2025年8月11日(山の日)、『すぐわかる! ぷよぷよプログラミング SEGA公式ガイドブック』(紀平拓男 著、株式会社セガ 協力、技術評論社)の発売を記念したイベントが、六本木 蔦屋書店で開催されました。
このイベントには、eスポーツのTOPプロ選手であるぴぽにあプロと、本書の著者である紀平拓男氏が登壇。プログラミング初心者から経験者まで、ゲームを「改造する」体験と、それを「プレイする」体験を通して、ゲームプログラミングの楽しさや奥深さを感じてもらうことを目的として、以下の構成で進行しました。
- デモンストレーション: eスポーツトッププロ・ぴぽにあプロによる製品版『ぷよぷよ』での華麗な連鎖披露
- ゲーム改造・初級編「真っ黒(?!)ぷよ」
- ライブコーディング❶: 紀平氏がその場で、『ぷよぷよプログラミング』のぷよが接地すると真っ黒になる改造を実演
- プロによる即興プレイ❶: 改造された「真っ黒(?!)ぷよ」にぴぽにあプロが挑戦
- ゲームシェア❶: QRコードで会場の参加者の方々も改造版を一緒にプレイ
- ゲーム改造・中上級編「大回転(?!)ぷよ」
- ライブコーディング❷: 紀平氏が、ぷよを置くたびに盤面が回転する改造を実演
- プロによる即興プレイ❷: 改造された「大回転(?!)ぷよ」にぴぽにあプロが挑戦
- ゲームシェア❷: QRコードで会場の参加者の方々も改造版を一緒にプレイ
- クロージングトーク: ゲームプログラミングで始めるプログラミング学習のコツ(初級者〜中級者向け)
改造の難易度とプレイの難易度をそれぞれ二段階に設定した、充実のプログラムで進められました。
『ぷよぷよ』TOPプロが魅せる華麗な連鎖プレイ まずは基本ルールから。
イベントの冒頭、まずはぴぽにあプロが『ぷよぷよ』の基本的なルールを紹介しました。『ぷよぷよ』は、横6マス×縦12マスのフィールドに落ちてくる2つ1組の「ぷよ」を操作し、同じ色のぷよを4つ以上つなげて消していくゲームです。上から下にしか落ちないというシンプルな特性を活かして「連鎖」を組むのが醍醐味とされています。説明中も、ぴぽにあプロはトークをしながら流れるような操作で次々と連鎖を組み上げ、その見事なプレイで会場を沸かせました。
ぴぽにあプロによる製品版『ぷよぷよ』の基本ルール解説講座
「完成版の改造」からプログラミングの楽しさを体験しよう! イベント限定のライブコーディング
続いて、いよいよ「ぷよぷよプログラミング」を使った改造を行うライブコーディングが始まりました。冒頭で、著者でありエンジニアでもある紀平氏は、自身の世代ではゲーム雑誌のソースコードを打ち込み、それを改造することでプログラミングを学んだ経験を持つ人が多かったことに触れ、既存のゲームを「改造する」ことはプログラミング学習の有効な手段であると力強く語りました。
最終完成版からスタートする(?!)ライブコーディング
書籍ではゼロから『ぷよぷよ』を作り上げますが、今回のイベントでは完成版のプログラムを「Monaca Education」に読み込んで改造する形式を採用[1]。このアプローチは、コードを書き換えることでゲームがどう変化するのか、そのおもしろさを参加者の方々に直接体験してもらうためのものです。ゲームのプログラムに触れたことがない方も、この「最終完成版から始める」アプローチなら、また違った切り口で気軽に始められるでしょう。
最初の改造 ▶ 記憶力が試される「真っ黒(?!)ぷよ」
最初のライブコーディングは、ぷよが接地した瞬間に真っ黒になるという改造です。カラフルなぷよの色をプレイヤー自身が記憶する、あるいはぷよの形(少しずつシルエットが違う)で判別して、配置を判断しなければならない、高難易度のルールです。
紀平氏は、ぷよが接地する処理(game.js
)を確認後、stage.js
内のcreatePuyo関数を修正。CSSのfilter: brightness(0)
を適用し、ぷよが接地した瞬間に真っ黒になる改造を素早く実現しました。さらに、「5色分のぷよでプレイするのはさすがに厳しい」と、config.js
を編集してぷよの色を4色に変更しました。このままでも遊べますが、連鎖でぷよが消える瞬間にだけ色が復活するよう、アニメーション中にフィルターを解除する工夫も加えられました。小さな変更で最後に綺麗な連鎖が確認できるようになりました。
「真っ黒(?!)ぷよ」への改造中。プログラミングでは文法は覚えてなくても調べながらで良いんですよと紀平氏
そして、改造されたばかりのゲームにぴぽにあプロがさっそく挑戦。ぷよが真っ黒になるため色の判別ができない上、背景の一部も黒いため形の認識も難しく、記憶力が頼りという状況に、さすがのプロも思わぬ苦戦を強いられます。「プロ選手の中には、こうした目隠し(?)のプレイングが得意な選手もいる」とのこと。それでも記憶と感覚を頼りに、見事6連鎖を達成しました。
「真っ黒(?!)ぷよ」のプレイ中。サブマリン型という土台の組み方もしてたんですよとプロ
さらなる高難易度の改造 ▶ 盤面がひっくり返る「大回転ぷよ」
次の改造はさらに難易度が高く、ぷよを1回接地するごとに盤面全体が180度回転するというものです。
紀平氏は、回転後も連鎖が正しく処理されるように考慮しつつ、ぷよが落ちてくる直前の関数(createPlayerPuyo
)をトリガーに、CSSのtransform: rotate()
でステージの外側を回転させる処理を実装。さらに、ぷよ自体は元の向きを保つように見せる複雑な処理や、画像の動きを滑らかにつなぎこむ調整など、「細い部分は必ずしもしなくてもいいことかもしれないけど僕が気になっちゃいますので」と断りつつ、細やかな工夫を加えていきます。ライブコーディング中にはたびたびデバッグ作業[2]も発生しましたが、参加者の方々から助言コメントが飛ぶなど、会場一体となって問題を解決していく場面も見られました。
参加者の方からのコメントに「ほんとですね」と紀平氏(真っ黒(?!)ぷよへの改造中の様子)
この「大回転ぷよ」は、1手ごとに盤面がひっくり返りぷよの並びも変わるため、連鎖を組むのが極めて困難です。当初は1手ごとにぐるりと回転する仕様でしたが、ぴぽにあプロの提案で5手ごとの回転に調整されました。ぴぽにあプロは「段差を発生させないようにひたすら平らに積む」「反転後の連鎖のために、まずは消さずにぷよを貯める」という戦略で挑みます。初見の仕様で一手ごとの計算は困難だそうで、「まずはぷよを積んでから考える」という方針でプレイ。「『それっぽく』でも連鎖を」と語りながら、見事4連鎖を達成しました。
「大回転ぷよ」は盤面が180度回転します。遊ぶのも大変だ.......
プログラミングの楽しさと創造性、そして上達のコツ
イベントの最後に、紀平氏とぴぽにあプロはプログラミング学習における「改造」がもたらす効果について改めて語りました。完成されたゲームの一部を少し変えるだけで、ゲームの動作ががらりと変わる。そこにはプログラミングのおもしろさがあり、それらの積み重ねが学びへとつながります。
自身も元SE(システムエンジニア)であるぴぽにあプロは、子どもの頃に人気ゲームを題材にした本でプログラミングを学んだ経験に触れ、「プログラミングは『コンピューター上で行う物作り』。その楽しさをぜひ体験してほしい」と語りました。
紀平氏は、何事においても想像力をいかに発揮できるかが大切であり、自分が「何かを作りたい」という想いを大切にしてほしいと話します。そして、「自分にとってはプログラミングがその手段だったように思う」と自身の原点を振り返りました。「簡単な色の変更や設定(config.js
)の調整から始め、徐々に複雑な改造に挑戦することで、創造力は育まれ、プログラミングスキルも向上します」と述べました。
最後に紀平氏は「みなさんも、ほんの少しで良いから何かを変えてみてください。そこから『何ができるか』というヒントが見えてくることもあります」と続け、小さな積み重ねから新しいものを創造する楽しさを体験してほしい、というメッセージを贈りました。
プログラミング、ゲーム、そして改造。今回のイベントは、これらをテーマとした小さな変更の積み重ねが既成概念にとらわれない「創造」につながるおもしろさと、その奥深さが垣間見れる貴重な機会となったのではないでしょうか。
サイン会を終えて記念撮影。夏休み中にご来場いただき、また会場やSNSで貴重なご感想もいただき、ありがとうございました。