「他のアジア地域に比べて、日本ではクラウドネイティブの採用が遅れている」、SUSEのアジア市場におけるシニアディレクター兼CTOであるVishal Ghariwala
クラウドネイティブの導入にはどのような課題があり、SUSEではそれをどのようなアプローチで解決しているのでしょうか。Vishal Ghariwala氏に詳しくお話を伺いました。

日本はクラウドネイティブとコンテナの採用が遅れている
—— Q: アジア太平洋地域におけるクラウドネイティブの普及状況について、地域ごとの傾向や課題があれば教えてください。
Vishal Ghariwala氏:アジア太平洋地域には主に6つの市場があります。東南アジア、インド、日本、中国、韓国、オーストラリア・
東南アジア地域では、シンガポールを中心に、大手銀行や通信会社、政府機関がクラウドネイティブとコンテナ技術を採用しています。インドでも採用が進んでいるのですが、この国が他の地域と異なるのは、クラウドネイティブのスキルベースが非常に大きいという点です。また、大規模な人口のためのスケーラビリティが極めて重要だという特徴もあります。中国では、米国や欧州との緊張関係もあり、国内で開発されたクラウドネイティブ技術を好む傾向があります。
日本は、クラウドネイティブとコンテナの採用がアジアの他の市場よりも遅れているというのが現状です。日本のお客様と話していて感じるのは、リスクへの懸念の大きさや、すでにうまく動いている既存システムを使い続けたいと考える人が多いということです。
ただし、日本のお客様もクラウドネイティブの重要性は十分に認識しているので、移行のタイミングを伺っている状態だと思っています。
すべての市場に共通するトレンドとして、ほとんどの企業が、クラウドネイティブに移行する最良の方法は、クラウドとオンプレミスのハイブリッドだと考えていることです。
異機種混在環境の使用を止める必要はない
—— Q: ハイブリッド環境、特にコンテナや仮想マシン、オンプレミスなどが混在する環境を考慮した場合、その導入にはどのような課題があるのでしょうか。
Vishal Ghariwala氏:まず、OS、仮想マシン、コンテナ管理プラットフォームなど、それぞれ特性の違う多様なシステムをどのようにして管理するかという課題があります。次に、複数のクラウドプロバイダーとオンプレミスのソリューションを併用している場合、これらの異なる環境をどのように統合するかという課題があります。
また、レガシーアプリケーションと近代的なクラウドネイティブアプリケーションの両方を同時に管理・
—— Q: SUSEではどんな方法でそれらの課題の解消を支援していますか。
Vishal Ghariwala氏:SUSEの戦略は、標準化と近代化の2つを提供することです。標準化というのは、オープンスタンダードを使用し、相互運用性をサポートすることで、ベンダに依存しない中立なソリューションを提供します。
たとえば、
また、プラットフォームの独立性も重視しており、オンプレミス、パブリッククラウド、プライベートクラウド、リモートエッジ環境など、あらゆる環境を一貫して実行できるソリューションを提供します。複雑な運用の課題に対しては、OS、Kubernetes、セキュリティ、オブザーバビリティのための中央集権的なコントロールプレーンを備えた統合運用アプローチを提供しています。
これは
そして、主要なパブリッククラウドプロバイダー、オンプレミス、リモートエッジ環境にあるKubernetesクラスタを一元管理し、セキュリティの確保や監視などをまとめて行うことができます。
近代化についての代表例としては、同じくSUSE Rancher Primeにおいて、古いVMwareベースのワークロードと新しいコンテナベースのワークロードを、単一のプラットフォーム上で実行できるようにしていることが挙げられます。レガシーの仮想マシンワークロードもコンテナアプリケーションと並行して実行できるので、共通のプラットフォームでレガシーと近代的なワークロードを管理することが可能です。
私たちがお客様に対していつもお伝えしているのは、異機種混在環境の使用を止める必要はない、ということです。多くの企業が、他に選択の余地がなくて、異なる環境を併用しているわけです。SUSEのソリューションを使って環境内で標準化できれば、そのような環境でもさまざまな課題を克服することができます。

クラウドネイティブ環境では、オブザーバビリティはより複雑で重要になる
—— Q: クラウドネイティブ、とくに異機種が混在するような環境ではオブザーバビリティの重要性もさらに高まってくると思います。この点について、具体的にどのような課題があり、SUSEではそれをどうサポートしているのか教えてください。
Vishal Ghariwala氏:おっしゃるとおり、クラウドネイティブ環境ではオブザーバビリティはより複雑になり、問題解決のためにさらに重要になります。
課題の1つは、一般的にコンテナが短命であり、立ち上げてすぐに終了するため、特定の瞬間に何が起きているかを理解するのが難しいということです。
2つ目の課題は、アプリケーションがオンプレミス、パブリッククラウド、エッジなどさまざまな場所で実行される可能性があるので、パフォーマンスの問題やアプリケーションの問題が発生した際に、分散環境で根本の原因を特定するのが難しいことです。
3つ目の、そして最大の課題は、多くの環境からさまざまな種類の情報が得られるため、それらを管理し、根本原因を特定するのが
SUSEでは、これらの課題のためにRancher Primeの一部として
IT管理者や運用チームにとっては、何か問題が発生していたとしても、それがどこで発生しているのか特定できないことはよくあります。原因がアプリケーションにあるのか、それともコンテナなのか、データベースなのか。そして、通常はそれぞれでメトリクスやログの確認方法が異なるので、解析の難易度が高まるのです。
その点、SUSE Observabilityの統合的なアプローチを利用すれば、真の問題が何なのかを迅速に特定できます。
—— Q: オブザーバビリティに関しては、SUSEでは今年5月には新たに
Vishal Ghariwala氏:SUSE AI Observability」
1つ目は、AIがコンピューティングリソースをどのように使用しているかを理解し、AIトークンの使用量、GPUリソースや全体的な運用コストなどを把握するのを支援します。
2つ目は、AIシステムからのアウトプットについて、AIがどのようにしてそのような出力をしたのかを理解できるようにします。これは近年問題になっている
—— Q: 最後に、今後、SUSEが日本市場で注力していく技術分野やパートナーシップの方向性について教えてください。
Vishal Ghariwala氏:日本市場では、今後も引き続きオープンソースが重要な存在であり続けると考えています。コンテナとクラウドネイティブの導入については、確かに現在はアジアの他の市場に比べて遅れていますが、私たちにとってはこれはチャンスでもあります。すでにお客様は、クラウドネイティブへの移行の必要性を認識し始めているからです。
したがって、SUSEとしては、とくにRancher Primeのようなクラウドネイティブとコンテナ管理の分野に焦点を当てていく予定です。お客様からのフィードバックとして、市場にはオンプレミス向けのオプションが少なく、あっても高額であること、そしてBroadcomによる買収でVMwareが選択しにくくなったなどの声があります。それに対して、私たちは最良のソリューションを提供できるはずです。
Linuxの分野でも大きなチャンスがあります。とくにLinuxのサブスクリプションコストを最適化したいお客様や、すでにサポートが終了したLinuxを継続して使用したいというお客様がいます。SUSE Multi-Linux Supportであれば、お客様は現在の環境を移行せずに、経験豊富なSUSEチームからのサポートを受けることができます。
産業分野としては、日本は製造業と金融業についての世界的なハブなので、とくにこれらのセクタに焦点を当てていきます。もちろん、日本の大手パートナーやシステムインテグレータとの協力関係も大切にしており、共同でお客様向けに最適なソリューションを構築したいと考えています。