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Debian⁠22年越し“因縁のバグ”修正

1993年8月16日に誕生したDebianプロジェクトはまもなく32回目のアニバーサリーを迎えるが、これほど息の長いオープンソースプロジェクトになると、バグトラッカーの追跡をかいくぐり、10年20年に渡って駆除を免れているバグも存在する。7月29日、DebianマネージャのひとりであるCarlos Henrique Lima Melaraが「Debian micronews」に投稿した内容は、まさにそうした現実離れしたバグの存在を実感させるものだ。

Sometimes we fix easy bugs, sometimes hard ones and sometimes we fix bugs that are older than you and can have a driver's license: https://bugs.debian.org/186085, opened in 2003, closed in 2004, and actually fixed in 2025! #debian #trixie #22YearsOldBug

我々が対処するバグというものは、時には修正が簡単だったり、時には難しかったりするが、時にはあなたよりも年を取っていて運転免許証をもっていてもおかしくないようなバグを修正することおある。Bug #186085 ‐ これは2003年に発見され、2004年にクローズされ、実際に修正されたのはなんと2025年である!

この22年越しの修正となったバグ「Bug #186085」は2003年3月に最初に報告されたもので、内容は医療関連のパッケージである「Debian-Med」をtaskselに標準タスクとして追加してほしいというリクエストだった。投稿者は現在Debianプロジェクトリーダーを務めるAndreas Tilleで、1998年からDebian開発者として活動してきたTilleは、Debian-Medプロジェクトのリーダー的存在でもあった(本業は独ロベルト・コッホ研究所所属の物理学者⁠⁠。

しかし当時、Debianインストーラを統括していたJoey Hessは標準的なタスクリストに特定の用途にカスタマイズされたパッケージ(CDD)を加えることに難色を示していたようで、2004年6月に「報告されたバグ(Bug #186085)は最新バージョン(tasksel 2.01)で修正されたと思われる」と回答しつつ、実際にはDebian-Medを標準タスクに含めることはなかった。代わりに特例的に標準タスクリストに含まれていた「Debian‐Jr」⁠子供向けの用途に特化したパッケージ)をtaskselから削除することで「このバグは解決した」とこの問題をクローズした。

当然ながらTilleは「これは我々が求めていた解決策ではない」と反論したが、クローズになってからはプロジェクト内で大きな議論になることもなく、そのまま⁠解決済み⁠のバグとして22年間埋もれることになったようだ。

なお、1996年からDebianプロジェクトに関わり、最古参の開発者として大きな影響力をもっていたHessだが、2014年7月に「ここはもはや、私が1996年に最初に参加したプロジェクトではないことが明白だ」としてDebianプロジェクトからの離脱を表明し、話題となった。

今回、この22年越しのリクエストがなぜ突然修正されたのか、その理由についてMelaraはとくにコメントしていない。なんにせよ、まもなくリリースされる久々のメジャーアップデート「Debian 13 Trixie」を前に、小さいながらも過去の浅からぬ因縁を思わせるバグが無事に修正されたことは、Debianプロジェクトにとって喜ばしいニュースに違いない。

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