ノートアプリ「Obsidian」を使いこなす

進化を続けるObsidianの最近の変化とは—⁠—データベース型の情報管理やWeb閲覧⁠AIを利用したチャットや文章整形⁠関連ノートの検索が可能に

書籍Obsidianで⁠育てる⁠最強ノート術の発売から1年半が経過し、その間にObsidianは数多くのバージョンアップを重ねています。書籍の発売当時は1.4.5というバージョンでしたが、この記事執筆時点では1.9.1にまで進化しました。この期間に追加されたコアプラグインや注目を集めているコミュニティプラグイン、新たな機能について紹介します。

コアプラグイン

Obsidianには公式として提供されているコアプラグインと、第三者が提供するコミュニティプラグインがあります。コアプラグインは追加でのダウンロードが不要で、使うかどうかを利用者がオプションとして選択できます。まずはこのコアプラグインとして追加された機能を紹介します。

Basesプラグイン

Obsidian 1.9.0で新たに追加されたコアプラグインBasesは、Obsidian内でNotionのデータベースのように情報を整理・管理できるプラグインです。これまでもデータベースのように扱えるコミュニティプラグインとしてDataviewDB Folderが人気でしたが、Basesはこれらの中間的な位置付けの使い勝手を実現しています。Dataviewの柔軟なクエリ機能とDB Folderの手軽さといった良いところを取り入れ、より直感的にデータを扱えるのが特徴です。

たとえば、読んだ本を管理するノートを作成するとき、次のようにMarkdown形式のファイルに書誌情報を記録したとします。Markdownのフロントマター部分(ファイルの冒頭)にYAML形式でノートを作成したもので、⁠プロパティ」とも呼ばれます。

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title: Obsidianで“育てる”最強ノート術
genre:
  - ノート術
release_date: 2023-10-18
publisher: 技術評論社
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# Obsidianで“育てる”最強ノート術

このようなファイルを格納したフォルダでコマンドパレットから「Create new bases」を実行すると、図のような一覧を表示できます。

このように、1つのMarkdownファイルがデータベースの1レコードに対応していることが特徴です。つまり、レコードを増やすにはMarkdownファイルを作成するだけです。

そして、フィルタ条件の設定や表示する項目の追加なども画面上部の「Filters」「Properties」からマウスで操作するだけです。

さらに、データベースのような表示をノート内に埋め込んで記述することもできます。たとえば、Markdownファイル内に次のような記述をすると、ノート内にテーブル形式で表示でき、並べ替える項目などもテキスト形式で指定できます。

# 書籍一覧

この下に読んだ本の一覧を表示します。

```base
views:
  - type: table
    name: Table
    order:
      - file.name
      - title
      - publisher
      - release_date
    sort:
      - column: property.release_date
        direction: DESC
```

現状ではテーブル形式での表示だけですが、これまで作成したノートをより柔軟にデータベースのように扱えます。

このコアプラグイン「Bases」は、執筆時点で「Catalyst」というプランに参加していて、アーリーアクセスのバージョンをインストールしている利用者限定に提供されています。まだベータ機能なので今後変わる可能性もありますが、近いうちに一般の利用者でも利用できるでしょう。

Web viewerプラグイン

これまで、Webサイトの内容をメモとしてまとめるときは、WebブラウザとObsidianをそれぞれ開いて作業していました。しかし、Obsidian 1.8.0で追加されたWeb viewerプラグインを使うと、図のようにObsidianでノートを開きながらアプリ内でWebサイトを閲覧できます。

それだけでなく、図のアドレスバーの右側にある眼鏡マークのアイコンを押すことで、本文の部分だけを表示できます。さらに、図のメニューとして表示している中から「Save to vault」を選ぶと、開いているページの内容をMarkdown形式でノートとして保存できます。メニューやサイドバーなどは自動的に除去されて本文のみを保存できるため、Webページの内容を単に保存したいときにはとても便利です。

コミュニティプラグイン

前回はObsidianをClineなどと連携してAIを活用する方法について解説しました。しかし、Obsidian単体でもAIを活用できます。このときに便利なコミュニティプラグインについて紹介します。

Copilotプラグイン

Obsidian内でAIアシスタントとして機能し、ノートの要約や質問への応答、文章の生成などができるのがCopilotプラグインです。作成したノートを読み込み、内容に基づいてAIと対話したり、編集をサポートしてくれたりします。このため、ノートの整理やアイデア出しに活用できます。

さまざまなLLMを選択できるので、自分が使っているLLMのAPIキーを指定すると、そのLLMを実行できます。たとえば、前回の記事で紹介したような「Gemini 2.0 Flash」といったモデルを選択することもできます。

このプラグインを導入すると、次の図の画面左端の一番下にチャットのアイコンが表示され、これを押すとLLMとチャットとして文章を生成できるようになります。これだけでも便利に使えますが、ノートの中から文章を選択して右クリックしたときに表示される、図のようなメニューです。

ここには、⁠Copilot」で始まるメニューが追加されており、翻訳や要約、文法やスペルのチェックなどができますし、文章を短くしたり長くしたりすることもできます。

Smart Connectionsプラグイン

自分が作成したノート間の関連性をAIが解析し、関連するノートを瞬時に提示してくれるのがSmart Connectionsプラグインです。ローカルで動作する埋め込みモデルを使うだけであれば、LLMのAPIキーなどは不要で、プライバシーを保ちながらノート間の関係を把握できます。

このとき、ページ内からのリンクは不要で、次の図の右にあるように、関連するノートを関連度と合わせて表示してくれます。

また、⁠Smart Lookup」という機能があり、キーワードでノートを検索できます。このとき、ノートの内容と完全に一致している必要はなく、関係すると思われるノートをその関連度と合わせて表示してくれます。

さらに、⁠Smart Chat」という機能もあり、ノートに関する質問をしたり、ノートを作成したりできます。

その他の機能

その他にもObsidianそのものの機能強化や、Webブラウザの拡張機能などが登場しており、便利に使えるようになりました。

テーブルの操作機能の強化

Markdown形式で表を作成するとき、次のように記述します。これまではコミュニティプラグインを使わないと、Markdown記法を使って手動で編集する必要があり、列の追加などは面倒でした。

| 項目 | 内容 |
| --- | --- |
| タイトル | Obsidianで“育てる”最強ノート術 |
| 著者 | 増井 敏克(増井技術士事務所 代表) |
| 価格 | 2,200円(2,000円+税) |
| ページ数 | 208ページ |
| 出版社 | 技術評論社 |
| 発売日 | 2023/10/18 |

しかし、Obsidian 1.5.0で大幅に改善されたテーブル操作機能により、Markdownの表に対して列や行の追加、削除、並べ替えをマウス操作で直感的に行えるようになりました。GUIでの操作が可能になったことで、表形式のデータ管理が格段に楽になりました。

Obsidian Web Clipper

Webブラウザの拡張機能として、Obsidian Web Clipperが2024年に公開されました。メモアプリの王者として長く君臨してきたEvernoteは、特にWebサイトのクリップ機能で高い評価を受けていました。単にお気に入り登録するのではなく、閲覧中のWebページの内容をそのまま保存して後から参照できる点が、多くのユーザーに支持されてきました。

Obsidianは2024年まで、公式のWebクリップ機能を持っていませんでした。手動でコピー&ペーストする方法はありましたが、効率的とは言えず、Web情報の取り込みに工夫が必要でした。

しかし、⁠Obsidian Web Clipper」の登場により、この状況は一変します。このプラグインはブラウザ拡張機能として提供され、Google Chrome、Microsoft Edge、Mozilla Firefox、さらにはSafariにも対応しています。

大きな特徴として、Webサイトのドメインごとにクリップする内容をカスタマイズできるところです。たとえば、Amazonの商品ページをクリップするとき、商品名や価格、評価、画像など必要な情報だけを抽出してノートに保存できます。事前にテンプレートを作成しておけば、ワンクリックで必要な情報を整理して取り込めるため、効率よく情報を収集できます。

まとめ

Obsidianは豊富なコミュニティプラグインによって日々進化しています。さらに、Basesのようなデータベース機能の強化により、Obsidianは個人の知識管理だけでなく、データベースとして活用できる可能性があります。

もちろん、あくまでもプラグインなので使うかどうかは利用者に任されています。そして、変わらないこととして、いずれのノートもMarkdown形式でデータが保存されていることが挙げられます。データベースのような機能が追加されても、データはあくまでもMarkdown形式です。これまでに作成したノートがそのまま使える状態を保ちつつ、より使いやすいノートアプリとして開発が進んでいるのです。

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