プライベートクラウドFlavaや開発フレームワークArk Developerなどを公開 ――LINEヤフー初となる対外テックカンファレンス「Tech-Verse 2025」初日基調講演速報レポート

2025年6月30日、7月1日の2日間、LINEヤフーとして合併してから初となる、対外向けのテックカンファレンス「Tech-Verse 2025」が開催されている。

以前のLINEおよびヤフーがそれぞれ取り組んできている技術に関して、合併により開発が進み進化した新技術やプロダクトについて、初日のキーノートで発表された。

初日のキーノートは、LINEヤフー株式会社 上級執行役員/CTOの朴イビン氏と、執行役員/サービスインフラグループ長の冨川修広氏の両名が担当した。本キーノートでは、大きく次の2点について発表と解説が行われた。

  • LINEヤフーのプラットフォーム統合
  • LINEヤフーが実践するAI戦略

ワールドワイド戦略「CatalystOnePlatform」とLINEヤフーのプライベートクラウド「Flava」

まず、冨川氏から、LINEおよびヤフーという大規模サービスを運営し続けてきた両社の合併だからこそ出せるプラットフォームの強みとして、コストメリットと3つの柱について説明された。

LINEヤフー株式会社 執行役員/サービスインフラグループ長の冨川修広氏(提供:LINEヤフー株式会社)
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この3つの柱とは、

  • 単一基盤への統合による開発環境の整備
  • 顧客への安心・安全を提供するためのセキュリティの強化
  • 強固なプラットフォームを土台としたイノベーションの加速

これらの考え方を元に、⁠CatalystOnePlatform」と名付けられたLINEヤフーがワールドワイドで取り組むプラットフォーム基盤戦略が紹介された。

LINEヤフーグループのワールドワイド戦略「CatalystOnePlatform」
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CatalystOnePlatformとは、2030年までにLINEヤフーグループ全体が目指す形の共通プラットフォームの総称。

CatalystOnePlatformの核となるLINEヤフーのプライベートクラウド「Flava」

全体像としてのCatalystOnePlatformの紹介の後、現在開発が進み、提供開始となったさまざまな技術やプロダクトについて触れられた。

その中でも、核となるのがプライベートクラウド「Flava」である。

「今までの両社のプライベートクラウドやそれに関連する技術の集大成として、プライベートクラウドの統合プロジェクトとして開発されてきたもので、2025年度中には、開発進行中の機能を含め、すべての機能がリリースされ、既存環境からFlavaへの移行が完了する予定です」と冨川氏から発表が行われた。

LINEヤフーのプライベートクラウド「Flava」
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Flavaでは、パブリッククラウドと比べて、VMにおいてCPUやメモリで20~30%高いパフォーマンスを実現するとのこと。その他、Flavaに関する技術的解説が、Tech-Verse 2025のセッションで用意されている。

Flavaのベンチマーク
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データプラットフォームの統合

Flavaという形でのプライベートクラウドの統合とともに、CatalystOnePlatformの核を担うのがデータプラットフォームの統合である。こちらも、LINEおよびYahoo! JAPANという、日本国内でも有数のサービスを運営し、国内最大級のデータプラットフォームを運用してきた企業同士の合併だからこそ行えることして、この部分をLINEヤフーの強みとして取り上げた。

データプラットフォームの統合においては、安全性・堅牢性、統一されたUI/UX、それらによって生み出されるイノベーションを目指し、⁠Snowball of Data Utilization(データ活用の増幅⁠⁠」という表現で、⁠つねに信頼されるプラットフォームを目指し、あり続けることを約束します」とコメントし、冨川氏のセッションが締めくくられた。

LINEヤフーのAI戦略

サービスとしてのAIエージェントと生産性向上のためのAI活用

次に、朴イビン氏から、LINEヤフーのAI戦略が紹介された。

LINEヤフーのAI戦略は、大きく次の2つの方針で考えられている。

  • あらゆるサービスをAIエージェントに変化・進化
  • 生産性の大幅な向上

前者は、LINEヤフーが提供するサービスのユーザ向け、後者はLINEヤフー社員を含めた、社内での取り組みに関するもの。

すでにYahoo! JAPANの各種サービスやLINE AIやLINE AI Talk Suggestionのように提供されているもの、ヤフーショッピングにおけるAIエージェントやLINE AI Friendsなどこれから提供が予定されているものが紹介され、今後は、これらを共通のAIエージェントロゴを付けることにより、LINEヤフーの各種サービスにおけるAIエージェントの常態実装が行われるとのこと。

LINEヤフーのAIエージェントに関する共通ロゴ
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また、生産性の向上に関しては、たとえばカスタマーサービスにおけるAIの活用や社内向けAI通訳サービス「Scout⁠⁠、社内向け情報共有・活用向けのAIエージェント「SeekAI」など、外部からは見えない部分でもAIエージェントの導入推進、活用が進んでいることが紹介された。

LINEヤフー内におけるSeekAIの活用範囲
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また朴イビン氏は「今紹介したものの多くは内製のAIおよびAIエージェントではありますが、それだけに閉じず、オープンに、外部のものでも効果が期待できる技術はどんどん採用していきます」と、AIに対して柔軟な組織体制であることを強調した。

開発環境フレームワークArk Developer

初日の基調講演最後に朴イビン氏から紹介されたのが、これまでプロジェクトWillowとして開発が進んでいた、新たな開発環境フレームワーク「Ark Developer⁠⁠。

Ark Developerでは、AIを活用しながら写真のようなフローを実践することで、開発生産性の向上を目指していくとのこと。

LINEヤフーが提唱する開発環境フレームワーク「Ark Developer」
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ちなみに、Ark Developerによる開発により、下図のような効率化を実現したとのこと。

Ark Developerによる開発生産性の向上
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最後に朴イビン氏は「AI利活用においてはデータの取り扱いが最重要となります。LINEヤフーでは、この点を意識して、これからもWOW!な日常を提供することを目指し、さまざまな技術を採用し、開発を進めていきます。ぜひこのあとのTech-Verse 2025の各セッションをお楽しみください」とコメントし、初日のキーノートを締めくくった。

LINEヤフー株式会社 上級執行役員/CTOの朴イビン氏(提供:LINEヤフー株式会社)
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Tech-Verse 2025
https://tech-verse.lycorp.co.jp/2025/ja/

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