁠⁠、IaC(インフラを定義ファイルでスチャっと作る仕組み)などを使いこなすことが必須と言われていますが、あなたがもし、右も左もわからない状態で、1人で勉強しなければならないのであれば、まずはEC2から始めましょう。いきなり応用から入っても、脱落してしまう可能性が高いです。小学校1年生に、分数の割り算をやれと言うようなものです。最初は足し算から始めるのが無難です。

一方、親切な先輩や上司、できる友人など、頼れる人がいるのであれば、彼らのオススメするハンズオンを試してみましょう。良いショートカットになる方法を教えてくれるかもしれません。

また、オンプレなどでサーバー構築のノウハウがあるのであれば、好きなサービスから始めて構いません。⁠AWSとはどんなものか」をわかったのであれば、どのサービスを試すべきか、自ずと見えてくるでしょう。

ハンズオンで大事なのは、感覚を掴むことと、そのサービスについて深く知ることです。机上の学習では、素通りしてしまうような項目も、実際に操作するとなれば「どれを選んだら良いのか?!」と悩みがちです。特に、操作方法を身につけたいのであれば、一度やって満足するのではなく、繰り返し試してみると良いでしょう。

③ AWSを自分のプロジェクトにどう活かせるのか考える

AWSは、業務システムなどを載せるためのインフラ(サーバーやネットワークなど)を借りられるサービスです。

つまり、⁠何か載せるもの」があることが前提です。ソフトクリームであれば、AWSとはコーンの部分です。世の中には、コーンだけを食べたい人がいるのは承知していますが、僕を含めた多くの人にとってのメインはソフトクリームであるはずです。

そして、ソフトクリームを載せるコーンには、いくつか種類がありますね。お店によってはコーンではなく、紙カップであることもあります。コメダ珈琲店の「シロノワール」のようにパンの上にのることもありえます。

あなたは、⁠自分のソフトクリームに合うコーンはどんなものか」を考えるように、⁠自分のプロジェクトに最適なインフラはどのようなものか」を考える必要があります。あくまで、メインはプロジェクトです。AWSを使うことは目的ではないのです。

そのためには、プロジェクトについて良く知ることはもちろんのこと、どんな選択があるのか、考えてみましょう。

④ AWSのサービスを使うための「前提知識」を知る

AWSのことや、自分のプロジェクトのことがわかってきたら、さらに知識を深めましょう。知識は「自分の足元」を意識すると良いでしょう。

「自分の足元」とは、使うサービスの前提知識や周辺知識です。あなたが実際に構築する技術者であるならば、Linux(サーバーでよく使われるOS)や、DBMS(データベースを使うためのミドルウェア)などの知識は必須でしょうし、ネットワークについてもルーティングやNATなどの知識は押さえておきたいところです。

そうではなく、AWSでの設計などを担当しそうであれば、インフラ設計と運用方法(バックアップなど)に関する深い知識を学ぶべきでしょう。

営業や企画、マネジメントなどを担当するのであれば、操作方法や構築方法よりも、AWSサービスやドメイン知識について顧客に説明できるほどの深い理解が必要です。

つまり、むやみやたらに全部を学ぶだけの時間は取りづらいので、自分の業務を行うのに何が必要か考えて学ぶということです。声の大きい人が「これが必須」と叫んでいるかもしれませんが、それはその人にとって必須のものです。あなたにとって必須とは限りません。会社も違えば、プロジェクトも違います。自分のプロジェクトにとって必要なものは何か?を常に意識してください。

「AWSは難しい」とぼやく人の多くが、AWSではなく、こうした自分の足元の知識で躓いています。AWSは、丸暗記すれば使えるものではありません。サービスの種類や操作方法がある程度わかることは大前提として、自分で考えなければプロジェクトに適したインフラは作れないのです。

AWS1年生がバリバリのAWSスペシャリストになるには

いろいろと述べましたが、AWSは幅広く、深さもあるサービスです。一朝一夕には難しいでしょう。皆さんは、AWS1年生です。バリバリのAWSスペシャリストになるためには、いくつか積み重ねなければならない勉強や経験があります。1冊の本や、1年程度でどうにかなるものではないので、焦らず、着実に理解していきましょう。まずは「1年生の内容」をきちんと終えることを目標にしてください。

次回は、オンプレとクラウドの違いや、オンプレミス経験者が何を学ぶべきか?今回の内容が身についてきたら、そちらに進むと良いでしょう。

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