参加総数2500名超え! 世界一のTypeScriptカンファレンス「TSKaigi 2025」レポート

2025年5月28日、29日の2日間にかけてベルサール神田で世界最大級のTypeScriptをテーマとした技術カンファレンスTSKaigi 2025が開催されました。

昨年のTSKaigi2024では1日での開催でしたが、今回初の試みとして2日間開催となりました。参加者数も昨年より多い約2,500名になり、世界一のTypeScriptに特化した技術カンファレンスとなりました。

今回筆者は運営チームの一人として参加しました。本稿では、現地で走り回っていた視点から2日間にかけて開催されたTSKaigi 2025がどんなカンファレンスだったのか、レポートにまとめてみます。

Day1

【招待講演】The New Powerful ESLint Config with Type Safety

今年のTSKaigiでは、Vue.jsやViteといった著名なオープンソースプロジェクトへの貢献で知られるAnthony Fu氏を招待講演者として迎えました。Anthony氏はThe New Powerful ESLint Config with Type Safetyと題して講演しました。

Anthony氏

Anthony氏は、ESLintの新しい設定ファイル形式のフラットコンフィグの可能性と、それを取り巻くエコシステム、そして何よりも型安全性を担保しながら設定を構築していくための新しいアプローチを解説しました。複雑化しがちなESLintの設定をシンプルかつ強力にし、日々の開発体験を大きく向上させるための知見を惜しみなく共有しました。TypeScriptプロジェクトにおけるコード品質と開発効率をさらに高めたいと考えるすべての開発者にとって、刺激的な内容となりました。

また冒頭は日本語での挨拶があり、その後は主に英語で講演が行われてました。英語の内容については会場のスクリーンに同時翻訳された字幕が映し出されており、今後海外のTypeScriptプロジェクトの開発者が参加するうえで良い取り組みだなと現場で見ていて体感しました。

【気になったセッション】TypeScriptとは何であって何でなく⁠誰のもので⁠どこへ向かうのか

prettierへの貢献などで有名なSosuke Suzuki氏がTypeScriptとは何であって何でなく、誰のもので、どこへ向かうのかと題して講演しました。

序盤ではTypeScriptがどんな言語なのかから始まり、後半では、エコシステムがどのように変化してきて今後どのような変化が起こるかの予測について話がありました。

個人的にタイトルに惹かれて開催前から気になっていたセッションでしたが、実際に、今までのTypeScriptの歩みと、エコシステム周りがこれからどうなるのかを考えさせられる内容のセッションでした。普段利用しているツールの名前が出たりその今後であったりを聞けて非常に面白かったです。また意識していなかったのですが、⁠コンパイルターゲットが高級言語」というのは、たしかに変わってるかもなと思いました。

Ask the Speakerコーナー

TSKaigi 2025では、参加者と登壇者のより深い交流を促進するため、TSKaigi 2024に引き続き「Ask the Speaker」コーナーを設置しました。これは、セッション終了後に参加者が登壇者へ直接質問・相談できる企画です。

テック系カンファレンスでは、登壇内容に興味を持っても時間や雰囲気の都合で登壇者に直接質問しづらく、参加者の疑問や興味を深掘りできないまま終わってしまうことがよくあります。また登壇者側も、参加者との対話を通じて気づきやフィードバックを得る貴重な機会が失われがちです。

Ask the Speakerコーナーは、こうした課題を解決するために会場の企画エリアに設置されました。各セッション終了後の休憩時間に、登壇者がこのエリアに移動し、参加者からの質問に応じます。セッション直後の質問タイムよりもカジュアルで密な対話が可能で、より細かい技術的な話や実装の詳細について深く掘り下げることができました。

実際に多くの参加者がこのコーナーを活用したことから、ポジティブなフィードバックが寄せられました。このような双方向の学びの場があることで、TSKaigiは単なる情報発信の場を超えて、コミュニティ全体の知識向上に貢献する場となっていると感じています。

Ask the Speakerコーナー

Day2

【主催者講演】TypeScriptネイティブ移植観察レポート TSKaigi 2025

主催者講演として、berlysia氏が『TypeScriptネイティブ移植観察レポートTSKaigi 2025』と題して講演しました。

berlysia氏

このセッションでは、TypeScriptコンパイラのGo言語による新実装「Corsa」プロジェクトについて詳細な観察レポートが発表されました。berlysia氏は、2024年9月頃から始まったこの移植取り組みの進捗状況を時系列で整理し、技術的な挑戦と成果を丁寧に解説しました。

特に印象的だったのは、移植プロジェクトの開発手法でした。その手法は「自動変換 → 手動修正 → テスト」という繰り返しアプローチで実用的な道具を作り、問題箇所に集中して取り組むものでした。2025年5月23日時点で25万行中15万行が移植済みとなり、型チェック機能は完了、JSX・JSDoc対応、言語サービスでの補完機能も実現されているという具体的な進捗状況を共有しました。

実は10倍の高速化についての仕組みをあまり理解していなかったため、ネイティブ化と並行処理の高速化で結果10倍になっているという中身の話を聞けて非常に勉強になりました。

【気になったセッション】TS特化Clineプログラミング

mizchi氏が『TS特化Clineプログラミング』と題して講演しました。

mizchi氏は、Agentic Codingの現状と実践的なプロンプトエンジニアリング手法について詳しい解説を行いました。LLMを活用したコーディングにおいて有効なプロンプトの具体例を共有しながら、TypeScriptにおける効果的なプロンプト設計について説明しました。

講演の中で特に印象的だったのは、テスト駆動開発(TDD)の重要性です。mizuchi氏は、LLMに対してテストケースを先に提示することで、より正確なコード生成が可能になるという実践的な知見を共有しました。また、型定義ファイル(types.ts)にドメイン型を集約することや、コメントによる自己記述、In Source Testingなど、LLMとの協働を前提とした新しいコーディングパターンを紹介しました。

一方で、LLMが苦手とする領域についても率直に言及し、非同期例外処理の不得意さや環境構築の困難さなど、現時点での限界も明確に示しました。LLMは、特定のタスクでは人間の開発者に匹敵するほどの高い精度を示す一方で、複雑なロジックや高度な抽象化にはまだまだ限界があります。そのことを認識し、適切な方法で活用できた見返りは破壊的だということでした。

このセッションは、AI時代のプログラミングにおける実践的な指針を提供する貴重な内容でした。実際に使っているけど使いこなしているかは自信がない人も多いのではないかと思います。そういった人にものすごく刺さったのではないでしょうか、とても面白かったです。

懇親会

TSKaigi 2025の懇親会は、TypeScriptコミュニティらしい温かで楽しい雰囲気に包まれました。会場では江戸前寿司職人による本格的な寿司の実演があり、参加者は職人の技を間近で見ながら新鮮な寿司を味わうことができました。また、TypeScriptのロゴをあしらった特製ケーキも用意され、見た目にも楽しい演出がありました。

美味しい料理と飲み物を囲みながら、参加者同士がTypeScriptについて熱く語り合う光景が印象的でした。セッションでは聞けなかった技術的な深い話や、実際の開発現場での経験談など、リラックスした雰囲気の中で活発な議論が交わされ、最後まで盛り上がりを見せていました。

江戸前寿司TS Cake

まとめ

TSKaigi 2025は、まさにミッションである「学び、繋がり、"型"を破ろう」を体現するイベントでした。

2024年に立ち上がったTSKaigiが今年は会場を移し、2日間開催へと規模も大きくなりコミュニティの成長を感じさせられました。参加者、登壇者、運営スタッフ、スポンサーをはじめ、TSKaigiに関わるすべての人たちが互いに学び合い、新たな繋がりを生み出す場だったと思います。

また来年もTSKaigiを継続して開催していく予定です。今後は地方都市での開催を検討しており、地域創生の一環として地方のコミュニティを育てていくことにも努めていければと考えています。ご興味がある方は今後のスタッフ募集があった際、ぜひご応募ください。

さて、最後に今回TSKaigi 2025に現地で参加してくださった方、オンラインで視聴してくださった方、運営スタッフの方々、スポンサーいただいた企業様、すべての方々に感謝申し上げます。来年もより良いカンファレンスとして開催し、より多くの人々が参加してくださることを心から願っております。

集合写真

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