OSSデータベース取り取り時報

第120回連載10周年!!MySQL 9.4.0イノベーション⁠リリース⁠PostgreSQLバージョン18ベータ2リリース

この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。

OSSデータベース取り取り時報10周年

今回でこの「OSSデータベース取り取り時報」は第120回となり、10周年を迎えることができました。ご愛読・応援いただいている皆さん、これまで連載にご協力いただいた方たちに感謝いたします。ありがとうございます。

この記事を担当しているOSSコンソーシアムのデータベース部会も、2015年8月に発足し、活動を開始しました。連載第1回の記事では、データベース部会設立記念セミナーの様子をお伝えしました

2015年8月の設立記念セミナーの様子
2015年8月の設立記念セミナーの様子

OSSデータベースにはさまざまなものがあり、新しいものも登場してきます。この「OSSデータベース取り取り時報」と私たちデータベース部会に共通する立ち位置として、いずれかのOSSデータベースには特化せずに可能な範囲でさまざまなものを取り上げていきたいと考えています。

オープンソースカンファレンスにて記念企画開催へ

この記事が公開される週末の8月3日(日)のオープンソースカンファレンス京都にて第1弾企画を実施します。そして第2弾(記念企画メイン)を10月のオープンソースカンファレンス Online/Fall で実施する計画です。

8月3日に「DX♥←データ活用民主化!←OSS?」を実施

8月3日(日)に京都で開催されるオープンソースカンファレンス 2025 Kyoto(京都市)に出展して、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の協力も得てセミナーを開催します

デジタル変革のキモはデータ活用。デジタル化(digitize)されたテキストやデータに基づいた判断や処理の自動化が変革の力の源泉です。そして、たぶんオープン性も必要でしょう。その際に、誰か(例えばITベンダー)になんとかしてもらうのではなく、活用したい人/活用したい現場で実現するのが目指す姿になるでしょう。

このセッションは、そんな目指す姿を妄想しながら、データを活用して「こんなことができるはず/やりたいけどどう?やってる人たちがいるよ」などの情報交換や意見交換の場なればと考えています。

今回は下記メンバーによる講演発表とパネルディスカッションの2部構成です。

オープンソースカンファレンス 2025 Kyotoの登壇者
オープンソースカンファレンス 2025 Kyotoの登壇者

10周年のメイン企画を10月開催で計画中

10月にはオープンソースカンファレンスのセミナーの部がオンラインで開催され、全国から参加が可能になります。そこで、連載と部会の10周年の節目のセミナーを、このオープンソースカンファレンスOnline/Fall内で実施できるように準備中です。内容はデータベース部会メンバで相談中ですが、データベースのこれまでを振り返りつつ、データ管理技術やデータ活用の将来像について考えるようなものにしたいと考えています。次回と次々回のこの連載で詳細をお伝えします。

[MySQL]2025年7月の主な出来事

MySQL 9.x系のイノベーション・リリースのMySQL 9.4.0が公開されました。またMySQL 8.4 LTSとMySQL 8.0の各マイナーバージョンおよび各クライアント・プログラムがリリースされました。

なお接続部品のConnectorのバージョン9.4.0からは、サポート中のすべてのMySQLサーバーのバージョンに接続可能になっています。そのため8.4.5や8.0.46はリリースされていません。

MySQL 9.4.0イノベーション⁠リリースでの新機能や変更点

MySQL 9.4.0イノベーション・リリースでは、Red Hat Enterprise Linux 10およびOracle Linux 10のサポートを開始しました。またMySQL 8.4.5 LTSでも同じバージョンをサポートしています。大きな機能追加は行われていませんが、コンテナ化された環境や仮想化環境での運用で利用される可能性がある機能として論理CPU数とアクセス可能な物理メモリを必ずエラーログに記録するようになっています。

デフォルト値の変更としては、変更バッファ(Change Buffering)の最大値が25から5となっている点があります。ただし変更バッファはデフォルトではオフとなっているため影響は限定的です。このほかtemptable_use_mmapが廃止され、弱いハッシュアルゴリズムとされるMD5()関数やSHA1()関数が非推奨となっています。またmysqlクライアントに--commandsオプションが追加されています。

MySQLおよびHeatWaveの最新事例

インターネットイニシアティブ(IIJ)が2024年10月より提供開始したクッキー同意管理プラットフォーム「STRIGHT」では、Webサイトの利用者に対してクッキーの取得や利用に関する情報を開示し、利用者が同意または拒否を選択した情報を記録するデータベースとして、MySQLの分散型クラスターであるMySQL NDB Cluster CGEを採用しています。

このプラットフォームではサービス提供開始5年後にはデータベースへの秒間書き込みが800万件を超えることが想定されており、かつ障害発生時やメンテナンスの際にも無停止で運用できることが求められています。さらに取り扱うデータの特性上、法令やセキュリティ規約などへの準拠が厳しく求められます。

IIJでは、リアルタイムでのデータ処理が可能なインメモリ・データベースでありながら高い可用性をもち、さらに透過的データ暗号化や監査、SQLインジェクションを防止するファイアウォール機能を有する製品としてMySQL NDB Cluster CGEを選定しました。

「STRIGHT」が必要とされるビジネス環境や製品選定の経緯などは、MySQLの日本語版ブログのページの記事を参照してください。

HeatWaveの最新事例として公開されたのが、⁠あさひ豆腐(こうや豆腐⁠⁠生みそずい」等の人気商品で広く知られている老舗食品会社の旭松食品株式会社でのDX事例です。同社では需給管理の業務にExcelを利用していましたが、販売実績データや生産管理データを分析用に加工する手間がかかっていたうえに、分析にも制約がありました。

2021年にOracle Cloud Infrastructure(OCI)上のHeatWave MySQLを活用する形でシステムのクラウド化を行っています。需給データをHeatWave MySQLで管理し、複数の担当者によるデータの共有・分析を実現しました。

このクラウド化された需給調整業務支援システムは、リリースから3年以上の運用実績を積み重ね、着実にお客様の業務改善に成果を上げてきました。需給データの種別の拡充とデータ量の増加、データ分析のさらなる高度化、高速化、自動化のため、同社で利用中のHeatWave MySQLで利用できる分析処理高速化エンジンを2025年に有効化しました。これにより需給予測や在庫推移の分析にかかる時間が従来の1/4程度となり、作業者が処理を待つことなく結果を確認できるようになりました。HeatWaveは、データ分析の使用頻度によってクラウドの利用コストが変わることはないため、間接部門においてもさまざまなパターンの分析を試すことが可能となっています。

[PostgreSQL]2025年7月の主な出来事

毎年夏は新バージョンのベータリリースが気になります。今回は次期メジャーバージョン18の2回目のベータ版登場のお知らせです。またOSSデータベース界隈の注目株である劔⁠Tsurugi⁠の最新情報もお知らせします。

PostgreSQLバージョン18のベータ2がリリース

正式リリースになる前から新バージョンの情報がジワジワと流れて来て、それが気になってしまうことも、OSSの醍醐味のひとつではないでしょうか。今年5月にバージョン18の最初のベータ版がリリースされましたが、7月17日にベータ2がリリースされました。

ベータ1からの修正点・変更点は次のとおりです。

  • クエリの乱れによるリストの圧縮において、プリペアドステートメントのサポートを追加しました。
  • パーティションテーブルにおける外部キーの検証を修正しました。
  • pg_get_process_memory_contexts()関数を削除しました。
  • AIO(非同期I/O)のテストをサポートするために、インジェクションポイントのテストに関するいくつかの修正を行いました。
  • 複雑な名前のテーブルに対するpg_dumpを修正しました。
  • ネストされたステートメントの位置計算を修正しました。
  • テーブルの行数が不明な場合の PostgreSQL 14からのアップグレードを修正しました。
  • OAuthパーサーのスタックオーバーフローを修正しました。
  • pg_dumpとpg_dumpallのデフォルト動作を--no-statisticsを使用するように設定しました。pg_restoreとpg_upgradeのデフォルトは--with-statisticsのままにしました。
  • “LOAD $libdir/⁠が確実に動作することを確認しました。
  • GIN amcheckの機能強化を行いました。
  • libpqからPQservice()を削除しました。

なお、バージョン18以外の既存メジャーバージョンは、7月にはリリースはありませんでした。

劔“Tsurugi”最新情報

Tsurugi 1.5.0がリリースされました。

Tsurugi 1.5.0では SQL関連機能としてLIKE演算子やいくつかのビルトイン関数の追加、互換性に関する改善などが行われました。また、トランザクション関連機能では、前バージョンで正式機能に昇格したRTX並列スキャンに対して、クライアント側からトランザクション単位でタスク分割数を指定できるようになりました。

その他、本バージョンではいくつかの重要な不具合修正や安定性の向上を行っています。

解説記事『TsurugiのBLOBと展望』が公開されました。

Tsurugiはデータベース内のすべてのデータをメモリに載せる、インメモリ・インデックスを採用したデータベースです。BLOBのような巨大なデータをメモリ上に保存すると、メモリの容量を圧迫してしまうため、BLOBに限ってはカラムのデータをファイルシステム上の個々のファイルに保存し、どのファイルに保存したかという参照情報のみをインデックス上に保存しています。この解説記事では、TsurugiでのBLOBの扱い方のTipsが説明されています。

2025年8月以降開催予定のセミナーやイベント⁠ユーザ会の活動

イベントごとに利便性のあるオンライン開催や、従来通りのオンサイト(会場)開催、またはハイブリットが混在するようになっています。興味を持たれて参加したいイベントの開催形態にご注意ください。

オープンソースカンファレンス(OSC)/オープンデベロッパーカンファレンス(ODC)〔8月〜10月開催分〕

日程 〔Kyoto〕2025年8月3日(日)10:00~18:00予定
〔ODC〕2025年9月6日(土)10:00~18:00
〔Online/Fall〕2025年10月17日(金⁠⁠、18日(土)10:00~18:00
〔Tokyo/Fall〕2025年10月25日(土)10:00~16:00
場所 〔Kyoto〕京都リサーチパーク 4号館(京都市下京区)
〔ODC〕docomo R&D OPEN LAB ODAIBA(東京都港区・台場フロンティアビル)
〔Online/Fall〕オンライン会場(Zoom & YouTube Live)
〔Tokyo/Fall〕東京都立産業貿易センター台東館(東京都台東区)
内容 オープンソースカンファレンス(OSC)は、オープンソースの今を伝えるイベントです。東京だけでなく、北は北海道、南は沖縄まで、年間を通じて全国各地で開催しています。オープンソース関連のコミュニティや協賛企業・後援団体による、セミナーやプロダクトの展示などを入場・参加料が無料でご覧いただけるイベントです。現在は開催地域によってオンラインとオフラインで開催しております。
〔Kyoto〕今年は日曜日(8月3日)の開催です。ご注意ください。本文でもお知らせしましたが、OSSコンソーシアムでは8月3日のKyotoに協賛出展してセミナーを開催予定です。
〔ODC(オープンデベロッパーカンファレンス)開発者とインフラエンジニアの交流の場として、⁠DevOps」⁠開発」⁠開発者」をキーワードに、さまざまな最新情報を提供いたします。発表者の募集は7月末に終了しました。プログラムはまもなく公開されるでしょう。
〔Online/Fall〕2日間でセミナーのみをオンラインで開催されます。セミナー発表者を募集中です。
〔Tokyo/Fall〕こちらは会場開催で展示のみ(セミナー無し)の開催です。まもなく出展者の募集が始まります。
それぞれの開催回でのOSSデータベース関連の発表については、公開されるプログラム詳細をご参照ください。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

OSS-DB Exam Silver技術解説セミナー

日程 2025年9月6日(土)13:00~14:15
場所 オンライン開催
内容 OSS-DB Exam Silver技術解説セミナーは、データベースの技術、特にPostgreSQLの習得やOSS-DB Exam Silverの認定取得を目標に学習を進めている方を対象とした無料のオンラインセミナーです。解説する内容についてより具体的に身につけられるよう、各回テーマを絞って行なっていきます。今回は、OSS-DBのWebサイトにある無料の学習コンテンツ「例題解説」の問題を解きながら解説を進めていきます。テーマは、OSS-DB Exam Silver S3.1「SQLコマンド」です。PostgreSQLのより深い理解、およびOSS-DB Exam Silverの受験対策に役立つ内容です。参加費は無料ですが、事前に参加登録してください。
主催 特定非営利活動法人LPI-Japan

db tech showcase 2025 Tokyo(アーカイブ配信)

日程 2025年8月中旬~
場所 オンライン配信
内容 国内で開催されるデータベース関連の主要なカンファレンスのひとつです。OSSデータベース専門のセミナーではありませんが、MySQLやPostgreSQLをはじめさまざまなOSSデータベースについての多数のセッションが毎年設けられています。
主催 株式会社インサイトテクノロジー

PostgreSQL Conference Japan 2025

日程 2025年11月21日(金)10:00~18:10
(9月8日まで講演発表の募集中)
場所 AP日本橋(東京都)6F(東京駅より徒歩5分)
内容 毎年秋に開催されている日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)主催のPostgreSQL Conference Japan 2025が案内されました。午前に2講演、午後は4トラックで多数の講演が予定されています。午後からの16セッションの内、通常セッション(50分)6 枠と展示会場小セッション(25分)4枠の講演が一般募集されています。講演募集の締め切りは2025年9月8日です。本イベントの実行委員や当日スタッフも募集しています。参加にはチケットの購入が必要です。一般参加チケットは9月21日から発売予定になっています。
主催 日本PostgreSQLユーザ会

おすすめ記事

記事・ニュース一覧