Linus Torvaldsは8月10日、次期Linuxカーネル「Linux 6.17」の最初のリリース候補版となる「Linux 6.17-rc1」を公開した。2週間前のLinux 6.16でのコメントにもあったように、Linusのフィンランド旅行中に公開されたリリースとなる。
Linusは家族イベントのため現在フィンランドに滞在中だが、2週間前に宣言したようにマージウィンドウ期間(7/28 ‐ 8/9)の前半に主要な作業を終えられるよう、早めのプルリクスト送信を開発者たちに依頼していた。たいていのプルリクエストはマージ期間の前半に処理されたが、Linux 6.17でのマージが期待されていたRISC-V関連のアップデートに関しては、担当のPalmer Dabbelt(Google Androidチーム所属)がマージウィンドウ期間ぎりぎりの8月8日にプルリクエストを送信、さらにその内容がLinus曰く「ゴミ(garbage)」であったため、今回のマージは見送られている。
(RISC-Vの変更に対して)だめ。これはゴミで、しかも到着が遅すぎ。旅行中だから早めにプルリクエストがほしいとお願いしたけど、もしそのルールに従えないなら、せめてプルリクエストを"良いもの"にしてくれ。これはRISC-Vだけでなく汎用ヘッダファイルにさまざまなゴミを追加する。ちなみに僕が言ってる"ゴミ"とは本当にゴミって意味だから。こんなものを僕に送っていい人物なんて誰もいないし、ましてやマージウィンドウの終盤に送ってくるとか論外。(中略) マージウィンドウが終了する前日に、僕が忙しくて気にしないだろうと期待して大きなプルリクエストを送ったりすることは勝利の戦略じゃないよ。きみはLinux 6.18でもう一度トライすることだね。もちろんマージウィンドウの早い段階で。そしてゴミなしで。
Re: [GIT PULL] RISC-V Patches for the 6.17 Merge Window, Part 1 -Linus Torvalds
なお、Linusが“ゴミ”と呼んだのは「make_u32_from_two_u16()」というヘルパー関数で、「クレイジーで無意味、世界をより住みにくい場所にする役立たずのゴミで、どんなユーザにとっても理解不能」とこき下ろしている。Linusはこの冗長に見えるヘルパー関数の可読性に強い不快感を示しており、「(a << 16) + b
と書けばそれが何をするのか、そしてどれが上位ワードなのかわかる。しかしmake_u32_from_two_u16(a, b)
と書くと語順がどうなっているのかさっぱりわからない。言い換えると状況を“悪化"させ、そのヘルパーをRISC-V以外の汎用ファイルに追加したことになる」と痛烈に批判、さらにRISC-Vツリーを超えた汎用ファイルにまで影響を与えることに対しても不快感を隠さない。なお、Linusに痛烈に批判されたDabbeltはLinusへの返信で「すみませんでした。最近作業をサボっていて、いろいろ積み重なっていて、それがミスの原因になっていました。次は遅れないようにします」とさらっと謝罪している。
もうひとつ、Linux 6.17で動向が注目されていたのがBcachefsの扱いだ。LinusはBcachefsのリードデベロッパであるKent Overstreetがマージウィンドウ後にBcachefsの機能コードを定期的に提出するなど問題の多い行動を取ることから、「Linux 6.17のマージ期間中に我々は(Bcachefsと)決別することになるだろう」とLinux 6.16の開発期間中にコメントしていた。Overstreetは今回のマージウィンドウ期間の早い段階でBcachefsに関するプルリクエストを送信しているが、Linusは結局これをプルすることなく、またBcachefsに関してはいっさいのコメントを発していない。とりあえずLinux 6.17でのBcachefsとの“決別”はないようだ。
Linux 6.17は開発が順調に進めば9月下旬から10月上旬のリリースが見込まれる。今秋リリース予定の「Ubuntu 25.10」のベースとなることも明らかになっており、何かと話題の多いバージョンになることは間違いない。