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レガシーXをWayland上で再構築 ―Alpine Linux開発者が軽量“X on Wayland”コンポジタ「Wayback」ローンチ

現在、メジャーなLinuxディストリビューションのほとんどがディスプレイソフトウェアのデフォルト実装をX.OrgからWaylandへとシフトしている一方、グラフィックデザイナーやCADエンジニアなどWaylandに対応していないアプリケーションやデスクトップ環境を日常的に利用しているユーザも少なからず存在する。

こうしたユーザ/アプリケーションに対し、Waylandセッション上でもXアプリをそのまま動かすための互換レイヤとして提供されているのがXWaylandだ。GNOMEやKDE PlasmaなどではWaylandセッションでXWaylandが自動起動するので、ユーザはとくに意識することなくXアプリを利用することが可能となっている。

このXWaylandとは異なるアプローチで"X on Wayland"を実現しようとしているのが、Alpine Linux開発者のAriadne Conillがローンチしたオープンソースプロジェクト「Wayback」だ。XWaylandがWayland上でXアプリを動かすための互換レイヤであるのに対し、WaybackはWayland上で「完全なXデスクトップ環境(full X desktop environments⁠⁠」を実行するための互換レイヤ、つまり既存のXユーザが使っているレガシーなウィンドウマネージャやデスクトップ(fvwmやTWMなど)を見た目そのままにWayland上で再現することを目指している。

ConillはWaybackを「最小限のWayland機能を備えたスタブコンポジタ(stub compositor⁠⁠」と表現しているが、具体的にはXWaylandをフルスクリーン(rootfulモード:1つの大きな仮想デスクトップ上にすべてのXアプリを表示するモード)で動かすために必要な機能だけを提供するとしている。Walbackのベースになっているのはやはり軽量コンポジタのTinyWLで、ほかにWaylandライブラリ、Waylandプロトコル 1.14以上、xkbcommon(キーボードハンドリングのライブラリ⁠⁠、wlroots-0.19とリンクしている。

Conillは「最終的にはAlpine Linuxの従来のX.OrgサーバをWaybackに置き換え、AlpineでのXアプリのメンテナンスの負荷を下げたい」とコメントしているが、GNOMEやKDE Plasmaではないレトロなデスクトップ環境を継続して利用したいというユーザは少なくなく、他のディストリビューションからもWaybackへの注目が集まりつつある。まだ実験的ではあるものの、今後の進捗が気になるプロジェクトだ。

なお、Wayland開発者のSimon Serは7月6日付けでWayland 1.24のリリースを発表している。

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