OSSデータベース取り取り時報

第117回MySQL and HeatWave Summit開催⁠PostgreSQLエンタープライズ⁠コンソーシアム成果報告会がまもなく

この連載は、OSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。

[MySQL]2025年4月の主な出来事

MySQL 9.x系のイノベーション・リリースのMySQL 9.3.0が公開されました。また、MySQL 8.4 LTSとMySQL 8.0の各マイナーバージョンおよび各クライアント・プログラムがリリースされました。なお接続部品のConnectorのバージョン9.3からは、サポート中のすべてのMySQLサーバーのバージョンに接続可能になっており、8.4.4や8.0.45はリリースされていません。ただしMySQL Shellはバージョン間の互換性の関係から8.4.4と8.0.45がリリースされています。

MySQL and HeatWave Summit 2025

4月22日、23日の2日間の日程で、MySQLの年次イベントのMySQL and HeatWave Summit 2025が、米国カリフォルニアのOracle Conference Centreにて開催されました。MySQLのロードマップや開発の方向性、最新のイノベーションが紹介されていました。

MySQL and HeatWave Summit 2025の会場の模様
MySQL and HeatWave Summit 2025の会場の模様

事例講演の中では、レストランのレビューサイトであるYelpでのレプリケーションを活用した5.7から8.0へのバージョンアップや、日本でも利用者が増えているUberでの2,000クラスタ、17,000台を超えるMySQLサーバーの高可用性構成や運用の工夫が解説されていました。

初日の夜にはMySQLコミュニティチーム主催で30周年を記念するパーティーが開催され、以前MySQL開発チームに所属していたメンバーも集結し、30周年を盛り上げていました。

イベント翌日には、お客様とMySQLの開発チームが今後のMySQL開発の方向性について議論を行うクローズドのイベントが行われました。お客様が自社でのMySQLの利用形態や運用上の課題を詳細に開示することもあり、参加者全員に機密保持契約が求められるイベントであったため詳細は公開できませんが、ソフトウェアとしてのMySQLとクラウドサービスのHeatWaveを両輪として、機能の強化を進めていくためのディープな議論が行われていました。

なお、このイベントのハイライトを日本でご紹介するイベントが、5月20日に日本オラクルの本社セミナールームにて開催予定となっています。

オラクルのキャンパスの外周道路に設置された交通標識風のMySQL 30周年記念の看板
オラクルのキャンパスの外周道路に設置された交通標識風のMySQL 30周年記念の看板

MySQL 9.3.0イノベーション⁠リリースでの新機能や変更点

Kubernetsなどのコンテナ環境でMySQLを利用する場合、InnoDBのパラメタのうちハードウェアのリソースに応じて設定される値が、ホスト側のスペックではなくコンテナのスペックを認識した設定となります。

論理CPU数に応じた値に設定されるパラメータ
  • innodb_buffer_pool_instances
  • innodb_page_cleaners
  • innodb_purge_threads
  • innodb_read_io_threads
  • innodb_parallel_read_threads
  • innodb_redo_log_capacity ⁠--innodb-dedicated-server を指定した場合)
  • innodb_log_writer_threads
コンテナで利用可能なメモリに応じて設定されるパラメータ
  • temptable_max_ram
  • innodb_buffer_pool_size ⁠--innodb-dedicated-server を指定した場合)

MySQLサーバー本体ではありませんが、論理バックアップのためのmysqldumpにユーザー情報をダンプするための--userオプションが追加されています。--include-user=user@host、--exclude-user=user@hostの形式で、特定のユーザーの情報のみを含めるか除外するかも指定できます。

開発者向けのOTNライセンスのMySQL Enterprise EditionやHeatWaveでも利用できるJavaScriptのストアドプログラムも引き続き改良されており、JavaScript Internationalization APIを利用して日時のロケールに対応したほか、JavaScriptライブラリのダイナミック・ローディングのためのawaitキーワードの追加などが行われています。

また、グループ・レプリケーションに関する改良として、フェイルオーバー時にどのセカンダリを昇格させるかを決定するオプションを提供するPrimary Electionコンポーネント(component_group_replication_elect_prefers_most_updated)がEnterprise Edition限定で追加されています。

[PostgreSQL]2025年4月の主な出来事

4月はPostgreSQL本体のリリースはありませんでした。今後のリリースは5月、8月、11月の予定になっています。マイナーバージョンがこの予定でリリースされると思われますが、そろそろ次期メジャーバージョンの最初のベータ版もお目見えするかもしれません。そこで、一足早くその新バージョンに関する情報をピックアップ。それから、バージョンアップがあった異種DBMSからの移行ツールの情報、国内の主要団体であるPostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアムの活動成果発表会の開催案内をお伝えします。

次期メジャーバージョン18に関する情報

次期メジャーバージョン18の正式リリースは秋に予定されていますが、そろそろベータ版がお目見えしそうな時期になってきました。昨年のバージョン17は、5月にベータ1がリリースされていました。そこで、PostgreSQL 18に関する情報をいくつか拾い集めてみました。

PostgreSQL 18: オープンデータベース開発の30年
チェコ語で書かれたPostgreSQL 18情報ですが、Webブラウザの翻訳機能のおかげで難なく読むことができます。
PostgreSQL 18は4月初旬に開発が凍結され、インデックススキップスキャンのサポート、不要な操作によって実行プランを削減するオプティマイザの機能強化に関する作業が最終段階に入っているようです。
pgPedia - PostgreSQL 18
個別の解説は付いていませんが、コミットフェストの経緯、変更点が詳細に列挙されています。
「PostgreSQL 17とその後⁠技術者Blog」からPostgreSQL 18とその後
1つ前のメジャーバージョン17のリリース時点での情報なので、バージョン18に取り込まれないことになった機能も挙がっているかと思いますが、1年前に期待されていたことが確認できる情報です。

異種DBMSからの移行ツールOra2Pgの新バージョンリリース

4月20日に、Ora2Pgのメジャーバージョン25.0がリリースされました。1つ前のバージョンアップは2024年3月にバージョン24.3が、メジャーバージョンアップは、2023年7月に24.0がリリースされていました。

Ora2Pgは、OracleなどからPostgreSQLへの移⾏ツールで、移⾏評価レポート、定義・SQLの変換、データの移⾏などの機能が提供されます。

Ora2Pgの日本語解説はこちらのページがおすすめです。また、PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)の技術部会(移行ワーキンググループ)でも検証を行い移行ガイドで解説をしています

5月30日にPostgreSQLエンタープライズ⁠⁠コンソーシアムが成果報告セミナーを開催

国内の有力企業が集まって共同でPostgreSQLの普及・啓蒙活動や技術検証活動を行っているPostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)は、年度ごとに活動成果をまとめて発表をしています。前期2024年度の活動成果の成果報告会が5月30日(金)にオンラインにて開催されます。活動成果報告やその他のテーマを設けたセミナーなど、通算で32回目のイベントになります。

セミナーのプログラムですが、技術部会の3つのワーキンググループ(WG)とコミュニティリレーション(CR)部会から活動成果が報告され、運営委員会から2025年度活動計画の概要が発表されます。開催概要や申し込み方法については、後述のイベントコーナーをご覧ください。毎年、PGEConsの成果報告セミナーはテーマのバリエーションも多く、個々の発表の密度も高い、硬派系のイベントとなっています。その分、他では聞けない貴重な知見もたくさん発表されるのではないかと期待しています。

PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアムのロゴ
PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアムのロゴ
新技術検証ワーキンググループ(WG1)バージョン間性能比較
毎年恒例となっているPostgreSQLの新旧バージョンの性能測定を実施しています。2024年度は、PostgreSQL 16と17のメニーコアCPUにおける性能検証を行っており、活動成果報告として16から17への性能変化の有無や傾向を紹介します。
移行ワーキンググループ (WG2)PostgreSQLロールによる権限管理入門
2012年からPostgreSQLへのデータベース移行作業工程と工程ごとの作業内容について調査・検証を進めてきました。2024年度はこれまでの活動であまり触れられていなかったロールや権限に着目した活動を実施しています。活動成果報告では、PostgreSQLのロールの基本的な考え方や権限、定義済みロールなどについて、商用DBMSとの差異を交えながら紹介します。
課題検討ワーキンググループ (WG3)Amazon Aurora Limitless Database検証
2024年11月に一般提供が開始されたAmazon Aurora Limitless Databaseに対して机上、実機検証を行いました。机上検証では、従来のAuroraとの機能・非機能観点での違いを調査し、実機検証ではTPC-Cベンチマークを用いて性能の違いを確認しています。
CR(Community Relations)部会⁠2024年度活動報告
CR部会は、エンタープライズ領域でのPostgreSQL適用拡大のため、PostgreSQL開発コミュニティへの技術的課題のフィードバックを目的に活動しています。この発表では、PGECons 設立当初に参加企業から寄せられた「基幹領域への適用におけるPostgreSQLの抱える課題」について、課題の解決状況や具体的な我々のフィードバック活動をご報告します。

2025年5月以降開催予定のセミナーやイベント⁠ユーザ会の活動

イベントごとに利便性のあるオンライン開催や、従来通りのオンサイト(会場)開催、またはハイブリットが混在するようになっています。興味を持たれて参加したいイベントの開催形態にご注意ください。

オープンソースカンファレンス 2025(5月~7月開催)

日程 〔Shirahama〕2025年5月17日(土)10:00~18:00
〔Nagoya〕2025年5月31日(土)10:00~18:00
〔Shimane〕2025年6月21日(土)10:00~17:00
〔Hokkaido〕2025年7月5日(土)10:00~18:00
場所 〔Shirahama〕INNOVATION SPRINGS(和歌山県白浜町)
〔Nagoya〕中小企業振興会館(名古屋市千種区)
〔Shimane〕松江テルサ(松江市)
〔Hokkaido〕札幌市産業振興センター 産業振興棟(札幌市白石区)
内容 和歌山の白浜で初めて開催されるShirahamaが発表されました。1トラック構成のカンファレンスと展示が設けられます。Nagoyaはセミナーのタイムテーブルや展示ブース出展者が公開されています。ShimaneとHokkaidoは出展者募集中で、募集締切はShimaneが5月23日、Hokkaidoが5月19日です。OSSデータベース関連の発表については、公開されるプログラム詳細をご参照ください。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

MySQLサーバーからHeatWave MySQLへの移行⁠パフォーマンスとコストの最適化

日程 2025年5月13日(火)16:00~17:30
場所 オンラインセミナー(Zoom)
内容 このウェビナーでは、オンプレミスなどのMySQLサーバーからOCI上のHeatWave MySQLへの移行のメリットと手順について解説します。移行のベストプラクティスとトラブルシューティングの方法について学び、自社のデータベース環境を最適化するための実践的なアドバイスを得ることができます。
主催 本オラクル セミナー事務局

MySQL & HeatWave Summit 2025 フィードバック⁠セミナー

日程 2025年5月20日(火)14:00~17:30
場所 日本オラクル 本社 13F セミナールーム(東京都港区北青山2-5-8)
内容 2025年4月に米国で開催されたMySQL & HeatWave Summit 2025のハイライトをお伝えするイベントです。MySQLの最新情報やロードマップ、ならびにマネージドサービスのHeatWaveの生成AIやLakehouse, 新しいオプティマイザなど、最新の技術情報が発信されたMySQLのフラッグシップ・イベントの模様をお伝えするとともに、MySQLの重要な技術トピックスをご紹介します。
予定している講演テーマ:
  • MySQLサーバーの最新の技術アップデート
  • DevOpsの効率を向上させるMySQL Shellの便利機能
  • MySQLサーバーをIaaS上で構築・運用する際の実践的なベストプラクティス
  • HeatWaveの技術アップデートおよびロードマップ
主催 日本オラクル セミナー事務局

Oracle Cloudウェビナー - MySQLをベクトル⁠ストアとして活用し⁠セマンティック検索をする方法

日程 2025年5月21日(水)15:00~16:00
場所 オンラインセミナー(Zoom)
内容 翔泳社のオンライン・メディアDB Onlineの連載記事「MySQLとHeatWaveが切り開くオープンソース・データベースの新基準」を執筆するMySQL クラウドエバンジェリストである山﨑が、HeatWaveの生成AI機能であるHeatWave GenAIを使ってRAGを実現し、LLMをより活用する方法を解説予定。申し込みページは近日公開予定です。
主催 日本オラクル セミナー事務局

超高性能なのにリーズナブル!クラウドデータウェアハウスはHeatWaveに触る前にあの製品に決めてはダメ!

日程 2025年5月20日(火)16:00~17:45
場所 日本オラクル 本社 13F セミナールーム(東京都港区北青山2-5-8)
内容 「大量データを入れたHeatWaveにBIツールを繋いで、その凄さを実感しよう」
HeatWaveの強みや他社のクラウドDWHとの違いについて、実機環境の利用を通して受講者の皆様に体感いただくセッションをお届けします。ハンズオン・体感コーナーにおいては、3000万件の実際のPOSデータを利用し、一連のデータ活用におけるHeatWaveのメリットを体験いただきます。
主催 日本オラクル セミナー事務局

PostgreSQLエンタープライズ⁠コンソーシアム成果報告セミナー

日程 2025年5月30日(金)13:30~16:15
場所 オンライン開催(Zoomウェビナー)
内容 本文でも紹介しましたが、PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)の2024年度分の活動成果の成果報告会です。各部会・ワーキンググループが勢揃いして成果をまとめて報告します。ご参加される方はconnpassから事前エントリをお願いします。
主催 PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)

Amazon RDS for MySQLからHeatWave MySQLへの移行し⁠コストパフォーマンスを大幅改善

日程 2025年6月11日(水)16:00~17:30
場所 オンラインセミナー(Zoom)
内容 このウェビナーでは、Amazon RDSからOCI上のHeatWave MySQLへの移行のメリットと手順について、実際のデモを交えながら解説します。移行のベストプラクティスとトラブルシューティングの方法について学び、自社のデータベース環境を最適化するための実践的なアドバイスを得ることができます。
主催 日本オラクル セミナー事務局

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